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貴族へ

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ーー 王都のギルドの長い1日。

「ギルマス、緊急通報です。」
「どこからだ?」
「カブール子爵領のギルド支部からです。」
「分かった、サブはどこだ?」
「今日は姿が見えません。」
「最近たるんでないか。」

「はい、ギルマスだ。どうした?」
「大変なことが起こっています。本日ここに依頼で来られた冒険者から、商隊の警護を受けた冒険者が盗賊と通じており、途中の森で盗賊の待ち伏せを受けて襲われたそうです。別の冒険者が盗賊とその冒険者らを斬り殺して難を逃れたそうで、その冒険者らの冒険者証を持ってきています。」
「分かった送れ、そして報告した冒険者の名前も送れ。」
「冒険者証の番号は・・・・の4人です、報告者はアレフ、スノーの二人です。なんでも昇格依頼で来たそうです。」
「昇格依頼のアレフだと、・・・・分かった。他は何かあるか?」
「確認に行った者からの報告で現場には24人の死体がったそうです。」
「分かった。ありがとう。」

「・・・・、サブマスターを探せ!それと依頼を調べろ、アレス宛の依頼だ。カブール子爵領行きの警護任務だ。」
と矢継ぎ早に命じると、部屋に篭ったギルマス。

  ◇   30分後。

「ギルマス、依頼書を見つけました。カブス商会の警護依頼です。メンバーは未記入です。」
「いつの分だ?」
「3日前のようです。カブス商会の者が直接サブマスターに面会していたようです。受付のものが見ています。」
「それでサブマスターは見つかったか?」
「まだです。」
「・・Bランクを5名ほど集めろ。緊急にだ。」

◇    1時間後。

「ギルマス、集めました。別室に呼べ」
「分かりました。」
その後、ギルマスはBランクの冒険者に緊急依頼をした後、カブール子爵の支部に連絡をしていた。

◇    30分後。

「幹部だけを集めろ。会議室だ。」
ギルマスが幹部を集める。
「いいかここでの話は極秘だ!全貌はわからんが、王都のサブギルマスが盗賊団と手を組んでいた可能性が高い。現在サブとカブス商会の関係者を探している。今までも幾つかの依頼不明の事件があるようだ。解明されるまでこの事は口外禁止だ。このメンバーはこれよりここで待機だ。」


  ◇    2時間後。

「皆んな、仕事だ。サブが見つかった今取り調べ中だが、奴の部屋を探せ。それと繋がりがありそうな冒険者も調べろ。」
と言うギルマスの号令で皆んな一斉に動き出した。


 ◇    その日の深夜。

ギルマスが幹部を集め
「事件がほぼ判明した。
サブマスターは、女に入れ上げて貢ぐ金を稼ぐために悪い仲間と接触。その挙句盗賊団とのつながりができた後、小口の警護依頼を中心に密かに依頼を受けて盗賊に情報を流して襲わせていたそうだ。
今回は息のかかった冒険者を仲間に入れて大口の商隊を襲わせたが、依頼を受けた冒険者が盗賊団としては最悪だったようだ。全員がその場で斬り殺されたようだ。
成功を確信していたサブは、女のところにいたのを見つけられ、取り調べで全てを白状した。
他に仲間がいたがそれも全て捕まえた。
今回の事で被害を受けたカブス商会と冒険者2名には、ギルドから謝罪をする予定だ。
皆も以後このようなことがないように、注意してくれ。」
と説明をした。

これでやっと帰れる。
誰かの呟きが聞こえた。

ーー 魔法が色々使えるようになったみたい。

ドラゴンの力が流れ込んで以来、色々なことができ始めたアレフ。
スノーに手解きを受けると、たちまちいろいろな魔法が使え出した。

「アレフ凄いわ、あなた全属性の魔法が使えるみたいよ。」
興奮気味のスノー。
「ねえ、空間魔法はどう?伝説の収納魔法や転移魔法は?」
と言われ考えると頭に浮かぶ
「大丈夫そうだよ。今度スノー用の収納魔道具を作ってあげるよ。どんなものが良い?」
「え、ほんと!腕輪か・・指輪がいいわ。」
と答えるスノー、指輪の言霊が強かったのは気のせいかな。


腕輪と指輪を準備したアレフは、空間収納の魔法陣をイメージしながら腕輪と指輪に付与していく。
それぞれが強く光る、鑑定すると「収納の指輪」「収納の腕輪」と表示された、成功だ。

「スノー、腕を出して。」
スノーは躊躇することなく左手の薬指を突き出しようにアレフに差し出した。
「分かってるよ。その指にアレフは指輪をはめると自動で大きさが変わった。」
「ピッタリだわ。ありがとう一生大事にするわ。」
「ああ、それと腕輪もあるがこれはどうする?」
と言うと右手を出した、コッチにはめろと言うことだろう。
アレフは、黙って右手首に腕輪をはめる、これも自動で大きさが変わる。
「ありがとう目的別に収納することにするわね。」
と嬉しそうなスノーを見て、悪くはないかと思うアレフだった。


ーー 貴族になるか?


冒険者ギルドのギルマスから呼び出しを受けた。
この前の謝罪として金貨100枚とAランク昇進は決まっていた。
「あのドラゴンを王城で見せてほしい、いいか?」
「いいですけど、王城でと言うことは・・王様が見たいと言うことですか?」
「そう言うことだ、俺が一緒に向かうから明日、家に迎えにいくから待っとけよ。」
と言われた。

スノーが
「多分単独のドラゴンスレーヤーだから、貴族位を与えるんだよ。あの大きさなら・・、多分男爵あたりかな。」
と言うので
「男爵?貴族か。どうだろうか・・・。」
「いいんじゃない。多分法衣の領地無しだよ。気軽に受ければいいと思うよ。」
と言うのでそうか名ばかりなのか、それならいいか。


 ◇   セガール王国王城。


国王陛下の面前に控えるアレフ。王の横の宰相が
「ドラゴンスレーヤー、アレフよ面をあげ。」
と言われ顔を上げるアレフ。
「ドラゴンスレーヤーよそのドラゴンを余に見せて欲しいのだが。」
と国王に言われたアレフは
「はい、しかしここでは狭すぎて・・中庭でもよろしいでしょうか?」
よ答えると
「そうか、大きいのか。良いぞ向かおう。」
ノリの良い国王だ。
裏庭に移動した皆の前に首と胴体を出す。時間経過がないためまだ生きているような姿に、大きくどよめきが起こる。
「なるほど大物じゃ。王国で買い取らせてもらって良いか?」
と言う国王にアレフは
「国王様に申し上げます。私はセガール王国民、セガール王国内で倒した最初のドラゴンは、国王様のものと考えます。どうぞお納めください。」
と言うと
「なにこれを余に差し出すと言うのか。相分かった、アレフお主こそセガール王国民の誉れである。子爵位を与えるものとする、今後もセガール王国のために活躍を楽しみにしておるぞ。」
と言うと大きく笑いながら王城に戻っていった。
アレフも、ギルマスと共にその場を下がっていった。

帰りにギルマスが
「あのドラゴンなら一生遊んで暮らせたものを」
と言うのに
「ドラゴンならまた倒せばいいだけ、今度狩りに行ってくるよ。」
と答えると
「ゴブリンみたいに言うんじゃねえよ。」
と苦笑いされた。


その後改めて王国に呼ばれ、
「その方に子爵位を授ける。」
と国王名の許可状を頂いた。

ーー セガール王国国王    side


「何!単独のドラゴンスレーヤーが誕生したとな。それはセガール王国見に間違いないか?」
「はい、アルカトラズ辺境伯領出身の模様です。」
「それはめでたい、ぜひ王城に呼んでその栄誉を讃えてやろう。」
「はいモノはまだ持っておりますので、往生でお披露目したいと思っております。」
「良かろうそのように計らえ、楽しみだ。うん、いいことだ。」
大いに喜んだ国王は子供のようにその日を楽しみにした。

「何!余に差し出すと言うか。」
国王はその言葉がとても嬉しかった。
ドラゴンなど一生かかっても倒せるとは限らない、しかも見れば恐ろしく大きく今にも動きそうなドラゴン。国王も腹を決めた。
「子爵位を与えるものとする。」
と断言した。

この時アレフもギルマスも法衣の貴族位と思っていた、しかし国王は領地持ちにする気で口にしたのだった。
その訳は、王国内の貴族の中で悪政のため領民が四散し、ほぼ詰んだ領地があったのだ。
そこをこの実直そうな若者に託そうと考えたのだ。
多分宰相他多くの者が反対するだろうが、あの貴族をあそこまで見ぬふりしたのは王国にも責任がる。
それを見ぬふりして何を今更言うのかと言うことだ。

なんとか出来んかな。と思う国王であった。その玉座の横にはあのドラゴンの頭の剥製が置かれてある。
今にも食いつきそうな顔が縦に裂けている、戦いの凄まじさを感じる傷だ。


ーー 故郷に錦の旗を立てに帰ろうか。


スノーを連れてアルカトラズ辺境伯領に向かうことになった。
家を出てちょうど1年、14歳のアレフ。
王都に家を持ち子爵位まで手にした、王国内でも出世頭といえよう。
辺境伯様にも挨拶をしなければならないようで、挨拶用の土産などかなり奮発しようとしたら。
スノーから
「貴方には魔法の道具を尽きる才能があるでしょう。収納の魔道具はとても貴重よ。辺境伯様には二人に娘と一人の息子がいるそうよ。指輪を2つ腕輪を2つそれと剣を2振でいいと思うわ。」
と言われたので、それらしい箱を用意して1日で土産を準備した。

馬車も買い御者のタイルに任せて、メイドのエルザを連れて向かうことになった。

3日で故郷の辺境伯領に着いた。
自宅の鍛冶屋に馬車を止め、馬車から降りると母が迎えてくれた。
「おかえりアレフ、立派になったそうで嬉しいわ。あらそのお嬢さんたちは?」
「ただいま母さん。あ、この子は家で働いているメイドのエルザで、この子はスノー・・。」
「初めましてお母様、私はスノーと申します。アレフ様とはこうゆうお約束をしている中です。どうぞよろしくお願いします。」
と突然スノーが左手をちらつかせて挨拶を始めたが、なんか変な挨拶だったな。
「あらそうなの、私のことはお母さんと呼んでね。」
とニコニコの母親を不思議そうに見ながら、家に入った。

そしてタイルに辺境伯への先触れを頼んだ。
「都合の良い日を教えて欲しいと伝えてくれ。」
と指示した。

実家はそこまで広くはなかったので、近くに宿を借りていた。
父親に自分で打った剣を見せた。
しれをじっと見た親父は
「お前、鍛冶屋の方が良かったんじゃねえか。」
と本気の顔でいったが、
「自分の鍛えた剣で、魔物を倒すのが俺の夢だったんだよ。」
と答える
「確かにそんな奴もいるな。」
と納得してくれた。
剣を3振ほど家に置いていくことにした。

母には王都で流行りの服や小物を沢山やると
「近所の人に配れるからとてもいいわ。」
と喜んでくれた。別にこっそり金を渡したが、なかなか受け取らなくて苦労した。


 ◇    辺境伯邸にて。


3日後、アルカトラズ辺境伯邸に向かっていた。

辺境伯邸は砦を兼ねたような無骨な建物だった。
迎えの執事に案内されて、屋敷内に入る。

出迎えた辺境伯に挨拶を行い、応接室のような部屋に案内された。
「我が領地出身の者がドラゴンスレーヤーとなり、子爵位を得るとはめでたいことだ。国王も大変お喜びで私にもお褒めの言葉を賜ったよ。」
ご機嫌が良かった。
そこでスノーがアレフに合図をする。
「辺境伯様、大したこともできませんが私の両親もまだこの地で暮らしております。そこで今までのお礼と言うとおこがましいのですが、お土産をお持ちしました。お受け取りいただければ幸いです。」
と言いながら幾つかの箱を差し出した。
スノーが指輪と腕輪の箱を辺境伯夫人やお嬢様らに差し出す。
アレフが長めの箱を辺境伯とその息子に差し出すと。
「確かめていいのか?ドラゴンスレーヤー殿からの贈り物とあっては、家宝になるやもしれぬが。」
と言いつつ箱をそれぞれ開ける。
スノーが夫人らに
「これは収納の魔道具です。嫁入り道具としてはこれ以上のものはないと思いますが。」
と説明すると
「まあ、そんな貴重なものを!」
感動する夫人。

剣の箱を開けた辺境伯と息子が
「これは!なんと素晴らしい剣か。さすがドラゴンスレーヤー殿だ。家宝にも匹敵する業物。ありがたく頂戴するが、ちと高価すぎはしないか?」
と心配顔を見せる
「国王様に差し上げたドラゴンに比べれば、大したものではありません。」
と言えば
「こりゃ、流石と言えるユーモア。これからも頼ってくれて構わぬ。」
と、後ろ盾になることを約束した辺境伯様。

その後食事を共にし、大いに親交を深めた。

故郷で大いに錦を飾ったアレフは、2日後の王都へと帰っていった。

見送る両親も誇らしげであった。
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