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012.アッサム視点
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ピンクスライムとの一件は、記憶を封印したいところだけど、グレイクニル様が交渉へ出向く気になってくれたのは良かった。
急いで町に戻って移動用の馬を確保しなければと、早足で小屋を出る。
虫のいい話だ。
一度は王の命令で停戦協定を反故にした。
それも人間と魔族との対立を煽る形で。
グレイクニル様は停戦に向け奔走されていたけど、あのときは勇者が頭角を現しはじめたのもあって、王国の戦力は盤石だった。
そこで攻めるなら今しかないと、王は判断をくだされた。
また停戦協定については反対意見も根強く、王家の中でも特に心根が優しいグレイクニル様が交渉に向かうことで、魔族に害されないかと不安視する声も少なくなかった。
グレイクニル様を辺境に隠したのは、お命をお守りするためでもあったんだ。
しかし戦況は思いがけない形で覆されることになる。
魔王討伐から帰国した勇者が、声高に王国の君主制について異議を唱えたことによって。
勇者の活躍により王国の支配力が増すことを恐れていた周辺各国は、これ幸いと王国の力を削ぐため勇者を後押しした。
民衆も魔王を倒した英雄を支持し、今や王国は転覆の危機に瀕している。
何もこのタイミングじゃなくてもいいだろう!
王宮に住まう者は、こぞって勇者に恨み節を吐いた。自分もその一人だ。
まだ傍若無人な王が気に入らないと、勇者が取って代わる分にはいい。
頭を代えるだけなら、王国が長年培ってきた君主制は機能し、政治も滞ることはない。
だというのに。
よりにもよって何故、根本から政治形態の違う民衆による議会制を、今、この時期に求めるんだ!
魔王を倒したことで魔族の勢力が分散したといっても、分散した勢力を各々率いているのは、影の魔王とも名高かったスズイロ卿の子どもたちだ。
名実ともに魔王の右腕だったスズイロ卿も魔王と共に倒れはしたけど、彼の子どもたちが再起を計るため、虎視眈々と機会を窺っていることに違いはない。
彼らが勇者に追い詰められる王国を、見逃すはずがないだろうに!
現在王国が最も恐れていることは、領土が隣接するシド卿に背後を狙われることだ。
スズイロ卿の第一子でもあるシド卿は、類い希なる手腕を持っているのか、軍事境界線を変えることはないものの、依然として魔族領の防衛の手を緩めてはいない。
隙を見せれば狙われる。
そう思わせるほどの戦力を、シド卿はまだ持っていた。
だからこそ魔族全体とはいわないまでも、シド卿との停戦協定は急務だった。
そんなとき、送り込んだ使者からグレイクニル様の名前が出たことを聞かされ、王はグレイクニル様を交渉に向かわせることを即決した。
勇者が問題さえ起こさなければ……!!!
魔族を掃討し、世界に平和が訪れるのは時間の問題だったんだ。
グレイクニル様も、魔物の脅威のない静かな森で余生を過ごせるはずだった。
どうしてこんなことになってしまったのかという思いは拭えない。
結局、危険な魔族領にグレイクニル様を向かわせることになってしまった。
身分に関係なく、対等に接してくださるお優しいあの方を、自分は死地へお連れするんだ。
最早自分にできることは、グレイクニル様の盾になることしかない。
グレイクニル様に話を持ちかけたときから、覚悟は決まっていた。
あとはそれを実行に移すだけだ。
なのに……本当にこれでいいのかという疑問が頭の隅で生まれる。
国のために死ねるなら自分の命は惜しくない。
けれど、グレイクニル様はどうか。
望んでいた魔族との停戦を、誰でもない兄王に砕かれ、今になって停戦交渉に向かわされるグレイクニル様の、そのお気持ちは。
自分ならどうかと考えると……苦汁が口の中に広がった。
急いで町に戻って移動用の馬を確保しなければと、早足で小屋を出る。
虫のいい話だ。
一度は王の命令で停戦協定を反故にした。
それも人間と魔族との対立を煽る形で。
グレイクニル様は停戦に向け奔走されていたけど、あのときは勇者が頭角を現しはじめたのもあって、王国の戦力は盤石だった。
そこで攻めるなら今しかないと、王は判断をくだされた。
また停戦協定については反対意見も根強く、王家の中でも特に心根が優しいグレイクニル様が交渉に向かうことで、魔族に害されないかと不安視する声も少なくなかった。
グレイクニル様を辺境に隠したのは、お命をお守りするためでもあったんだ。
しかし戦況は思いがけない形で覆されることになる。
魔王討伐から帰国した勇者が、声高に王国の君主制について異議を唱えたことによって。
勇者の活躍により王国の支配力が増すことを恐れていた周辺各国は、これ幸いと王国の力を削ぐため勇者を後押しした。
民衆も魔王を倒した英雄を支持し、今や王国は転覆の危機に瀕している。
何もこのタイミングじゃなくてもいいだろう!
王宮に住まう者は、こぞって勇者に恨み節を吐いた。自分もその一人だ。
まだ傍若無人な王が気に入らないと、勇者が取って代わる分にはいい。
頭を代えるだけなら、王国が長年培ってきた君主制は機能し、政治も滞ることはない。
だというのに。
よりにもよって何故、根本から政治形態の違う民衆による議会制を、今、この時期に求めるんだ!
魔王を倒したことで魔族の勢力が分散したといっても、分散した勢力を各々率いているのは、影の魔王とも名高かったスズイロ卿の子どもたちだ。
名実ともに魔王の右腕だったスズイロ卿も魔王と共に倒れはしたけど、彼の子どもたちが再起を計るため、虎視眈々と機会を窺っていることに違いはない。
彼らが勇者に追い詰められる王国を、見逃すはずがないだろうに!
現在王国が最も恐れていることは、領土が隣接するシド卿に背後を狙われることだ。
スズイロ卿の第一子でもあるシド卿は、類い希なる手腕を持っているのか、軍事境界線を変えることはないものの、依然として魔族領の防衛の手を緩めてはいない。
隙を見せれば狙われる。
そう思わせるほどの戦力を、シド卿はまだ持っていた。
だからこそ魔族全体とはいわないまでも、シド卿との停戦協定は急務だった。
そんなとき、送り込んだ使者からグレイクニル様の名前が出たことを聞かされ、王はグレイクニル様を交渉に向かわせることを即決した。
勇者が問題さえ起こさなければ……!!!
魔族を掃討し、世界に平和が訪れるのは時間の問題だったんだ。
グレイクニル様も、魔物の脅威のない静かな森で余生を過ごせるはずだった。
どうしてこんなことになってしまったのかという思いは拭えない。
結局、危険な魔族領にグレイクニル様を向かわせることになってしまった。
身分に関係なく、対等に接してくださるお優しいあの方を、自分は死地へお連れするんだ。
最早自分にできることは、グレイクニル様の盾になることしかない。
グレイクニル様に話を持ちかけたときから、覚悟は決まっていた。
あとはそれを実行に移すだけだ。
なのに……本当にこれでいいのかという疑問が頭の隅で生まれる。
国のために死ねるなら自分の命は惜しくない。
けれど、グレイクニル様はどうか。
望んでいた魔族との停戦を、誰でもない兄王に砕かれ、今になって停戦交渉に向かわされるグレイクニル様の、そのお気持ちは。
自分ならどうかと考えると……苦汁が口の中に広がった。
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