乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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 もう声変わりを終えたのか、エリックの声は低く、同年代の誰よりも落ち着いていた。
 ゲームの十八歳のときは、もう少し低かった記憶があるけど、今のエリックの低音も安らぎを与えてくれる。

「しかしまたご迷惑をおかけするかも……」
「構わない。それに気心の知れた仲間内なら、勘違いはその場で正せるだろう?」

 別にケンカしたって構わないんだ。
 互いの人となりを知っていれば、またわかり合えるんだから。

「ルーファス様は、どうしてそこまで自分を気に掛けてくださるのですか」
「好きだから、じゃダメか?」

 ゲームで前情報を知っているのもあるけど、今の僕がアルフレッドやイアン、エリックに持っている好感は、ルーファスとして得たものだ。
 実際に会って、どんな人かを知って、好きになった。
 エリックも最初は行き違ったけど、最後には僕のことをわかってくれた。
 そして貴族社会では、自分の非を認められる人の貴いことを、僕は痛感した。

「君は素晴らしい人だ」

 反省をして前を向く。当たり前のように思えるけど、それが出来ない人もいるんだ。
 ソファから離れてエリックの顔を覗き込む。
 手を伸ばして頬に触れても、彼は拒絶しなかった。

「生憎、それ以外に理由がない」
「……あの、また勘違いしそうなのですが」
「どんな風に?」
「ルーファス様に、自分は、好かれているのだと」
「勘違いじゃないが?」

 今しがた好きだからと言ったばかりだ。
 僕の手から体温が伝わったのか、じわじわとエリックの頬が赤みを増していく。

「僕はエリックのことが好きだ」
「うぁっ……」

 僕が覗き込んでいたのが悪かったのか、エリックはバランスを崩して尻餅をついた。
 空かさず腕を引いて起こそうとするものの、後ろからも助けを求める声が聞こえてくる。

「ひぁっ、イアン、やめっ……! もう、あっ、ひっ……ひぃんっ、たすけっ」

 何だか聞いてはいけない声のような気がして、エリックには悪いけど、僕はまずアルフレッドの救出に向かった。

「イアン、そこまで」

 背中から手を回して、小柄なイアンを起こす。
 その下ではすっかり頬を上気させたアルフレッドが、半泣きになっていた。

「一方的にやったらダメだろう? アルフレッドも、仕返せばいいのです」
「すみません、ミアお兄様相手だと負けることが多いので、ついやり過ぎてしまいました……」

 悪気はなかったらしいイアンが項垂れる。
 アルフレッドは涙目ながらも居住まいを正すと、指をわきわきさせた。

「そうか、やり返していいんだな。お兄様、イアンを放すなよ!」
「えっ!? 待ってください、アルフレッド! 謝りますから……!」
「問答無用だ!」

 馴れていないアルフレッドを、くすぐり続けたイアンも悪いかな?
 僕は言われたままイアンをホールドした。

「覚悟しろよ! こちょこちょー!」
「ちょっ、ルーファスお兄様! ひっ、ひぅっ、アルフレッド、待って、ごめんなさっ」

 少ししてイアンを解放すると、二人はソファから落ちて床を転げ回る。
 今度は一方的ではなく、互いの攻防が激しい。

「うひっ、ま、負けないからな!」
「ぼ、ぼくだって……あひゃ、ひゃははは」

 楽しそうで何よりだ。
 僕はエリックと二人で、年少組のじゃれ合いを見守った。
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