49 / 68
それは始まりの始まり
気まずい遭遇
しおりを挟む
青山さんのアドバイスで、街歩きでもおかしくない白いスポーツシューズを選んだ僕は、会計を済ませようと店員さんが商品を包んでくれるのを待っていた。
ぱっと見小さな店かと思いきや、奥行きや地下もあって品数豊富なこの店は若者に人気の様で、次から次へとお客さんが入っては出て行った。僕がレジを終えて商品を受け取ると、僕は青山さんが誰かと話しをしているのに気がついた。
背中を向けて棚の向こうで話をしてる青山さんの後ろから顔を出すと、そこには翔ちゃんと多分彼女さんらしき女の子が居た。ドクンと胸が嫌な音を立てて、同時になんとも言えない苦々しい感情が渦巻いた。
彼女さんと一緒にいる翔ちゃんにニ度と会いたくはなかったのに。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、翔ちゃんも驚きの表情を浮かべて、次の瞬間には眉を顰めて僕と青山さんを交互に見つめた。
「…侑、何で弓弦と一緒?」
すると青山さんが僕の肩に手を回して楽しげに言った。
「今日は侑くんとお買い物デートなんだ。お前達もデートだろ?」
僕は青山さんが冗談でも変な事を翔ちゃんに言ったことにびっくりしたけれど、同時に翔ちゃんに僕の動揺を悟らせたくなかった。だから思わず同調する事を言ってしまったのもそのせいだろう。
「…今日は青山さんに無理言って靴選んでもらったの。じゃあね、翔ちゃん。」
僕は翔ちゃんの彼女さんの顔を見るのは出来なかった。だからちょっと無視した感じになってしまったけれど、恥ずかしがっていると勘違いしてくれたら良いな。まだ翔ちゃんの彼女さんと対面切って話をする気分にはなれない。
僕が店の出口へと向かうと、翔ちゃんと少し話していた青山さんが二人と別れて僕の後をついて来た。
「いいの?翔太と話さなくて。あいつ侑くんと話したそうだったけど。…何か翔太って侑くんの事めちゃくちゃ可愛がってんのね。いつから連絡取ってるのかって、凄い怖い顔で詰められたわ。」
僕は動揺を隠そうと、前を真っ直ぐ向いたまま呟いた。
「昔から過保護だから…。でも関係なくない?彼女と来てたのにさ。余計なお世話って感じ。」
そう言うと青山さんは、面白そうに笑って僕の顔を覗き込んで言った。
「そうなの?何か可愛い幼馴染の反抗期って感じだよね。翔太もバカだよね。あんな子より侑くんの方がよっぽど可愛いのにね。翔太はさ、人が良いから、それこそ俺をトロフィー彼氏にしてた元カノ達と同じ事されてるのに全然気がついてないんだよ。
男はバカだよね。…あの子ってあんまり良い噂聞かないからさ。圭はおすすめしてたけど、あいつは根っからの女ったらしだからねぇ。まぁ、翔太は基本女子には塩対応だから、あれくらいグイグイくる女子で丁度なのかな?」
そう呆れた様に話す青山さんの言葉は、グサグサと僕に刺さりっぱなしだった。そんな女子なら僕にしとけば良いのに。そう言う僕だって十分ビッチだ。…男はビッチって言わないのかな。
「‥なんか機嫌悪い?ごめんね、侑くんの大事な幼馴染の事色々言って。でもさ、翔太はあの子より侑くんの方をよっぽど大事にしてる感じしてて、この前の花火大会でもヤバい雰囲気だったんだよ。」
僕は顔を上げて青山さんを見つめた。青山さんはにっこり笑って言った。
「やっぱり翔太のことは気になるんだ。反抗期でも大事な幼馴染だもんね。いやね?翔太が侑くんの事無理矢理送ってったでしょ。そしたらあの彼女さん、めちゃくちゃ怒っててさ。怖かったよ。
普段翔太の前じゃ猫被ってるからさ、皆んなで顔を見合わせて怖ぇってなってさ。でも俺だって侑くんだったら絶対送ってったよ。侑くんには俺もクラクラするからさ。」
いきなり口説かれて、僕は不意を突かれて青山さんのじっと僕を見つめる瞳に囚われてしまった。
「…青山さんも、圭さんの事言えないんじゃないですか?中坊にそんな事言うなんて。」
すると青山さんはクスクス笑って僕の頬を軽くツネってささやいた。
「全く、スルスルと逃げるのが上手いんだから。流石に中学生出されたら、こっちから手は出せないよ。いくら同性でもね。でも俺、侑くんは性別関係なく可愛いなって思ってるからさ。そこん所よろしくね。」
ぱっと見小さな店かと思いきや、奥行きや地下もあって品数豊富なこの店は若者に人気の様で、次から次へとお客さんが入っては出て行った。僕がレジを終えて商品を受け取ると、僕は青山さんが誰かと話しをしているのに気がついた。
背中を向けて棚の向こうで話をしてる青山さんの後ろから顔を出すと、そこには翔ちゃんと多分彼女さんらしき女の子が居た。ドクンと胸が嫌な音を立てて、同時になんとも言えない苦々しい感情が渦巻いた。
彼女さんと一緒にいる翔ちゃんにニ度と会いたくはなかったのに。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、翔ちゃんも驚きの表情を浮かべて、次の瞬間には眉を顰めて僕と青山さんを交互に見つめた。
「…侑、何で弓弦と一緒?」
すると青山さんが僕の肩に手を回して楽しげに言った。
「今日は侑くんとお買い物デートなんだ。お前達もデートだろ?」
僕は青山さんが冗談でも変な事を翔ちゃんに言ったことにびっくりしたけれど、同時に翔ちゃんに僕の動揺を悟らせたくなかった。だから思わず同調する事を言ってしまったのもそのせいだろう。
「…今日は青山さんに無理言って靴選んでもらったの。じゃあね、翔ちゃん。」
僕は翔ちゃんの彼女さんの顔を見るのは出来なかった。だからちょっと無視した感じになってしまったけれど、恥ずかしがっていると勘違いしてくれたら良いな。まだ翔ちゃんの彼女さんと対面切って話をする気分にはなれない。
僕が店の出口へと向かうと、翔ちゃんと少し話していた青山さんが二人と別れて僕の後をついて来た。
「いいの?翔太と話さなくて。あいつ侑くんと話したそうだったけど。…何か翔太って侑くんの事めちゃくちゃ可愛がってんのね。いつから連絡取ってるのかって、凄い怖い顔で詰められたわ。」
僕は動揺を隠そうと、前を真っ直ぐ向いたまま呟いた。
「昔から過保護だから…。でも関係なくない?彼女と来てたのにさ。余計なお世話って感じ。」
そう言うと青山さんは、面白そうに笑って僕の顔を覗き込んで言った。
「そうなの?何か可愛い幼馴染の反抗期って感じだよね。翔太もバカだよね。あんな子より侑くんの方がよっぽど可愛いのにね。翔太はさ、人が良いから、それこそ俺をトロフィー彼氏にしてた元カノ達と同じ事されてるのに全然気がついてないんだよ。
男はバカだよね。…あの子ってあんまり良い噂聞かないからさ。圭はおすすめしてたけど、あいつは根っからの女ったらしだからねぇ。まぁ、翔太は基本女子には塩対応だから、あれくらいグイグイくる女子で丁度なのかな?」
そう呆れた様に話す青山さんの言葉は、グサグサと僕に刺さりっぱなしだった。そんな女子なら僕にしとけば良いのに。そう言う僕だって十分ビッチだ。…男はビッチって言わないのかな。
「‥なんか機嫌悪い?ごめんね、侑くんの大事な幼馴染の事色々言って。でもさ、翔太はあの子より侑くんの方をよっぽど大事にしてる感じしてて、この前の花火大会でもヤバい雰囲気だったんだよ。」
僕は顔を上げて青山さんを見つめた。青山さんはにっこり笑って言った。
「やっぱり翔太のことは気になるんだ。反抗期でも大事な幼馴染だもんね。いやね?翔太が侑くんの事無理矢理送ってったでしょ。そしたらあの彼女さん、めちゃくちゃ怒っててさ。怖かったよ。
普段翔太の前じゃ猫被ってるからさ、皆んなで顔を見合わせて怖ぇってなってさ。でも俺だって侑くんだったら絶対送ってったよ。侑くんには俺もクラクラするからさ。」
いきなり口説かれて、僕は不意を突かれて青山さんのじっと僕を見つめる瞳に囚われてしまった。
「…青山さんも、圭さんの事言えないんじゃないですか?中坊にそんな事言うなんて。」
すると青山さんはクスクス笑って僕の頬を軽くツネってささやいた。
「全く、スルスルと逃げるのが上手いんだから。流石に中学生出されたら、こっちから手は出せないよ。いくら同性でもね。でも俺、侑くんは性別関係なく可愛いなって思ってるからさ。そこん所よろしくね。」
11
あなたにおすすめの小説
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜
中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」
大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。
しかも、現役大学生である。
「え、あの子で大丈夫なんか……?」
幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。
――誰もが気づかないうちに。
専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。
「命に代えても、お守りします」
そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。
そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める――
「僕、舐められるの得意やねん」
敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。
その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。
それは忠誠か、それとも――
そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。
「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」
最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。
極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。
これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ふた想い
悠木全(#zen)
BL
金沢冬真は親友の相原叶芽に思いを寄せている。
だが叶芽は合コンのセッティングばかりして、自分は絶対に参加しなかった。
叶芽が合コンに来ない理由は「酒」に関係しているようで。
誘っても絶対に呑まない叶芽を不思議に思っていた冬真だが。ある日、強引な先輩に誘われた飲み会で、叶芽のちょっとした秘密を知ってしまう。
*基本は叶芽を中心に話が展開されますが、冬真視点から始まります。
(表紙絵はフリーソフトを使っています。タイトルや作品は自作です)
箱庭の子ども〜世話焼き侍従と訳あり王子〜
真木もぐ
BL
「他人に触られるのも、そばに寄られるのも嫌だ。……怖い」
現代ヨーロッパの小国。王子として生まれながら、接触恐怖症のため身分を隠して生活するエリオットの元へ、王宮から侍従がやって来る。ロイヤルウェディングを控えた兄から、特別な役割で式に出て欲しいとの誘いだった。
無理だと断り、招待状を運んできた侍従を追い返すのだが、この侍従、己の出世にはエリオットが必要だと言って譲らない。
しかし散らかり放題の部屋を見た侍従が、説得より先に掃除を始めたことから、二人の関係は思わぬ方向へ転がり始める。
おいおい、ロイヤルウエディングどこ行った?
世話焼き侍従×ワケあり王子の恋物語。
※は性描写のほか、注意が必要な表現を含みます。
この小説は、投稿サイト「ムーンライトノベルズ」「エブリスタ」「カクヨム」で掲載しています。
Free City
七賀ごふん
BL
【彼が傍にいるなら、不自由はなんでもないこと。】
─────────────
同性愛者と廃人が溢れる自由都市。
そこは愛する人と結ばれる代わりに、自由を手放す場所だった。
※現代ファンタジー
表紙:七賀ごふん
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる