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Ⅻ 魔法のこととか聞いてみる
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せっかく魔法学園に来たことだから授業に出てみることにする。
俺が席に座り、横にアネモネが控える。
王子だからか、はたまた別の理由からか他の生徒は離れた席に座っている。
俺の周りにだけ人がいない。
次の教科は基礎魔法学。
まさにファンタジーそのものな議題である。
教師であろう白髪の老人が教室に入って来るやいなや、俺と目が合い、ため息を漏らした。
〝なんでいんだよ〟。間違いなくそう思ったことだろう。
邪魔しないから授業を始めてください。
「では魔法基礎の続きから、――魔法、すなわち生まれたその瞬間から女神様によって与えられた魔力によって行使出来る奇跡のことであるが。我々、人間種が備わる魔法属性は基本的に5属性のみだが、憶えているかね。ミスマーロン」
教師が視線を向けると名指しされたであろう女子生徒は立ち上がる。
「はい、純血の人間種に与えられる魔力は〝火〟〝水〟〝土〟〝風〟〝光〟のどれかだとされています」
「その通り。実際のところ光属性の魔力は『聖女』と呼ばれる1000年にひとりしか現れない女神様の使いにしか備わらんのだから、4属性がメインであるな。その聖女、ミスココアがこの学園の生徒なのだから、皆誇るように」
ココア……どこかで聞いたような。
ああ、あのなんとも知能の足りなそうな女のことか。
アイツはバカ王子と一緒にアイビーを追い込んだ罪がある、許しはしない。
そういや、あの女の姿を見ていないな。
不登校か。
「アンスペルと呼ばれる脱落者以外にはそれぞれその者に相応しい魔力量が与えられる。生まれた時から命の優劣が存在するのだ。自身の魔法属性と同種の精霊と契約し、魔力量を増やすことも可能ではあるが精霊はとても気まぐれでありそもそも人間の前に現れることなどほとんどない。なにかねミスタージャーメイン」
挙手している男子生徒に視線を移す。
講義を中断させられて教師はやや不機嫌そうではある。
「先生は魔力量がその人物の強さが決まるとお考えでしょうか?」
少年漫画ならそうだろうな。
最初は数百とかの次元でやり合ってたのに、そのうちインフレしてくのがお約束だ。
「なにを言っている。強さなどそんな曖昧な話ではない。戦いとなれば強い武器を持っている方が必ず勝つとは限らんだろう。運も知恵も戦いの計りに含まれるのだから。魔力量の大きさはその人物が偉大か凡人かでしかない」
呆れているのか言葉を発している最中、ずっと首を振っている教師。
言葉の言い回しで分かりづらいが、要はブランド品か100円ショップかの話をしているのだ。
そしてこの教師はブランド狂いというのは間違いない。
「まあ、安心したまえ。この場のほとんどが私の合格ラインをギリギリ超えておるよ。ほとんどは、だがね」
そこで俺を見るな。
確かにアンスペルらしいけども。
生徒に優劣をつけるなんて教師の風上にも置けない奴だな。
「魔法を行使する際に自分用の杖を持っておくと発動しやすいと教える教師もいるだろうが、ワシはおすすめせん。そんなことを続けていればそのうち杖が無ければ魔法を扱えない腑抜けになるでな」
教室が少しざわつく。
筆記用具の横に置いていた菜箸の片割れ(おそらくこれが魔法の杖)を教師に見つからないように隠す生徒や、『古い考えだ』『老害魔法使いだ』と小言を漏らす生徒がいる。
しかし教師がひとつ咳をすると空気が凍り、静かになる。
「ワシが担当するものは基礎魔法学、つまりはどの属性にも存在する魔法を教える学問である。肉体強化魔法、防御魔法、回復魔法、などが主である。召喚魔法は君等にはまだ早い為、上級生になってから教える。――……なにか、質問かね。リエル第三王子殿」
俺が手をあげると睨み付けてくる。
形だけのお辞儀、ただし『お前など認めていない』と確かな意思を感じる。
「基礎魔法の範疇かは分からないが、人の言動を操る魔法はあるだろうか。例えば特定の誰かに話しかけようとすると罵声を浴びせてしまう、とか」
「……言動操作。知っての通り、人間が扱う魔法で他人を操るものはひとつもない。行動も言動も、そんな卑しい魔法を扱うのは、第三王子もよく知っておるであろう?」
嘲笑を含んだ微笑みを向けられた。
他の生徒も俺に見付からないようにニヤニヤと嫌な笑いをしている。
「不快ですわね」
熱っ。
俺がそう思った瞬間、教師目掛けて巨大な火の玉が飛ぶ。
教師がそれに驚いて尻餅をついた途端に火の玉はぱんっと花火みたく弾けた。
確認するまでもない。
俺の横にいるアネモネの仕業だ。
この世界に来て初めてちゃんとした魔法を目撃した。
焦げまみれで教室が大惨事だけども。
「ここで学ぶ事はなにひとつなさそうですわ」
凛と吐き捨てるように教室から出ていくアネモネ。
しかし他の生徒と同じように魔法の衝撃で固まっている俺である。
俺が席に座り、横にアネモネが控える。
王子だからか、はたまた別の理由からか他の生徒は離れた席に座っている。
俺の周りにだけ人がいない。
次の教科は基礎魔法学。
まさにファンタジーそのものな議題である。
教師であろう白髪の老人が教室に入って来るやいなや、俺と目が合い、ため息を漏らした。
〝なんでいんだよ〟。間違いなくそう思ったことだろう。
邪魔しないから授業を始めてください。
「では魔法基礎の続きから、――魔法、すなわち生まれたその瞬間から女神様によって与えられた魔力によって行使出来る奇跡のことであるが。我々、人間種が備わる魔法属性は基本的に5属性のみだが、憶えているかね。ミスマーロン」
教師が視線を向けると名指しされたであろう女子生徒は立ち上がる。
「はい、純血の人間種に与えられる魔力は〝火〟〝水〟〝土〟〝風〟〝光〟のどれかだとされています」
「その通り。実際のところ光属性の魔力は『聖女』と呼ばれる1000年にひとりしか現れない女神様の使いにしか備わらんのだから、4属性がメインであるな。その聖女、ミスココアがこの学園の生徒なのだから、皆誇るように」
ココア……どこかで聞いたような。
ああ、あのなんとも知能の足りなそうな女のことか。
アイツはバカ王子と一緒にアイビーを追い込んだ罪がある、許しはしない。
そういや、あの女の姿を見ていないな。
不登校か。
「アンスペルと呼ばれる脱落者以外にはそれぞれその者に相応しい魔力量が与えられる。生まれた時から命の優劣が存在するのだ。自身の魔法属性と同種の精霊と契約し、魔力量を増やすことも可能ではあるが精霊はとても気まぐれでありそもそも人間の前に現れることなどほとんどない。なにかねミスタージャーメイン」
挙手している男子生徒に視線を移す。
講義を中断させられて教師はやや不機嫌そうではある。
「先生は魔力量がその人物の強さが決まるとお考えでしょうか?」
少年漫画ならそうだろうな。
最初は数百とかの次元でやり合ってたのに、そのうちインフレしてくのがお約束だ。
「なにを言っている。強さなどそんな曖昧な話ではない。戦いとなれば強い武器を持っている方が必ず勝つとは限らんだろう。運も知恵も戦いの計りに含まれるのだから。魔力量の大きさはその人物が偉大か凡人かでしかない」
呆れているのか言葉を発している最中、ずっと首を振っている教師。
言葉の言い回しで分かりづらいが、要はブランド品か100円ショップかの話をしているのだ。
そしてこの教師はブランド狂いというのは間違いない。
「まあ、安心したまえ。この場のほとんどが私の合格ラインをギリギリ超えておるよ。ほとんどは、だがね」
そこで俺を見るな。
確かにアンスペルらしいけども。
生徒に優劣をつけるなんて教師の風上にも置けない奴だな。
「魔法を行使する際に自分用の杖を持っておくと発動しやすいと教える教師もいるだろうが、ワシはおすすめせん。そんなことを続けていればそのうち杖が無ければ魔法を扱えない腑抜けになるでな」
教室が少しざわつく。
筆記用具の横に置いていた菜箸の片割れ(おそらくこれが魔法の杖)を教師に見つからないように隠す生徒や、『古い考えだ』『老害魔法使いだ』と小言を漏らす生徒がいる。
しかし教師がひとつ咳をすると空気が凍り、静かになる。
「ワシが担当するものは基礎魔法学、つまりはどの属性にも存在する魔法を教える学問である。肉体強化魔法、防御魔法、回復魔法、などが主である。召喚魔法は君等にはまだ早い為、上級生になってから教える。――……なにか、質問かね。リエル第三王子殿」
俺が手をあげると睨み付けてくる。
形だけのお辞儀、ただし『お前など認めていない』と確かな意思を感じる。
「基礎魔法の範疇かは分からないが、人の言動を操る魔法はあるだろうか。例えば特定の誰かに話しかけようとすると罵声を浴びせてしまう、とか」
「……言動操作。知っての通り、人間が扱う魔法で他人を操るものはひとつもない。行動も言動も、そんな卑しい魔法を扱うのは、第三王子もよく知っておるであろう?」
嘲笑を含んだ微笑みを向けられた。
他の生徒も俺に見付からないようにニヤニヤと嫌な笑いをしている。
「不快ですわね」
熱っ。
俺がそう思った瞬間、教師目掛けて巨大な火の玉が飛ぶ。
教師がそれに驚いて尻餅をついた途端に火の玉はぱんっと花火みたく弾けた。
確認するまでもない。
俺の横にいるアネモネの仕業だ。
この世界に来て初めてちゃんとした魔法を目撃した。
焦げまみれで教室が大惨事だけども。
「ここで学ぶ事はなにひとつなさそうですわ」
凛と吐き捨てるように教室から出ていくアネモネ。
しかし他の生徒と同じように魔法の衝撃で固まっている俺である。
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