乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

文字の大きさ
37 / 82

037

しおりを挟む
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
「ルーファスくんなら、大丈夫だとは思ったんだけどね」

 十六歳にもなると、見た目は大人と変わらない。
 未成年者の交流がメインといっても、基本的に同じ年の者同士が集まる。
 彼にしてみれば、デビュタントしたばかりの十二歳の集まりに、興味はなかったはずだ。
 友人たちの輪を抜け、わざわざ出向いてきてくれたことを考える。

「目立ってましたか?」
「ルーファスくんが目立たないわけがないよ。割って入ってもよかったんだけど、火に油を注ぎそうだったからさ」

 確かに、あそこでミアさんがやってきても、エリックの矛先が増えるだけだっただろう。

「しかしジラルド家にも困ったものだね。いくら王妃様から信頼されているにしても、分別は必要だろうに」
「悪気はないのだと思います」

 エリックにとっては、あれが正義だった。
 誤解から生じた点が、残念でならないけど。

「ルーファスくん、知っているかい? 悪気がないのが、一番性質が悪いんだよ。善意をはき違える奴がね」

 そういう奴とは、いくら話し合ったところでわかり合えない、とミアさんは語る。

「関わらないに越したことはないけど……王妃派の連中は、こちらを目の敵にしているようだから、ルーファスくんも気を付けたほうがいいよ」
「母上は、実害はないとおっしゃってましたが」
「あー、そうだね、実害はないかな? 彼らの多くは、我々より爵位が低いから。できて嫌味を言ってくる程度だよ。だけどそれでも気分は悪いだろう?」

 ミアさんの苦笑に、頷きで答える。
 嫌味を言われて喜ぶのは、それが嫌味だと気付かない人だけだろう。

「高等学院に入ると、親の目がない分、より場をわきまえなくなるからさ」
「ミア様は今年入学されたのでしたね」
「そう、生徒の自主性を重んじるのはいいんだけど……って、ルーファスくんに愚痴っても仕方がないね。もっと気楽にしてくれていいよ。イアンのことでは大分世話になったしね」

 何なら呼び捨てにしてくれてもいいくらい、とミアさんは僕が戸惑うくらいフランクだった。

「じゃあ、ミアさんとお呼びしていいですか?」
「あ、ミアお兄様はどうかな?」
「ミアお兄様……?」

 ミアさんは年上だから、お兄様と呼んでもおかしくはないけど、リクエストされた理由がわからなかった。

「あはは、いいね! 友人たちに自慢しよう」
「自慢になるのですか?」
「なるとも! 皆ルーファスくんとはお近付きになりたいんだけど、ウッドワード卿が怖くて一歩を踏み出せなくてね。それにイアンのことでは、本当に感謝してるんだ。あれから顔付きが変わったって、父も大喜びでさ。逆にぼくは何もしてあげられなかったから、不甲斐ないばかりだよ」

 どうやらイアンとお父上の関係は良くなっているみたいだ。
 ミアさんの言葉が、イアンへの愛に溢れていて肩から力が抜ける。
 イアンにとって厳しいだけの家じゃなくて良かった。

「ところで、ルーファスくんには、イアンと同じ年の妹がいるだけだよね?」
「はい、ヴィヴィアンだけです」
「だよね? イアンがお姉様って口にしてたから、誰のことなんだろうと思ってさ」

 誰のことだろうね、イアン? 他にも余計なこと言ってないよね!?

「ヴィヴィアンが大人びて見えたのでしょうか」
「あぁ、そうかもしれないね。イアンは幼いところがあるから」

 この場は誤魔化せたけど、今度イアンに会ったら厳しく注意しよう決める。
 僕は一度だって、お姉様になったことはないんだと。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...