土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。

モンド

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旅の途中の憩い

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ーー 次の街へ


ファースト達は次の街へと旅を続けた。
この頃になると、ギドラは飛行魔法が自由に使える様になり、ファーストと一緒に空を移動することが可能になった。

「これからは空の旅だ、ソーニャこっち来い」
と言うとソーニャを背中に担いで空に舞い上がるファースト。
ソーニャは背中で
「前がいいのに」
と呟いていた。

空を飛びながらファーストは、不思議な跡を見つけた。
森から王都方向へと続く抉られた様な地面の跡。
「何だあの跡は?」
「まるで沢山の何かが通ったみたいですね。」
「沢山の何か・・森から・・魔物のスタンピードか。」
「ちょっとあの先を確認するぞ。」
と言うとファーストは、速度を上げて地面の跡を追いかけた。
「ここは?王都なのか?ここだけが壊滅してるな。・・・俺には関係ないことだ。」
ファーストはそのまま方向を変えると、飛び続けた。

しばらく飛ぶと山裾に大きな湖を見つけた。
「この辺りの街は・・・おお、見つけた。」
新たな街にたどり着いた。


ーー セントルイスという街


湖の側にある街セントルイス。
人口2万の中核的な街だ。
城壁は高くなくこの辺りにはそれほど魔物が現れないのだろう。
街に入ると、人々が不安な表情を見せていた。

「どうかしました?皆さん心配顔で。」
と1人の男性に尋ねると
「心配も何もねえぜ、王都が魔物で潰れて。王様もみんな死んだそうだ、この王国はこれからどうなるのか心配なんだよ。」
そうか王都では国王も死んだのか、もう俺を呼びつけようとする者もいないわけだな。
そんな風に考えていたファーストは、宿屋を探すことにした。

「おおここなんか良さそうだな。」
「ええそうですね。綺麗でいい感じです。」
「ぐえええ。」

「部屋空いてるか?」
と覗き込んで声をかけると
「空いてますよ、何人様ですか?食事は?」
と出てきた女将の様な女性に聞かれた。

「広めの部屋一つでいい。食事も付きで。」
と答えると「これに記載を」と台帳を手渡された。
「同じ部屋だ、やったー。」
小声で呟くソーニャ。


ーー 久しぶりの風呂。


宿屋には風呂が珍しくもあった。
この辺りは水が豊富で、ゆとりがある様だ。

いつも通りの顔で俺が風呂に入っていると、ソーニャが普通の顔で入ってきた。
「いつまで一緒の風呂に入るきだ?」
「ええ?ずーと一緒に決まってるじゃないですか、それともファースト様は全てを曝け出した私を。傷者の様に捨てるんですか?」
「傷者の?人聞きの悪いことを言うな。まあ今更か。」
と言いながら背中を向けると、いつも通り背中を洗い出した。

風呂から上がりさっぱりした俺は、いい匂いがするのに気づいた。
「美味そうな匂いがするぜ。」
「そうですね。ここはどんなご飯が出るにでしょう?」
ソーニャも心待ちにしているようだ。

ソーニャと言えば、レベルが上がったお陰で耳や尻尾を消すことが、長時間できる様になり街中でも目立たなくなったが、より女らしく成長したので男に視線は相変わらず多いのだが。

ギドラも、体長が5m程になりもう直ぐ独り立ちできそうだと言っていたが、普段は1m程に小さくなってペットの様にしている。
だがその食欲は旺盛で、魔物を身体の数倍は食べることがある。

でも今日は宿の飯を御所望の様だ。
「我にも食わせろよ」
と念話で送ってきた。

宿に余分にお金を渡し、多めの料理を持って来させ、食事を始める。
「あう。ここのご飯美味しいですね。」
「もっと寄越せ」
ガッつく1人と一匹を見ながら俺も食事を楽しむ。

ここでふと俺はある疑問を思い出した。
「ギドラは女神に生まれ変わりの時に頼みをしたと言ったが、結局何を願ったのだ?」
「俺様程になると、卵から孵るまでの魔力の必要量は、自然界では約500年程かかるので誰か魔力を与えてくれる者を、来させてくれと願ったのだ。」
と答えるとギドラ。
俺が向かわなきゃ500年あそこに居たのか。
多分あんな場所に行ける人間はいないし、魔物ならさらに近づかないだろう。
と思いながらも口にするのはやめておいた。

3日ほど宿に泊まり次の街に向かった。
目的地は山岳地帯だ。


ーー  山の民と守り神の竜


北に飛ぶと大きな山脈が見え始める、ここを越えるのは人では無理だろう。

狭い平地に幾つかの集落が見えるが街には程遠い。
さらに飛びながら探すと、100世帯ほどの村が見えてきた。
「この辺りでは一番大きそうだ。あそこにするか。」
と言いながら俺はその村の入り口に舞い降りる。

空から舞い降りた俺たちに驚く村人、しかし真に驚くのはギドラを見た時だった。
「ドラゴン!もしやその方は山の守り神の竜ではありませんか?」
と聞いてきたので
「いやコイツは俺の従魔で、ここには初めてきた。」
と答えながら、守りの竜の話を尋ねると。

【この山々には昔から多くのドラゴンが住み着いており、その中で最も大きなドラゴンは人との会話ができる古竜だと言う。
ここは魔族と国境を接しており、山を越えて侵攻する魔族を食い止めているというのだ。
しかし最近はめっきり姿を見せることもなく、時より魔族が山を荒らして困っている。】
と話をしてくれた。

俺はちょっと興味が湧いてギドラに知っているかと聞いた。
「古竜ならば片手ほどはいる。この辺りのヤツは青い個体の古竜で俺と同じくらいの歳だから、卵にでもなっているのだろう。」
と答えた、ならそいつも卵から孵しておく必要がありそうだ。

村の滞在許可をもらった俺は、幾らかの塩や砂糖を渡すと村長は大いに喜んでくれた。


ーー  古竜探し。


次の日から山を飛びながら古竜がいそうな場所を探った。
3日めにそれらしい洞窟を見つけたが、そこには先客がいた。
「やっと見つけたぞ。コイツのおかげで我らは自由に山を越えられず、イライラしていたのだ。魔力を与えねば卵が孵らぬことは分かっている。魔境の奥に捨ててやる。」
と5人ほどの魔族は、卵を抱えて持ち去ろうとしていた。

「その卵に用がある、そこに置いておけ。」
ファーストが魔族らに声をかけると、驚いた様に振り向く魔族ら。
しかし若い人間の男1人と見た魔族らは、薄ら笑いを浮かべて
「人如きが我らと対等に話をするなど、傲慢すぎるぞ!」
と威圧してきたが、毛ほども感じなかったので、
「威圧の仕方も分からないのか魔族は。」
と言いながら威圧を発すると、5人のうち3人が膝を突き苦しそうにうめき出した。

「貴様、ただの人間ではないな。ここで殺すことにしよう。」
魔族のリーダーらしき男が攻撃魔法繰り出した。
それを避けることもなく手で叩き落とすファーストに驚きはしたが、威圧が薄れて3人が立ち上がった。
「魔族も弱いな。皆んなで掛かって来いよ。」
地挑発した。

「生意気な態度もそれまでだ。」
と魔族は言うと、一斉に攻撃魔法を放ってきた。
その攻撃もそのまま受けるファースト。
涼しい顔で受け切ったファーストに焦り出す魔族ら。
「卵を置いていけば見逃してもいいぞ。どうする?」
「魔族を舐めるな人間!これども喰らえ!」
魔族のリーダーの使える最高の魔法と思われる攻撃魔法が、放たれた。
炎の魔法だ。
「アブソリュート・ゼロ」
ファーストがそう呟くと、炎は全てが凍りついた。
魔族らも何が起こったか分からないままに、凍りついたのだろう。
大剣を取り出し卵を抱える腕を切り落として、卵を収納する。

洞窟の奥には古い身体のドラゴンの抜け殻が有ったのでそれも収納した。

凍りついた魔族はそのまま放置して、ファーストは村に戻った。
村で借りた小屋の中で、卵を取り出すとギドラに確認してもらった。
「ああこの卵はアイツだ。すまんが魔力を分けてくれぬか、念話もできぬ様だ。」
と言われ魔力を反発するまで押し込む。

5日ほど魔力を押し込んでいたら突然、卵が動き出し割れ始めた。
新しき古竜の誕生だ。

卵から孵った古竜は、全身が青かった。
そして周りを見回してからファーストを見ると。
「お主が我に魔力を分けた者だな。これほど早く生まれ代わりが出来るとは、女神に頼んだ甲斐があった。」
と言う古竜に。
「女神はそんな頼みのことは、きっと忘れているよ。たまたま俺が見つけたのであって、もう少しで魔族に魔境の奥に捨てられるとこだったのだぞ。」
と言うと、青い身体が一層青くなった様に見えた。


   2月後。


魔力を毎日たっぷり注いだおかげか、青い古竜は8mほどの大きさにまで成長した。
「普通であれば、体長15m以上にならねば山の主としての勤めができぬとこであったが、お主のおかげでもう大丈夫の様だ。
そこで一つ我にも名前をつけてくれぬか。」
と言うので、
「名前か。エレキ・・と言うのはどうか?雷の意味があるのだが。」
と適当なことを言うと
「我の属性の一つが雷と気付いておったか。エレキ・・よかろう。ありがたく頂戴する。」
と言うと一回り大きくなった。

村長に分かれの挨拶をすると、エレキは山の方にファーストらも同じ方向に飛び立った。

エレキが聞いてきた
「何処へ向かわれる。」
と、それにファーストは
「魔族の国に」
と言うと山々をはるかに超える高さに舞い上がると、悠々と越えていった。
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