乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

文字の大きさ
44 / 82

044

しおりを挟む
「お兄様だけお出かけなんて、ズルイですわ」

 夜会のときと同じ顔のヴィヴィアンに手を伸ばす。
 まだまだ僕には母上のような教育はできなかった。
 頭を撫でられている間も、ヴィヴィアンは僕の服の裾を掴んで放さない。

「それにイアンも一緒なのでしょう?」

 今日はアルフレッドに城へ招待されたんだけど、招待客にはイアンもいた。
 あれから二人は、無事友達になれたらしい。
 イアンから嬉しそうな報告は受けていたけど、三人で会うのは、これがはじめてだった。

「今度は家に来てもらおうか」
「招待するのは、イアンだけで十分ですわ! うぅ、わたくしもお兄様とお出かけしたいです……」
「じゃあ別の日にどこか出かける?」

 基本的に侯爵家の子どもが、外に出かける機会は少ない。
 それも招待を受けて出かけるのが当たり前で、僕とヴィヴィアンが一緒に屋敷を出るのは、祖父母を訪ねるときぐらいだった。

「約束ですわよ! わたくし、新しく出来たお店が気になってますの!」

 どうやら目当ての場所があるらしく、行き先はヴィヴィアンに任せる。
 買い物なら、商人を屋敷に呼べば済むけど、ヴィヴィアンは直接お店に行ってみたいのだろう。

「わかった、父上の許可が下りたら行こうか」
「わたくしから話しておきます! お兄様、いってらっしゃいませ」

 既に気持ちがお店へと飛んでいるのか、前回とは違い、笑顔で見送られる。
 うん、やっぱり見送られるなら、笑顔がいい。
 現金なヴィヴィアンに和みながら、僕は馬車に乗った。


◆◆◆◆◆◆


「エリック!」

 訪れたアルフレッドの自室で、イアン以外に見知った顔を見つけて、思わず声を上げる。
 僕の呼びかけにエリックは首肯で答えた。

「なんだ、知り合いだったのか。お母様から同席させるよう言われたんだ」
「先日の夜会で会ったのですが……王妃様が?」
「エリックは、同年代の中でも一番強いらしい。年上相手でも勝つとか。身を守るのに、傍に置いとけって」

 将来、近衛隊長を務めることを考えれば頷ける配置だ。
 けれど僕としては、またエリックに会えたことが嬉しかった。
 今後は、アルフレッドと一緒に、エリックにも会えるんだろうか。

「実は彼とはもう会えないと思っていたので、驚きました」
「そうなのか? ところでルーファス、今日はオマエに問い質したいことがある!」

 これが本題だと、アルフレッドはイアンを連れ立って、僕の前に並んだ。
 赤髪の天使と青髪の妖精が並ぶ様子に、天を仰ぐ。
 まだ二人を同じ視界に収める心の準備ができていなかった。
 天を仰いだのは、床だと二人の白い足が視界に入るからだ。揃ってショートパンツにソックスガーターをつけているのは卑怯だと思う。
 アルフレッドがネクタイをしているのに対し、イアンが蝶ネクタイなのも可愛い。
 イアンの胸元にカタバミのコサージュがつけられているのを見てほっこりする。ヴィヴィアンがプレゼントしたものだ。無事にパーシヴァル家でもコサージュは認められたらしい。
 そして何気にアルフレッドがイアンの手を引いているのが辛い。尊くて、辛い。
 これこそ絵に残すべきなのではないか。

「絵師の手配を頼んでもよろしいですか?」
「ダメだ! それより、ルーファスはどういうつもりなんだ!」

 あえなく却下された。
 アルフレッドの質問の意図がわからず、首を傾げる。

「どう、とは?」
「ルーファスは、オレとイアン、どっちのお、お兄様なんだ!?」

 ……はい?
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

処理中です...