乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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 多額の献金によって爵位を得ても問題はない。
 しかし成金と呼ばれる、貴族として新参者の彼らは、古参の貴族から嫌われる傾向にあった。

「先輩からの忠告ということで、愚痴ととらえないでもらえると助かるんだけど」
「わかりました」

 頷くと、ミアさんは芝居がかった動作で胸をなで下ろす。
 楽しい人だ。

 ――四年後、まだゲームははじまっていない。

 ゲーム主人公は、平民として暮らしているはずだ。
 彼女が男爵家の引き取られるのは、入学の一年前だから。
 現段階で彼女に会うことは不可能に近い。
 何せゲームでわかるのは、平民だったことだけなんだ。王都にいたのか、地方にいたのかさえわからなくては、為す術がない。
 足取りが掴めるのは、身分が確かな攻略対象に限られた。

 エリックは、今どうしているだろう?

 誤解が解けたなら、話ができないだろうか。
 ミアさんは、善意をはき違える人とは、わかり合えないと言っていたけど、エリックは不運にも勘違いが重なっただけだ。
 彼とわだかまりがあるのは嫌だった。


◆◆◆◆◆◆


 ミアさんと別れた僕は、少年――タイム――と会場を回りつつ、エリックを探す。
 タイムは時折緊張した様子を見せるものの、僕との会話を楽しんでくれた。
 表情筋と連動して、口も上手くない自覚があるので、彼の笑顔を見るたびに励まされる。
 特に……。

「ふんっ、魔力がないクセに、よく大きな顔ができるものだ」

 こうした陰口が聞こえてくると、一人じゃないことが心強かった。
 タイムがすぐさま反論して、力づけてくれるから尚更だ。

「彼らはウッドワード卿が、どれだけお働きになっているのか知らないのです」

 どうやら一時期、タイムのお父上は、父上の下で働いていたらしい。
 そして息子に働き振りを伝えるほど、感銘を受けたのだとか。
 そう、タイムが僕を敬ってくれるのも、父上のおかげだったんだ。後でしっかり感謝を伝えないと。

「……彼らも王妃派の人たちなんでしょうか?」
「どうだろう」

 まだ社交界に入って日が浅い僕たちは、相関図を把握しきれていない。
 もちろん関わりが深い家については教えられている。
 けれどそれ以外については、自身の目で見て、考えなくてはいけなかった。
 悲しいかな、貴族社会は妬み嫉みの宝庫だ。
 僕に嫌味を言ってくるのが、王妃派だけとは限らない。

「あまり先入観を持つのはよくないだろう」

 正直、気にしても仕方ないことでもあった。
 万人に好かれることは、あり得ないのだから。
 それなら味方を大事にしようと、知っている顔に挨拶する。
 皆、タイムと同じように最初は言葉が出ないけど、根気よく待てば、ちゃんと挨拶を返してくれた。
 その後は、決まってタイムと打ち解けて、僕が取り残される形になるけど気にしちゃダメだ。会話の内容は、僕のことだし。

「まさか俺なんかが、ルーファス様に声をかけていただけるなんて!」
「その気持ち、ぼくもよくわかるよ……!」

 うん、立場上、僕から声をかけないとはじまらないしね?
 侯爵という爵位の影響力を実感する。僕はまだ何も成していないのに。
 ウッドワード家が築いてきたものの大きさを知って、シャツの上からペンダントに触れた。
 そして視線の先で、ようやく探し人を見つける。
 エリックは一人、壁に背中を預けていた。
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