乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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 母上が催した、「お花畑に集まった妖精たちの会」が終わる頃には、日が暮れていた。
 単に着せ替え人形にされただけなんだけど。
 僕のサイズに合うものがなかったおかげで、ドレスは一回着ただけで済んだものの、そのあともパーティー用の正装にどのコサージュが合うか試されて大変だった。
 ヴィヴィアンのドレスやワンピースを、何着も着せられていたイアンに比べたらマシかもしれない。
 イアンは、むしろ色んな女の子の服が着れて喜んでたけども。
 大丈夫かな、男の娘になったりしないかな。流石に我が家以外では無理か。

 日が暮れたこともあって、母上はイアンを夕食に招いた。
 僕は夕食までの間、当初の目的を果たすべく、イアンを自室に案内する。
 元の服に着替えてソファに座ると、全身から力が抜けた。
 思いの外、精神的に疲れていたみたいだ。

「付き合わせて悪かった」
「ううん、ボクは凄く楽しかったです!」

 打ち解けてくれたのか、応接間で顔を合わせたときの緊張感はもうない。

「ルーファスお兄様がお姉様のときは、妖精というより精霊のような神々しさがありました!」
「僕はずっとお兄様だよ」

 断じてお姉様になったときなどない。

「はい、ルーファスお兄様!」

 言い含めたかったけど、邪気のない笑顔を向けられて気が抜ける。
 素で妖精なのは、イアンのほうなんだけどな……。
 イケメンの幼少期って怖い。
 にこにこしているイアンを見ると、簡単に絆されてしまう。

「ところで、アルフレッド殿下のことなのだけど」
「……ルーファスお兄様も、仲良くしなきゃダメだと思いますか?」

 イアンの顔には、仲良くしたくないと書かれていた。
 彼の性格からして、横柄に見える殿下とは相性が悪いんだろう。

「僕は二人が仲良くしてくれたら嬉しいけど」
「どうしてです?」

 未来が変わるかもしれないから。
 けれどそれ以上に、仲違いして欲しくなかった。
 だってどっちもいい子なんだ。
 決してわかり合えない相手じゃないから、余計にそう思う。

「好きな子同士が、ケンカしていたら嫌だろう?」
「好きな子……」

 まだ友達と言い切る自信がなくて、曖昧な表現になってしまった。

「ルーファスお兄様は、殿下のどこが好きなんですか?」
「どこって言われると難しいな……」

 愛らしいから、といってもイアンには伝わらないだろう。

「内面は、イアンと変わらないところかな」
「全然違うと思います」
「それは外面の印象だろう? こればかりは時間をかけて観察しないとわからないかもしれない」

 気持ちと裏腹な態度を取ってしまう人間性は、大人になるにつれ理解できるものだ。子どもっぽいと称されるぐらいだし。
 現在子どもであるイアンに、理解しろというほうが間違っているだろう。

「ルーファスお兄様には、ボクとは違う殿下が見えてるってことですか?」
「そうだね。僕はイアンもアルフレッドのことも好きだから、仲良くして欲しいと思う。無理をする必要はないけど、イアンの場合、お父上がそれを望んでおられるのが問題か」
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