No Title

月夜桜

文字の大きさ
15 / 17
第一章 忍び寄る影

14話 その後と最終日 朝食

しおりを挟む
「それで、どうやって俺達の監視網を抜けた?」

 CPから接近の注意喚起が無かったことから、監視網を欺いたのだと考え、問い質す。

「どうやってって、これ?」

 そう言いながら雫は銀色の遮熱シートを取り出し、頭から被った。
 ……こいつ、やっぱり俺達の監視網に気付いてながら接触してきたのか。

「いつから気付いてた?」
「んー、初めから。助言。学校、気を付けた方がいい」
「? まぁ、気に留めておく。すまないが、CPにお前に身分を明かしたことを報告するぞ」
「ん。いいよ」

 CPを呼び出そうと、無線機のPTTボタンを押し込む。

「CP、CP、こちらマルヒト」
『マルヒト、こちらCP。送れ』
「対象アルファに接触され、身分を明かされた。それに伴い、こちらも身分を明かしている。送れ」
『CP了解。後ほど、報告書を提出せよ。送れ』
「マルヒト了解。終わり」

 ……まぁ、そうなるよなぁ。

「よし、じゃあ、気を付けて戻れよ。そろそろ巡回時間だ」
「ん。分かってる。貴方も、気を付けて」

 ぱっと見で見つけられる分の薬莢を拾い上げ、回収。そのままポーチに入れて封印する。

「本当に、回収するんだ?」
「俺が居た証拠を残さないためにな。訓練の時はただの再利用だ。そっちでもやってるだろ?」
「本国は知らないけど、横田では最近、やってる。リサイクル精神万歳」
「はは。……じゃあな。これからいい関係が築けることを切に願う」
「こちらこそ」

 そうして俺達は別れた。
 ……あの監視網の中、接触してくるなんて予想できなかったな。そして、自分の所属を明かすのも。
 ま、今日分かったことと言えば、どこの国も俺達のような非合法隊員を抱えていることだな。
 米国しかり、露国しかり、何かしらのな。

 ☆★☆★☆

「おはよう、忠長君」
「おはよう、遥香」

 朝、忠長は朝食時に遥香に捕まった。
 彼女の顔には不満が見え隠れ。
 手を腰に当てている姿は「私、言いたいことがあります!」と主張しているよう。

「昨日のことなら家に帰ってから話す」
「……約束よ?」
「ああ、約束だ。白蛇びゃくだ様の名に懸けて」
「──♪ うん♪」

 取り敢えず、彼は彼女の頭を撫でて機嫌を取る。

 なでなで
 にへら♪
 なでなで
 えへへ~♪

 チョロい。生粋のオタクである初寧的に言うと、チョロインだろう。

(……はぁ、やっぱり、昇進保留を解除して昇進してやろうか。上官があいつってのもなぁ、やりにくい。ここ一年程で理解した。取り敢えず、突撃癖を矯正しなければ。どこの世界に前線へ真っ先に突っ込む指揮官がいる。)

 などと、心の中で考えていたりするが、表情に一切出さない。
 こういうところは、流石の一言だろう。

「んっと。遥香、向こうで友達が呼んでるぞ」
「あ、うん!」

 遥香の後ろから「遥香ちゃ~ん」という呼びかけが聞こえたので、忠長はそっちに行くように促す。
 彼女は、長い髪を振りながらピンク髪のセミロング少女と甘栗色髪のポニーテール少女の下へと向かう。

(……あれは、俺と同じクラスの喜多田結芽きただゆめだったか? 遥香の奴め、いつの間にほかのクラスの連中と仲良くなったんだ?)

「た~だ~な~が~くんっ♪ 一緒にご飯食べよっ♪」

 忠長は後ろから抱き着かれ、ぎゅーっと抱きしめられる。

(……姉弟子、いつの間に俺の後ろを……?)

「虹海さん、おはようございます。と、雫も、おはよう」
「おはよう、忠長君」
「ん、おはよう」

 虹海の後ろで雫がウィンクをする。無駄に上手なのが地味にうざい。

「で、どう? 一緒に食べよ?」

 忠長は班員を探し──一人だけ、寂しく一人で朝食を食べている有希を見つけた。

「いいですよ。但し、あの子と相席してもいいのなら」

 そう言いながら有希の方へと足を進める。

「有希、相席、いいか?」

 彼は、忠長の方を向き、少し驚いた表情をした後、「うん、いいよ」と言った。

「いいそうなので、相席させてもらいましょう。はい、二人はご自身の朝食を取ってきてください」

 この研修会では、朝晩はバイキング形式で食事が提供されている。
 その種類は豊富で、和食から始まり、洋食や中華料理など、様々な料理が取り揃えられている。
 朝晩の食事に関して、彼らは不自由することが無かった。

「相席で悪いな」
「ううん、大丈夫だよ」
「……何かあれば、相談に乗るからな」
「うん、ありがと」
「よし、俺も取ってくる。雫も虹海さんもいい人だから、怖がらなくていいぞ」
「あはは、うん、ありがとう、吉村君」

 忠長は、席から立ち上がり、バイキングコーナーへと足を運ぶのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
 ☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

処理中です...