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アルフレッドの命令に護衛は戸惑いを見せたものの、すぐに臣下の礼を取った。
片膝をつく護衛を、エリックが見張る。
部屋の外に人が集まっている気配がするものの、アルフレッドが命じたのか、新しく中に入ってくる者はいなかった。
危険だ。
もし、今の僕がアルフレッドを人質に取ったらと、ぞっとする。
けれど幸い、部屋に飛び込んできた面々は、すぐ僕に近寄ったりしなかった。
皆、一様に僕を見て愕然としている。
ヴィヴィアンに至っては、目に涙が浮かんでいた。
「そんな、お兄様、お食事はとられていたでしょう?」
「だ、大丈夫なのかよ?」
部屋にこもるようになってから、鏡を見た記憶はない。
今の僕は、一体どんな姿をしているんだろう?
ベッドの上で、僕が手を伸ばす。
「ヴィヴィアン、顔をよく見せてくれ」
何をする気なのか。
ただ彼らを僕に近づけるのは危険だと、頭の中で警鐘が鳴り響く。
「お兄様……」
「ヴィヴィアン、待て」
僕の姿に困惑しながらも、足を進めようとするヴィヴィアンをアルフレッドが止めた。
「オレが行く」
ダメだ!
僕に近付いちゃダメだっ!
必死に叫ぶ。
大きく口を開けて、お腹に力を入れて。
でもどれだけ叫んでも、僕の願いは声にならない。
「アルフレッドでもいいよ」
そうしてアルフレッドは、僕に手招かれた。
「ルーファス……」
「アルフレッド、近くに」
「ルーファス……お兄様……」
「もっと、近くに」
カーテンが閉められ、薄暗い部屋の中を、アルフレッドはゆっくり歩く。
見える彼は、今にも泣きそうになっていた。
抱き締めて、頭を撫でててあげたい。
けど今は、少しでも僕から離れて欲しかった。
その願いも叶わない。
ヴィヴィアンたちは固唾をのんで、僕とアルフレッドを見守っている。
アルフレッドがベッドの端までやって来た。
それでも、体を起こした僕からは、まだ手が届かない。
「さぁ、近くに」
「ルーファス……っ」
アルフレッドの目から涙がこぼれる。
口が震え、全身がわなないていた。
アルフレッドが叫ぶ。
「ルーファス、オマエは、誰だっ!?」
一瞬で、部屋に緊張が走った。
けれど僕は取り繕う。
「僕はルーファスだ」
「嘘をつくな、オレは騙されないぞ! ヴィヴィアンだってわかってる!」
アルフレットの反応に、僕は立ち上がろうとする。
――気付かれた。
気付いてくれた!
――何故だ、何故気付かれた。
うるさい、黙れ! アルフレッドは気付いてくれたんだ!
次に叫んだのは、ヴィヴィアンだった。
「誰ですの!? お兄様の体から出ていきなさい!」
「ルーファスから出ていけ!」
「ルーファスお兄様の体は、ルーファスお兄様のものです!」
「ルーファス……!」
最後にはエリックまでが叫ぶ。
――何故だ、何故こいつらは騙されない。
「アルフレッド、机にペーパーナイフがある! 光属性を付与してくれ!」
僕が、叫んでいた。
片膝をつく護衛を、エリックが見張る。
部屋の外に人が集まっている気配がするものの、アルフレッドが命じたのか、新しく中に入ってくる者はいなかった。
危険だ。
もし、今の僕がアルフレッドを人質に取ったらと、ぞっとする。
けれど幸い、部屋に飛び込んできた面々は、すぐ僕に近寄ったりしなかった。
皆、一様に僕を見て愕然としている。
ヴィヴィアンに至っては、目に涙が浮かんでいた。
「そんな、お兄様、お食事はとられていたでしょう?」
「だ、大丈夫なのかよ?」
部屋にこもるようになってから、鏡を見た記憶はない。
今の僕は、一体どんな姿をしているんだろう?
ベッドの上で、僕が手を伸ばす。
「ヴィヴィアン、顔をよく見せてくれ」
何をする気なのか。
ただ彼らを僕に近づけるのは危険だと、頭の中で警鐘が鳴り響く。
「お兄様……」
「ヴィヴィアン、待て」
僕の姿に困惑しながらも、足を進めようとするヴィヴィアンをアルフレッドが止めた。
「オレが行く」
ダメだ!
僕に近付いちゃダメだっ!
必死に叫ぶ。
大きく口を開けて、お腹に力を入れて。
でもどれだけ叫んでも、僕の願いは声にならない。
「アルフレッドでもいいよ」
そうしてアルフレッドは、僕に手招かれた。
「ルーファス……」
「アルフレッド、近くに」
「ルーファス……お兄様……」
「もっと、近くに」
カーテンが閉められ、薄暗い部屋の中を、アルフレッドはゆっくり歩く。
見える彼は、今にも泣きそうになっていた。
抱き締めて、頭を撫でててあげたい。
けど今は、少しでも僕から離れて欲しかった。
その願いも叶わない。
ヴィヴィアンたちは固唾をのんで、僕とアルフレッドを見守っている。
アルフレッドがベッドの端までやって来た。
それでも、体を起こした僕からは、まだ手が届かない。
「さぁ、近くに」
「ルーファス……っ」
アルフレッドの目から涙がこぼれる。
口が震え、全身がわなないていた。
アルフレッドが叫ぶ。
「ルーファス、オマエは、誰だっ!?」
一瞬で、部屋に緊張が走った。
けれど僕は取り繕う。
「僕はルーファスだ」
「嘘をつくな、オレは騙されないぞ! ヴィヴィアンだってわかってる!」
アルフレットの反応に、僕は立ち上がろうとする。
――気付かれた。
気付いてくれた!
――何故だ、何故気付かれた。
うるさい、黙れ! アルフレッドは気付いてくれたんだ!
次に叫んだのは、ヴィヴィアンだった。
「誰ですの!? お兄様の体から出ていきなさい!」
「ルーファスから出ていけ!」
「ルーファスお兄様の体は、ルーファスお兄様のものです!」
「ルーファス……!」
最後にはエリックまでが叫ぶ。
――何故だ、何故こいつらは騙されない。
「アルフレッド、机にペーパーナイフがある! 光属性を付与してくれ!」
僕が、叫んでいた。
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