乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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「……」

 とても眩しいものを見るように、目を細められた。
 解せない。
 自力で脱するしかないのか……。
 視線を彷徨わせると、赤橙色の液体が目に入る。
 これならいけるだろうか? 心臓よ、もう少し頑張ってくれ。

「紅茶を飲んでもいいかな」
「あ、はい! クッキーも美味しいですよ!」

 よし、イアンは放してくれた!
 飲食は止められないだろうという僕の読みは、見事に当たった。
 かに思えた。

「はい、ルーファスお兄様、あ~ん」

 ねぇ、イアンは僕をどうしたいのかな?
 上目遣いでクッキーを差し出されて、体が固まる。
 確かにちょうど右手はカップで塞がっているけども!
 動けないでいると、左隣から強い視線を感じた。
 ちらりと様子を窺えば、アルフレッドが悔しそうにイアンを見ている。
 張り合うところは、どこにもないよね?
 ……そうだ。

「ありがとう。でもアルフレッドが食べたそうだよ」

 カップを置いて、イアンからクッキーを受け取ると、そのままアルフレッドの口元へ持っていく。
 これでアルフレッドがクッキーを受け取ってくれれば左腕も自由になる。そう思っていた。
 アルフレッドが口を使うまでは。
 結果、僕がアルフレッドにあ~んした形になる。

「ん、お兄様、紅茶も飲みたい」

 飲めばいいんじゃないかな? 僕の腕に絡ませてる手を使って。
 しかしアルフレッドにその気配はなかった。
 
 ……飲ませろということですか?

 まさかこんな形で、アルフレッドのワガママを聞くことになるとは、誰が想像できただろう。
 ヴィヴィアンにもしたことがないなぁと思いながら、アルフレッドのカップを取る。
 アルフレッドの元で慎重にカップを傾けると、赤い睫毛が目元に影を作るのが見えた。
 むせることなく飲み終わるのを見届ければ、僕の視線に気付いたアルフレッドが頬を染めながら笑いかけてくる。
 窓から差し込む陽光が、僕には天界の光りに見えた。
 そろそろお迎えがくる頃合いだ。
 息と一緒に心臓が止まる。

「ルーファスお兄様、ぼくもクッキーが食べたいです!」

 けれど、イアンがそれを許してくれなかった。
 というか、君も手を使ったら食べられるよね?
 アルフレッドを見て、自分もやって欲しくなったんだろうか。
 こうなればと、エリックも近くに呼ぶ。

「エリックも食べるといい」

 そう言って、イアンにクッキーを食べさせた後、エリックの口にもクッキーを突っ込んだ。
 ふう、一仕事終えた気分だ。
 指先についた欠片をペロリと舐め取ると、エリックが顔を真っ赤にしているのが見える。
 しまった、気を悪くさせたかな。
 夜会に続き、これで二度目の失敗だ。
 つい一人だけ年上でいる気になってしまうけど、エリックは同い年な上、体格でいえば彼のほうが大きい。
 あまり僕みたいなのに、いいようにされるのは嫌かもしれない。

「すまない、悪気はなかった」
「……」

 エリックは頷くと、僕から視線を外す。
 ふと、それが引っかかった。
 ゲームの彼を彷彿とさせたから。

「どうして喋らない?」
「エリックはずっと、こんな感じだぞ」

 僕の問いに答えたのは、アルフレッドだった。
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