乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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058.テディ・ノーファース

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 目を開けたら、やたらと綺麗な顔があって、俺は人生の終わりを悟った。

 考えが甘かったんだ。

 爵位を得たばかりの男爵家なんて、侯爵家から見れば平民と変わらない。
 何を喚いたところで、無視されると思った。
 俺ん家にいちゃもんをつけてくるのだって、男爵や子爵といった貴族とは名ばかりの、金のない奴らばかりだ。
 けど侯爵家ほどの家格になると、話が変わってくる。
 歴史と広大な領地を持つ侯爵家は、男爵家から見ても雲の上の人で、関わりを持ちたいと思っても持てるものじゃない。
 だから逆に、少しぐらい文句を言っても許されるかなって。
 その場で怒られはするだろうけど、ガキのすることだ。見逃してもらえる。

 いつもと違う父ちゃんを見て、イライラしていた。
 貴族になっても、横柄な奴らの態度は変わらない。
 むしろ平民の友達からは距離を置かれて……。
 父ちゃんはこれからだって言ったけど、俺にはよくわからなくて。

 結果、やっちまった。

 血の気の引いた頭で考えれば、バカなことをしたと思う。
 相手が大人なら、また違ったかもしれない。
 けどケンカを売ったのは、同じ年ぐらいの奴だ。
 俺が言うのもなんだけど、ガキはすぐに逆上する。いくら侯爵家でも大して変わらないだろう。
 カッとなった俺は、そこまで考えが及んでなかった。
 大人が子どものケンカを買ったら恥だが、逆はそうじゃない。
 あぁ、何で俺はあんなバカなことをやっちまったんだ……。

「ど、奴隷にだけは……う、売らないで!」

 せめてもの抵抗だった。
 命乞いをして、哀れみを誘う。下手に出れば、相手の溜飲も下がるかもしれない。
 幸い、相手は話を聞いてくれそうだった。

 それが、まさか。
 死神と名高いウッドワード家だったなんて。

 俺、終わった。
 命乞いなんて関係ない。ウッドワード家は、情け容赦ないことで有名なんだから。
 終わった。
 もう父ちゃんと母ちゃんに会えないんだ……。
 また目に涙が溢れてくる。
 情けなくボロボロ泣く俺を、ルーファスは優しく宥めてくれた。

 あれ? 俺、殺されない……?

「ウッドワード家、超人道的……!」

 話を聞いて、俺のウッドワード家に対する印象は覆った。
 というより店で会ったときから、ルーファスは一度も声を荒げてない。妹のヴィヴィアンもそうだ。むしろ馬車では優しく何度も声をかけてくれていた。
 今もずっとルーファスは、俺を気遣ってくれている。
 現実を見れば、噂は噂でしかないってわかるもんだ。

「まぁ俺はルーファスでもいいけど」

 おかげで調子に乗ってしまった。
 だって家格差を感じさせないくらい、対等に話してくれるからさ。
 そんな相手、平民の友達にしかいなかったんだ。けど、そいつらももう変わっちゃったし。

「違うぞ!? 何か勘違いしてないか!? 友達になるなら、ルーファスでもいいってことだからな!?」
「僕を侍らすという意味ではなく?」

 どういう発想だよ!? 空かさず否定したけど、ちょっと想像しちゃっただろ!?
 ずっとルーファスの綺麗な顔を意識しないようにしてるんだぞ!
 何で男のクセに、街で評判のパン屋のお姉さんより綺麗なんだよ!? 俺の初恋の相手より顔がいい上に、性格もいいって、俺の価値観が崩壊するからやめてくれ!

「今はその言葉を信じるよ」

 けど手が触れたら、天に昇るほど嬉しくて。
 俺の傍にってのは、心臓がもたないから無理だけど、俺が傍にいるのは有りだなって思ってしまった。
 無表情でも、まとう空気が柔らかいせいか居心地が良いんだよ……。
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