乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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 血の繋がりで言えば、どちらのお兄様でもない。
 義兄様なんてもってのほかだ。
 しかしアルフレッドが問いたいのは、そういうことじゃないだろう。

「オレは、二人のときだけなのに、イアンはずっとルーファスお兄様って呼んでるじゃないか!」
「アルフレッドも、呼んでくださって構いませんが」

 確か二人のときと指定したのは、アルフレッドだったはずだ。
 僕としては、いつ呼ばれても――心臓がもつ限り――問題はない。

「ほら、やっぱりルーファスお兄様に他意はないんですよ」
「う、うん……って、別に気にしてないからな!」

 何かあったんだろうか?
 すっかり仲良くなったらしい二人を眺めていると、イアンはアルフレッドから離れて僕の隣に腰を下ろした。

「アルフレッドは、二人のとき以外はお兄様って呼ばれたくないんじゃないかって、気にしていたんですよ」
「だ、だから気にしてないって言ってるだろ!」

 地団駄を踏みながら、アルフレッドもこちらにやって来ると、同じソファに腰を下ろす。
 イアンとは僕を挟んで反対側に。
 そう。
 僕を挟んで。

「……狭くないかな?」
「全然大丈夫ですよ?」
「ルー……お、お兄様はエリックと違って細いし!」

 うん、君たちも小柄だしね。
 だけど、僕の心臓がね? 早くも停止しそうだよ?
 やけに距離が近いように感じるのは僕だけだろうか。

「そうなんです! ルーファスお兄様は腰が細いので、コルセットで形を整えると」
「イアン、その件については後で話そう」

 「お花畑に集まった妖精たちの会」については、秘密だと手紙でも伝えたというのに。
 口の軽いイアンの頬を指先で引っ張……マシュマロ? イアンの頬はマシュマロで出来てるのかな?
 予想以上の柔らかさに感銘を受ける。

「ふぁい、すみません」
「何の話だ?」

 イアンに軽く制裁を加えたところで、会話に混ぜろとアルフレッドが頭を寄せてきた。
 しかし僕としては、この話を膨らませたくない。
 気にしないでくださいと、アルフレッドのほうへ胸を向ける。

「む……お兄様に会ったのは、オレのほうが先なんだからな!」

 けれど会話に混ざれなかったことに不満を覚えたのか、アルフレッドは僕の左腕を捕まえて、身を絡ませてきた。
 あの、太ももで手を挟むのは勘弁してください……。
 左腕から意識を切り離したかった。
 しかしお湯に浸かったような温かさに包まれ、尚且つ手の平には柔らかい素肌の感触ががが。

 ノータッチという前世の不文律に、頭がエラーを吐き出す。

 どうにか距離を取ろうと身を捩るものの、締め付けが強くなるだけだった。
 極めつけに。

「アルフレッドも、ルーファスお兄様のことが大好きなんですよね!」
「ばっ、バカ! そんなんじゃない!」
「大好きより、もっと好きなんですか?」

 イアン、その辺にしてあげて。
 アルフレッドの耳が、髪色と同じくらい真っ赤になってるから。
 あと、どうして君まで腕を絡ませてくるのかな……?

「ぼくもルーファスお兄様が大好きですよ!」
「ありがとう……」

 イアンの純粋さは美徳だと思うけど、今に限って言えばオーバーキルだ。
 アルフレッドに対しても、僕に対しても。
 二人は僕をソファに縫い付けたいのかと思うほど、身を寄せてくる。
 警戒心がないのは嬉しいんだけど……と、そこでもう一つ、視線があることに気付いた。

 そうだ、エリックなら、僕をここから助けてくれるんじゃ……!

 何せアルフレッドの護衛だ。
 必要以上に、他人が接近するのを許すはずがない。もう手遅れなのは否めないけど。
 エリックとは、わかり合えたんだ。
 一縷の望みをかけて、彼と目を合わす。
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