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高等部二年生
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ゲーム主人公くんである七瀬くんが、監査の補佐に就くことが決定事項であっても、放課後の生徒会役員選定会議はなくならない。
何せ新一年生から選ぶのが本筋だからね。
大方の予想通り、立候補は殺到した。
きっと家からも、役員になるようキツく言われてる子もいるんだろうなぁ。
直接、名法院家や佐倉家と繋がりを作れなくても、同じ生徒会で役員を務めたというだけでアドバンテージは高い。
「まだ締め切りまで日数はあるが、既にある応募分の書類選考に入ったほうがいいだろうな」
怜くんの言葉に、みんな揃って憂鬱な顔になった。
選考作業だけで、寮に帰る時間が遅くなるのは必至だ。
昨年の話を先輩たちから聞いているだけに、未来は確定されていた。
でも最悪、先輩たちも手伝いに来てくれるそうなので、まだ希望はある。
十中八九、怜くんに恩を売りたいだけだとしても。
「書類選考は、応募時に提出された経歴やレポートの質によって行う。内部生、外部生は問わない」
怜くんが選考条件の説明に入る。
経歴については、中等部までに委員会活動や部活動にどう励んでいたのかが主だ。
後は個人的に取得した賞や資格なんかも記載されている。
レポートは生徒会に関することを自由に書いてもらう。
一番多いのはやはり志望動機を書いたものだった。
ちなみにぼくたち幼なじみの三人は、中等部でも生徒会に在籍していたので、その経験から高等部における活動の展開や、全寮制による生活環境の変化がもたらす生徒への影響などをまとめたものが各々評価された。
ふふん、中でもぼくは一番レポートが分かりやすかったから、書記に任命されたんだ。
「経歴とレポートでは、レポートのほうを重視する。経歴は第二基準に過ぎない。だが面倒なことに、これは立候補者側も知っていることだ」
お分かりいただけるだろうか?
レポートの上限は二十枚に設定されているものの、一枚で送ってくるような人はいない。
大体が上限ギリギリの枚数で送ってくるから、軽く目を通すだけでも一苦労なんだ。
明らかにレポートとしてなっていないものは、「不採用」の箱に入れられるんだけど、昨年に引き続き、今年も本気度が例年と異なる。
絶対家庭教師とかプロの目を入れてるよね……。内部生は特にその色が濃かった。
後から生徒本人の成績と比べて、本人だけで作成可能なレポートなのか精査するにしても、時間がかかる。とてもかかる。
役職、補佐にかかわらず、現生徒会員は全員で紙をめくる作業に追われた。
「いっそ、もう決まってるんだから、七瀬くんにも参加してもらえないの?」
つい怜くんに向けてそんなことを言ってしまう。
今は猫の手でも借りたい気持ちだった。
恋敵とか、気にしてられない。
「ダメだ。七瀬も新役員として扱うからな。ただでさえ二年生から引き抜くのは稀だ。これ以上の例外は増やせない」
「だよねー……」
今朝からスマホへ引っ切りなしに入ってくる連絡からも、あまり特別待遇で彼を扱うのはよろしくなさそうだった。その特別待遇が、仕事の強要であっても。
着信は全て、七瀬くんに関連するものだ。
今もレポートをめくる度に、親衛隊でグループ分けしているチャットの着信が入る。
流石にマナーモードにして音やバイブは消しているけど、ライトの明滅で着信は分かった。
あまりの着信の多さに、ライトですら他の人の邪魔になりかねないと、自分にだけ見えるよう、口を開けた鞄の中に入れているほどだ。
七瀬くん、声が通るからなー。
少年らしい彼の声は、昨日の食堂でもよく響いていたようで……発言が全て筒抜けだった。
よりにもよって学園の現状や怜くん、親衛隊を否定するような内容だったのがいただけない。
あの後、各親衛隊の隊長からは会話の詳細を教えるよう請われたり、大変だったんだ。
親衛隊に限らず、怜くんを信奉している人たちからの反感も大きい。
それだけに着信の内容は、彼に対する不満が多かった。
あまりの多さに、何かあってはいけないと風紀委員長の上村くんに相談したぐらいだ。
まだぼくに不満を送ってくる分にはいいんだけどね。
大体七瀬くんの話から、別の愚痴に移っていくのが常だし。
鬱憤のはけ口になるのは構わない。
ただ今後のことを考えると、放置もしていられないと思う。
だって七瀬くんには、この先一年を通して、色んなイベントが待ち構えているのだから。
「保、難しい顔してるけど、大丈夫?」
「あぁ、うん。……ちょっと休憩にしない? 紅茶とお茶菓子用意するね!」
レポートをめくる手を止めて考えていたせいか、眞宙くんに心配されてしまった。
ぼくが席を立つと、同級生も二人、手伝いに給湯室に来てくれる。
何だかんだで書類選考をはじめて時間が経っているので、休憩を入れるにはいいタイミングだったみたいだ。
紅茶の葉を蒸らしていると、珍しく同級生から声をかけられた。
「ねぇ、湊川くん、七瀬くんについて何か知ってる?」
「あー……七瀬くんね」
内容は、案の定というか。
昨日からの一日で、この話題の人っぷりは、純粋に凄いと思う。
彼らも彼らで、新しく入ることが決まった仲間の発言に眉間を寄せている。
現生徒会の役員は、怜くんの信奉者だからね。
怜くんを「おかしい」と断言されて、面白いはずもなく……。
「湊川くんは、あの場にいたんだろう?」
「もちろん。それにあの場は怜くんが治めてくれたから、ぼくが言えることはあまりないかな? 七瀬くんについても、今は情報を集めてるところだよ」
名法院家で怜くんの侍従をしている桜川くんが、七瀬くんと友人になって色々聞き出してくれていることを伝えると、とりあえず彼らは納得してくれた。
「なるほど、外部生だから情報を集めにくいと思ったけど、桜川くんが動いてくれたんだ」
侍従という仕事は立場上、往々にして下に見られがちだ。
しかし頭に「名法院家の」と付くだけで、生徒の中でも発言力が増した。
それはもう、ぼくなんかじゃ歯が立たないくらいに。
桜川くんの怜くんに物怖じしない態度は、好印象に受けとめられている。
桜川くんも食堂での七瀬くんの発言を耳にすると、自分から話を訊くと言ってくれたから、彼に任せておけば問題ないだろう。
結局のところ、今できることと言えば、それぐらいだった。
何せ新一年生から選ぶのが本筋だからね。
大方の予想通り、立候補は殺到した。
きっと家からも、役員になるようキツく言われてる子もいるんだろうなぁ。
直接、名法院家や佐倉家と繋がりを作れなくても、同じ生徒会で役員を務めたというだけでアドバンテージは高い。
「まだ締め切りまで日数はあるが、既にある応募分の書類選考に入ったほうがいいだろうな」
怜くんの言葉に、みんな揃って憂鬱な顔になった。
選考作業だけで、寮に帰る時間が遅くなるのは必至だ。
昨年の話を先輩たちから聞いているだけに、未来は確定されていた。
でも最悪、先輩たちも手伝いに来てくれるそうなので、まだ希望はある。
十中八九、怜くんに恩を売りたいだけだとしても。
「書類選考は、応募時に提出された経歴やレポートの質によって行う。内部生、外部生は問わない」
怜くんが選考条件の説明に入る。
経歴については、中等部までに委員会活動や部活動にどう励んでいたのかが主だ。
後は個人的に取得した賞や資格なんかも記載されている。
レポートは生徒会に関することを自由に書いてもらう。
一番多いのはやはり志望動機を書いたものだった。
ちなみにぼくたち幼なじみの三人は、中等部でも生徒会に在籍していたので、その経験から高等部における活動の展開や、全寮制による生活環境の変化がもたらす生徒への影響などをまとめたものが各々評価された。
ふふん、中でもぼくは一番レポートが分かりやすかったから、書記に任命されたんだ。
「経歴とレポートでは、レポートのほうを重視する。経歴は第二基準に過ぎない。だが面倒なことに、これは立候補者側も知っていることだ」
お分かりいただけるだろうか?
レポートの上限は二十枚に設定されているものの、一枚で送ってくるような人はいない。
大体が上限ギリギリの枚数で送ってくるから、軽く目を通すだけでも一苦労なんだ。
明らかにレポートとしてなっていないものは、「不採用」の箱に入れられるんだけど、昨年に引き続き、今年も本気度が例年と異なる。
絶対家庭教師とかプロの目を入れてるよね……。内部生は特にその色が濃かった。
後から生徒本人の成績と比べて、本人だけで作成可能なレポートなのか精査するにしても、時間がかかる。とてもかかる。
役職、補佐にかかわらず、現生徒会員は全員で紙をめくる作業に追われた。
「いっそ、もう決まってるんだから、七瀬くんにも参加してもらえないの?」
つい怜くんに向けてそんなことを言ってしまう。
今は猫の手でも借りたい気持ちだった。
恋敵とか、気にしてられない。
「ダメだ。七瀬も新役員として扱うからな。ただでさえ二年生から引き抜くのは稀だ。これ以上の例外は増やせない」
「だよねー……」
今朝からスマホへ引っ切りなしに入ってくる連絡からも、あまり特別待遇で彼を扱うのはよろしくなさそうだった。その特別待遇が、仕事の強要であっても。
着信は全て、七瀬くんに関連するものだ。
今もレポートをめくる度に、親衛隊でグループ分けしているチャットの着信が入る。
流石にマナーモードにして音やバイブは消しているけど、ライトの明滅で着信は分かった。
あまりの着信の多さに、ライトですら他の人の邪魔になりかねないと、自分にだけ見えるよう、口を開けた鞄の中に入れているほどだ。
七瀬くん、声が通るからなー。
少年らしい彼の声は、昨日の食堂でもよく響いていたようで……発言が全て筒抜けだった。
よりにもよって学園の現状や怜くん、親衛隊を否定するような内容だったのがいただけない。
あの後、各親衛隊の隊長からは会話の詳細を教えるよう請われたり、大変だったんだ。
親衛隊に限らず、怜くんを信奉している人たちからの反感も大きい。
それだけに着信の内容は、彼に対する不満が多かった。
あまりの多さに、何かあってはいけないと風紀委員長の上村くんに相談したぐらいだ。
まだぼくに不満を送ってくる分にはいいんだけどね。
大体七瀬くんの話から、別の愚痴に移っていくのが常だし。
鬱憤のはけ口になるのは構わない。
ただ今後のことを考えると、放置もしていられないと思う。
だって七瀬くんには、この先一年を通して、色んなイベントが待ち構えているのだから。
「保、難しい顔してるけど、大丈夫?」
「あぁ、うん。……ちょっと休憩にしない? 紅茶とお茶菓子用意するね!」
レポートをめくる手を止めて考えていたせいか、眞宙くんに心配されてしまった。
ぼくが席を立つと、同級生も二人、手伝いに給湯室に来てくれる。
何だかんだで書類選考をはじめて時間が経っているので、休憩を入れるにはいいタイミングだったみたいだ。
紅茶の葉を蒸らしていると、珍しく同級生から声をかけられた。
「ねぇ、湊川くん、七瀬くんについて何か知ってる?」
「あー……七瀬くんね」
内容は、案の定というか。
昨日からの一日で、この話題の人っぷりは、純粋に凄いと思う。
彼らも彼らで、新しく入ることが決まった仲間の発言に眉間を寄せている。
現生徒会の役員は、怜くんの信奉者だからね。
怜くんを「おかしい」と断言されて、面白いはずもなく……。
「湊川くんは、あの場にいたんだろう?」
「もちろん。それにあの場は怜くんが治めてくれたから、ぼくが言えることはあまりないかな? 七瀬くんについても、今は情報を集めてるところだよ」
名法院家で怜くんの侍従をしている桜川くんが、七瀬くんと友人になって色々聞き出してくれていることを伝えると、とりあえず彼らは納得してくれた。
「なるほど、外部生だから情報を集めにくいと思ったけど、桜川くんが動いてくれたんだ」
侍従という仕事は立場上、往々にして下に見られがちだ。
しかし頭に「名法院家の」と付くだけで、生徒の中でも発言力が増した。
それはもう、ぼくなんかじゃ歯が立たないくらいに。
桜川くんの怜くんに物怖じしない態度は、好印象に受けとめられている。
桜川くんも食堂での七瀬くんの発言を耳にすると、自分から話を訊くと言ってくれたから、彼に任せておけば問題ないだろう。
結局のところ、今できることと言えば、それぐらいだった。
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