異世界に再召喚されたら人族よりも魔族の方がマトモでした

月夜桜

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第6話 楓さんは近接戦闘が得意です(*`ω´*)ムフン

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 迷いの森──以前は精霊が飛び交い、エルフが住んでいることから【精霊の泉】と呼ばれたこの森は、今では人を迷わす【迷いの森】と呼ばれるようになっていた。
 神聖な雰囲気だった森は、鬱蒼としており、昼間というのに光を殆ど通していなかった。

「……暗い。あんなに綺麗だったのに、一体どうなってんだ?」
「うん。それに、精霊が殆ど居ない。土地が、死に掛けてる。」
「何か……怖い感じがします……」

 祐希、楓、柚葵と、各々に感想を述べる。

「ここで立ち止まっていても仕方がない。それに、ここにいたら外からでも見える。奥に行くぞ」
「ん。《灯せ》」

 楓は、両掌を合わせてぎゅっと握り、開く。
 そこには、優しく光る球体が浮かんでいた。
 彼女は、それを進行方向の少し前、上方に移動させ、足下を照らす。

「ふぇ……私達が習ったのと、発動手順が違う……? ううん、それだけじゃない気がします……何が違うんだろう?」

 柚葵は、自分達が使う〝魔法〟と発動手順も効率も威力も違う〝何か〟を見つけ出そうと考え始める。

「桑乃、何を悩んでるんだ?」
「ふぇっ?? あ、えっと、私達が使う魔法と先輩達が使う魔法、発動手順も効率も威力も、何もかも違う気がするんですけど……?」
「あー……それ、後でもいいか?」
「え?」
「敵だ。《爆ぜ──》」
「《ダメっ!!》」

 祐希が段々と近付いてくる何かに対して、液体を高速で振動させることによって擬似的に蒸発、内側から爆発させる魔術を発動しようとすると、楓がそれに割り込んで魔術を発動──祐希の【振動】を分解し、圧倒的な魔力量で事象干渉を無効化する干渉障壁を展開する。

「どうした?」
「今、祐希君が魔術を発動させていたら、カウンターが飛んできてた。この森、何か変。魔獣が──《強いっ!》」

 楓は、【風狼シルフ】を起動させて暴風を巻き起こす。本来は自身を加速させたり攻撃を阻んだり遠距離から風の弾丸を撃ち込んだりする魔術は、前方から来ていた赤い熊の魔獣の四肢を絡め取り、その動きを阻む。

 (くっ、条件起動式の反転魔術か……っ! 楓の【風狼】でも半分程が反射されている、と。……風で巻き上がった小石は弾かれていないな? という事は──)
「──楓! 物理攻撃なら通る!! お前なら、いける!!」
「っ!」

 それを聞いた楓は、すぐさまハンマーを取り出し、身体強化魔術を掛ける。
 次の瞬間、楓は魔獣の頭上へ瞬間移動 (したように見えただけで、地面を強く蹴り上げただけの純粋な身体能力だ) する。
 彼女は、そのままハンマーを振り降ろし、頭を潰した熊の上へと着地、血だらけのハンマーを肩に担ぐ。

「ふぅ。悪いクマさんはお仕置。もう、死んだけど」
「なんなんだろうな、このレッドベアー。こんな力を持っているなんて聞いたことないぞ?」
「私達が以前来た時から大体三百六十年経ってる。そこから考えたら、何かしらの変異があってもおかしくない。──けど」
「以前でも、相手の魔術そのものを相手に返す魔術は無かった。俺でも作れなかったものを魔獣が作れるとは考えにくい、か。お疲れ様、楓」
「ん。ありがと」

 頭を撫でて【清浄】を掛けることで、返り血を落とす。

「取り敢えず、解体するか?」
「ん。祐希君に任せる」

 祐希は、異空間からナイフを取り出し、レッドベアーの皮を手際良く剥いでいく。
 すると、祐希の手が止まった。

「どうしたんですか、先輩?」
「いや、無い筈の物があってな」
「無い筈のもの?」
「ああ。魔物の体内には、こんな魔力の溜まった石なんて存在しなかった筈だ」
「……確かに。魔力を持ってる。でも、これは──」
「ああ。どう考えても、〝魔石〟だ」
「魔石?」
「ああ。魔石は、大気中の魔素が圧縮されたことによって結晶化した魔術発動触媒だ。これがあると、ある程度の技量さえあれば普段発動出来ない魔術を発動出来るようになる。例えば──」

 祐希は少し考え、楓の方へ顔を向ける。

「楓、何か出来るか?」
「ん。んー……【物質分解】とかは? わたし、あれは苦手」
「いや、あれは周囲への影響がデカすぎるだろ。流石にダメだ。うーん。そうだ。桑乃、見た感じ、水系の魔術が得意だな?」
「えっ、あ、はい。得意です」
「どこまで使える?」
「中級の水魔法までなら殆ど」
「なら、これを使って上級の魔術を俺に向かって撃て」
「えっ、でも──」
「いいから、撃て」

 祐希の言葉に困惑しながらも、魔石を受け取って詠唱を始める。

「《水の女神よ・我らに大いなる恵みを与え給え──水牙狼すいがろう)!!》 えっ、うそ、使えた!?」
「おっと、思ったよりも威力が強いな。楓」
「ん」

 いつの間にか隣に立っていた楓と手を繋ぎ、短く唱える。

「「《我が手に──潰えろ》」」

 次の瞬間、【水牙狼】の制御が柚葵から離れ、空に向かって上昇──消滅した。
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