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僕はパトリック

僕の秘密

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秘密のブラックボックスは絶対に開けられない。僕がそれに気づいたのは確か5歳の時だった。庭の木に登っていて、兄さん達や従兄弟たちに追いつこうって頑張り過ぎて、案の定落下した。

それから数日の間、目を覚さずに随分家族も心配したみたいだけど、僕も目が覚めたら本当びっくりしたんだ。だってさ、耳があるから。目の前の兄さんってわかってる男の子達全員に、尖って黒い羽のついた見たことのない耳が生えてた。


「…おにいちゃん?どうしたの、そのお耳。」

僕が目覚めて早々発した言葉がそれだった。それから僕はどうも頭を打った後遺症で認知に変化が起きているとの診断を受けたんだ。

でも僕は子供ながらに、僕の知っている世界と、今いる世界には大きな違いがあるんだって気がついた。僕の中には5歳までこの世界で生まれ育ったパトリックが実在していた。


けれども僕の大部分は、身体に耳や尻尾の付いてない世界で育った15歳ぐらいの少年の記憶だった。とはいえ、出てくる言葉は5歳までに身についた舌ったらずのもので…。

僕は自分で喋るたびに、羞恥心で赤くなってしまっていた。それが、マジェスタ家の末っ子への溺愛を加速させる事になったなんて気づきもしなかったけれど。


それから僕は、ウンザリする様な兄弟や従兄弟からの溺愛に溺れながら、一方では何とかこの状況から逃れたいと必死で抜け道を探していたんだ。

「おい、パトリック。一緒にボウを打ちに行こう。こっそりな?」

そんなある日、三つ上の兄のジャスが、僕がいつもボウを射っている庭先から、野外へこっそり連れ出してくれたんだ。その時僕は8歳で、まだ野外でのボウは禁じられていた。


「お兄ちゃん!…でも、僕まだダメだって父様から言われてるよ?」

するとジャスは呆れた顔をしながら、僕の髪を撫でて言った。

「…父様も何かパトリックには過保護だよなぁ。確かにパトリックは俺たちと違って妙に可愛いところはあるけれど、俺が8歳の頃はとっくに野外で射かけていたぞ?

今日は丁度友達が、弟を連れてこっちの方まで足を伸ばして来ているから、一緒に遊ぼうって約束してるんだ。お前にも紹介してやるぞ。虎族なんだ。驚くなよ?」


僕はジャスの顔を見上げながら呟いた。

「…ともだち?それって男の子?」

ジャスは僕を憐れなものを見るような眼差しで眉を下げて言った。

「もちろん男だ。そっか、パトリックの友達は何故か女の子ばっかりだもんな。母様もどうしてパトリックに男の友達を作ってやらないのか意味不明だよなぁ。

ああ、でも小さい頃、お前男の子達に揉みくちゃにされてたらしいな。それかぁ。まぁ、心配だよなぁ。ははは。」


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