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高等部二年生
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「外部生の旗印に、七瀬くんはなる意思があるのかどうかっていう話だったかな」
「そうだ。本人は組織だって対立するつもりはないと言っていた。だが外部生が不満を抱く気持ちも分かると、色々代弁されたよ」
「ふーん、例えば?」
「内部生は外部生に対して高圧的であるとか、だな。全員がそうであるとは言わなかったが、一部行動が目立つ生徒がいると。そしてそういった生徒は、大概親衛隊に入っているとのことだ」
眞宙くんの問いに対する怜くんの答えに、ピクリと体が反応する。
「その親衛隊って……怜くんの?」
「七瀬が言うにはそうらしい。しっかり管理しろと言われた」
「そんな!? 親衛隊はぼくの管轄なのにっ!」
親衛隊を統括しているのは、親衛隊長だ。
七瀬くんの言葉が本当なら、文句はぼくに言うべきだろう。
しかし、ここでの問題の本質は、そこじゃないと気付く。
七瀬くんは親衛隊の管理が甘いことを怒っているんであって、怜くんに怒っているんじゃない。
ぼくの管理の甘さが、怜くんに迷惑をかけたんだ。
その事実に呆然となる。
今まで親衛隊長としての責務には、真面目に取り組んできた。
ガス抜きだって行ったはずなのに、全く意味を成していなかったってこと?
ぼくは今まで、何を見てきたの……?
「保、大丈夫? 怜だって、保を責めるつもりで、この話をしてるんじゃないよ?」
机に視線を落としたままのぼくを、眞宙くんが覗き込むように顔を下げて窺う。
心配げな彼に、ぼくは笑みを返せただろうか。
全身に針金でも入っているような心地だった。
何気ない動作でも体がギクシャクする。
「そうだ、別にお前を責めるつもりはない。七瀬の言葉にどこまで信憑性があるのかも分からないしな。それにこの手の不満は今までにだってあったことだ。これを完全に絶つことは難しいだろう」
「エスカレーター式で高等部に上がってきた内部生の仲間意識は強いからね。それに加え、家の社会的地位の高さから、どうしても上流階級という意識が手放せない」
「片や七瀬を含めた外部生の家は、そこまで地位が高くない。これで確執が生まれないほうがおかしいだろう。内部生の全員が全員、高圧的ならまだしも、一部だけと言うなら、今までだって必要悪として認められてきた範囲内だ」
確執による問題が大きくなりそうなら、風紀委員が動く。
そしてその風向きを読むための装置の一つが、親衛隊という隊員を相互監視する組織だった。
今までは、それで大丈夫だったと思う。
けど七瀬くんの存在は、ぼくの不安を掻き立てた。
BLゲーム「ぼくきみ」のゲーム主人公くんだからじゃない。
彼だって、この世界では一人の人間なんだから。
その一人の人間としての行動に、ぼくは心を乱される。
画面を通して見ていたゲーム主人公くんの行動は、颯爽としていて格好良かった。
誰にも臆せず発言できて、物事を正しい方向に導こうとするエネルギーに溢れてて……そんな彼が、ぼくも大好きだったんだ。
「画面の中のぼく」も、こんな風に胸を締め付けられていたんだろうか。
画面に映る彼は、いつも嫌味で、怜くんの前でだけ弱々しかった印象しか残っていない。
プレイヤーとしてのぼくは、当然のことながら、彼にいい気持ちを抱いたことはなかった。
そんな彼として、生まれて、育ったぼく。
ねぇ、きみも……こんな息苦しさを感じながら、生活していたの?
ゲームの終盤では断罪され、退学に追い込まれる。
攻略キャラである、名法院家や佐倉家の反感を買った彼は、きっと本家の湊川家からも縁を切られただろう。
けれど、もしかしたら。
彼は、そのほうが幸せだったんじゃないかな。
怜くんとの関係はいつか終わるものだと、彼も知っていたはずだ。
ゴールが見えている関係から、この鳳来学園から、いち早く解放される形になった、彼は。
ぼくは、未だ縋り付いているけれど……。
怜くんと、離れたくない。
傍にいたい。
でもそれだと怜くんは、幸せになれない。
ぼくが学園を去ることで、怜くんは平穏を得られるんだから。
答えは出ている。
一年生のときには、覚悟も決まっていた。七瀬くんを目の前にして、大分動揺してしまったけど……。
怜くん、ごめんね! 今から気合いを入れ直すからね!
学園を去ることで、ぼくもこの息苦しさから解放されるなら。
ぼくは、やはりやり遂げなくちゃいけない。
性悪の親衛隊長に、ぼくはなってみせる!
机の下で、こっそりと拳を握った。
どうしても心が先に動いてしまって、事実確認ができていなかったけど、今のところBLゲーム「ぼくきみ」の流れとしては間違っていない。
七瀬くんに親衛隊を管理しろと言われて、怜くんは本来の統括者であるぼくに反感を覚えたはずだ。
今のところ、面と向かって責めはしないと言ってくれてるけど。
怜くんと眞宙くんの二人は、黙って話を聞いているぼくを寝不足で疲れていると思ったのか、特に構うことなく話を続けた。
「そうだ。本人は組織だって対立するつもりはないと言っていた。だが外部生が不満を抱く気持ちも分かると、色々代弁されたよ」
「ふーん、例えば?」
「内部生は外部生に対して高圧的であるとか、だな。全員がそうであるとは言わなかったが、一部行動が目立つ生徒がいると。そしてそういった生徒は、大概親衛隊に入っているとのことだ」
眞宙くんの問いに対する怜くんの答えに、ピクリと体が反応する。
「その親衛隊って……怜くんの?」
「七瀬が言うにはそうらしい。しっかり管理しろと言われた」
「そんな!? 親衛隊はぼくの管轄なのにっ!」
親衛隊を統括しているのは、親衛隊長だ。
七瀬くんの言葉が本当なら、文句はぼくに言うべきだろう。
しかし、ここでの問題の本質は、そこじゃないと気付く。
七瀬くんは親衛隊の管理が甘いことを怒っているんであって、怜くんに怒っているんじゃない。
ぼくの管理の甘さが、怜くんに迷惑をかけたんだ。
その事実に呆然となる。
今まで親衛隊長としての責務には、真面目に取り組んできた。
ガス抜きだって行ったはずなのに、全く意味を成していなかったってこと?
ぼくは今まで、何を見てきたの……?
「保、大丈夫? 怜だって、保を責めるつもりで、この話をしてるんじゃないよ?」
机に視線を落としたままのぼくを、眞宙くんが覗き込むように顔を下げて窺う。
心配げな彼に、ぼくは笑みを返せただろうか。
全身に針金でも入っているような心地だった。
何気ない動作でも体がギクシャクする。
「そうだ、別にお前を責めるつもりはない。七瀬の言葉にどこまで信憑性があるのかも分からないしな。それにこの手の不満は今までにだってあったことだ。これを完全に絶つことは難しいだろう」
「エスカレーター式で高等部に上がってきた内部生の仲間意識は強いからね。それに加え、家の社会的地位の高さから、どうしても上流階級という意識が手放せない」
「片や七瀬を含めた外部生の家は、そこまで地位が高くない。これで確執が生まれないほうがおかしいだろう。内部生の全員が全員、高圧的ならまだしも、一部だけと言うなら、今までだって必要悪として認められてきた範囲内だ」
確執による問題が大きくなりそうなら、風紀委員が動く。
そしてその風向きを読むための装置の一つが、親衛隊という隊員を相互監視する組織だった。
今までは、それで大丈夫だったと思う。
けど七瀬くんの存在は、ぼくの不安を掻き立てた。
BLゲーム「ぼくきみ」のゲーム主人公くんだからじゃない。
彼だって、この世界では一人の人間なんだから。
その一人の人間としての行動に、ぼくは心を乱される。
画面を通して見ていたゲーム主人公くんの行動は、颯爽としていて格好良かった。
誰にも臆せず発言できて、物事を正しい方向に導こうとするエネルギーに溢れてて……そんな彼が、ぼくも大好きだったんだ。
「画面の中のぼく」も、こんな風に胸を締め付けられていたんだろうか。
画面に映る彼は、いつも嫌味で、怜くんの前でだけ弱々しかった印象しか残っていない。
プレイヤーとしてのぼくは、当然のことながら、彼にいい気持ちを抱いたことはなかった。
そんな彼として、生まれて、育ったぼく。
ねぇ、きみも……こんな息苦しさを感じながら、生活していたの?
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攻略キャラである、名法院家や佐倉家の反感を買った彼は、きっと本家の湊川家からも縁を切られただろう。
けれど、もしかしたら。
彼は、そのほうが幸せだったんじゃないかな。
怜くんとの関係はいつか終わるものだと、彼も知っていたはずだ。
ゴールが見えている関係から、この鳳来学園から、いち早く解放される形になった、彼は。
ぼくは、未だ縋り付いているけれど……。
怜くんと、離れたくない。
傍にいたい。
でもそれだと怜くんは、幸せになれない。
ぼくが学園を去ることで、怜くんは平穏を得られるんだから。
答えは出ている。
一年生のときには、覚悟も決まっていた。七瀬くんを目の前にして、大分動揺してしまったけど……。
怜くん、ごめんね! 今から気合いを入れ直すからね!
学園を去ることで、ぼくもこの息苦しさから解放されるなら。
ぼくは、やはりやり遂げなくちゃいけない。
性悪の親衛隊長に、ぼくはなってみせる!
机の下で、こっそりと拳を握った。
どうしても心が先に動いてしまって、事実確認ができていなかったけど、今のところBLゲーム「ぼくきみ」の流れとしては間違っていない。
七瀬くんに親衛隊を管理しろと言われて、怜くんは本来の統括者であるぼくに反感を覚えたはずだ。
今のところ、面と向かって責めはしないと言ってくれてるけど。
怜くんと眞宙くんの二人は、黙って話を聞いているぼくを寝不足で疲れていると思ったのか、特に構うことなく話を続けた。
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