孤独の旅人。その行き着く先には・・・。

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エステルの街

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エステルの街

次の日の昼過ぎに商隊はエステルの街の門に着いていた。

護衛隊長のケントが門兵に昨夜の盗賊の話を伝え、確認の兵士が直ぐに確認に向かった。

エステルの街は、辺境伯が治める城壁都市で3国に接して公益で盛んな交易都市でもあった。
人口は約5万人、街としては大きな方である。
5万もの人々が住む街をすっぽりと囲むように、高く堅牢な城壁が異彩を放っている。

街に入る際、アルトの身分証が無いため少しばかり時間を取られたが無事に街に入ることができた。
街に入り商会通りを進み一番奥の大きな商会の前に止まった馬車。
「お疲れ様でした。ここが我が家です。アルト様には荷物をあの倉庫にお出ししてもらっていいですか?」
会頭のアスベルさんがそう言うとアルトは倉庫に収納から次々に出した荷物を置いていく。
「これで全部のはずだ、確認してくれ。」
アルトがそお言うとアスベルさんは店の者を使って確認していき。
「はい、全てございました。ありがとうございます。それからお礼や謝礼の件で本日は我が家にお泊まりくださいませんか?」
と言うので、
「今から冒険者ギルドで登録して魔物の素材を買い取って貰ったらまた尋ねてくるよ。」
と言うと警護隊長のケントと共に冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドに着くとアルトは先ず登録を申請した。
ケントは依頼完了とウルフ系の魔物の群れの情報と盗賊について報告するためにギルマスの元へ。

晴れて冒険者登録が済んだアルトは、買取カウンターに移動し素材の買取と冒険者の亡骸を何処に出せばいいか聞いていた。

そんな所にケントとガタいいのいいおっさんが現れて、
「素材や死体は裏で確認するからついて来い」
と言いながらギルドの裏に歩くのについて行くアルト。

ギルドの裏は解体場や倉庫があり大物の魔物や冒険者ギルド依頼の荷物などが置かれていた。
指示された場所に警護の死体やウルフの屍体を出した後。
別に森で狩った魔物の素材を半分ほど取り出した。

「これは!魔の森の魔物か。」
驚くギルド職員達、それを見てガタいいのおっさんが
「アルトとか言ったなお前。ちょっと部屋についてきてくれ、買い取りには時間がかかるからな。」
と言いアルトの肩を叩いて促した。

おっさんはこのギルドのギルマスのようで、アルトの冒険者証を取り上げると職員にランクに訂正を指示していた。

新しいギルド証と買取の計算が終わり、机の上に金貨の山とギルド証が置かれた。
「こいつがお前のギルド証だ。本来ならF級からの登録だが、実績からC級からになっている。それとウルフの買取はケントらとの折半、後の素材は金貨580枚だ。それと盗賊の件は兵士の確認が終わり次第賞金首の金を出す。現場でお前が持ち帰った品物はお前に所有権があるから好きにしろ。最後に警護の者達を連れて帰ってきてくれて感謝する。」
と言って頭を下げた。

「たいしたことでは無いです、頭を上げてください。」
と答えたアルト。
その後連絡先を伝えて冒険者ギルドを後にしたアルトは、街を散策しながらアスベル商会へと向かった。


   冒険者家業と辺境伯

ここはエステル辺境伯の執務室。

「この情報は間違いないのか?」
「はい。盗賊団ガイヤの首領以下60人の死亡確認いたしました。」
執務机に座るダンディーな男に執事のような男が答える。
「と言うことはだな、12歳の子供が60人からなる盗賊団を殲滅して、更にはダイヤウルフの群れのリーダーすら倒したと言うことで間違いないのだな。」
「はい。報告に間違いがないのでその通りかと。」
歯切れの悪い回答だが、それはしょうがないこと。

この街の行商人を襲い街の交易が滞る程の影響を与えていた盗賊団が、たった1人の子供に殲滅されたと言うのだ。
しかしその証拠が歴然とある以上、疑う余地はないのだが・・・信じられぬ。と言うのが正直な話だ。

「今この街にいるのだな。」
「はい、助けたアスベル商会に滞在しているようです。」
「3日後に屋敷に招待せよ。」
「はっ。承りました。」
と言うと執事風の男は執務室を後にした。
残された辺境伯は、報告書を読み直しながら
「この人物は我が街にとって益か禍か?」
と独り言を呟いた。



アルトは冒険者登録をした次の日から依頼を受けながらお金を稼ぎ出した。
お金自体は女神が持たしてくれたので、しばらく必要がないほど持っていたが、自分の力で稼いだ金で生活したかったのだ。

ただし宿については、アスベル商会の離れを使っているそれは、風呂がついていたのだ。
この世界で風呂は王侯貴族や豪商でなければ持てない贅沢品であり、元日本人のアルトにとって風呂のない生活は考えられなかったのだ。

ではこの世界の多くの人々はどうしているかといえば、水浴びやお湯で濡らしあったタオルで拭くか、浄化と言う生活魔法で清潔を保つくらいなのだ。
確かに浄化の効果は素晴らしく、身体のみならず洋服や持ち物の汚れも綺麗にしてはくれるが・・・心までは癒してはくれない。

そこで約1月間借りる約束で金貨3枚を支払っていた。
アスベルさんはお金は受け取れないと拒否したが、「それでは出て行く」と言うアルトに根負けしたのだ。

今日も森から溢れて草原を闊歩する魔物を討伐してギルドに素材を売って帰ってきたところ、
「アルト様、辺境伯様から招待状が届いております。」
と伝言されたのだった。
「辺境伯?なぜ僕なんかに?」
意味のわからぬアルトにアスベルさんが
「多分あの盗賊の討伐に関してお礼が言いたいにでしょう。あの盗賊のためにかなりこの街の交易が落ち込んでおりましたから。」
と内情を教えてくれた。

「しかし領主に面会するような服や礼儀は持っていないし知らないぞ」
と言うアルトに
「大丈夫ですよ。私の息子のお古ですがちょうど良いものがあります。礼儀は冒険者であれば多めに見てくれますよ。」
と教えてくれた。


⭐︎ 3日後。

辺境伯から遣わされた馬車に乗りアルトは辺境伯邸に向かっていた。
馬車にはお土産として、盗賊から奪った
 ・武器類多数
 ・食料・酒
 ・貴金属
を準備している。
何故マジックバックを利用しないかといえば、アスベルさんから
「アルト様が持つマジックバッグは国宝級の品物です。そのような物をおいそれと人前で見せては問題を呼び寄せてしまいます。」
とアドバイスされてのことだ。

今は代わりに使うマジックバッグを購入するために稼いでいる状況だ。
ただし何度かギルドでマジックバッグを使用しているで、アスベル商会で扱っていたマジックバッグを既に女神のお金で購入しており、その代金を補填しているのが実情である。

更にアルトはスキルとして収納の空間魔法を覚えた時に習得しているので、本来のマジックバッグはそこに保管している。
それはまだスキルレベルが低く時間経過停止に至っていないためだ。

購入したマジックバッグは馬車一台分の容量で、金貨1000枚だった。
女神のお金は各種100枚ずつ入っており、金貨の上の大金貨や白金貨更に聖金貨という単位まで入っていた。


⭐︎ 辺境伯邸にて。

「緊張する必要はない。楽にしてくれ。」
辺境伯邸に入ると下に置かない手厚い歓迎を受け、恐縮していたアルトに。
エステル辺境伯がアルトの対面に座りながらそういった。
「有難うございます辺境伯様。僕は礼儀を知りませんので失礼なことがありましたらその場で教えてくだされば幸いです。」
と答えながら自己紹介を済ますと、土産に持ってきた盗賊の戦利品を執事を通じて差し出した。

「有難いが、これは其方の権利で所有したものであろう。ワシに差し出す必要はないと思うが。」
と答える辺境伯に
「なんでも盗賊のためにこの街の交易が大きな損害を受けたと聞いております。その補填にして貰えれば街の者も辺境伯様に感謝するのではと、浅はかですが街に厄介になっている我が身のせめてもの恩返しです。」
と答えるアルトをじっと見ていた辺境伯。
「その方の思い確かに受け取った。増税も視野に考えていた頃、これは民にとっても朗報となろう。その代わりと言ってはなんだが、ワシにできることであれば協力しよう。」
と申し出た。

その後、晩餐まで頂いてアルトは宿にしているアスベル商会の離れに帰ってきた。
「ふーっ。結構疲れた、取引相手の社長にあった心持ちだった。」
とため息と共につぶやいた。

その頃、辺境伯邸では
「お前らから見てあのアルトという人物は、どう見えた?」
と辺境伯が家族や家臣の主だったものを集めて確認していた。
「盗賊の宝のほとんどを差し出したあたり、無欲かかなりの余裕があると見ました。」
と執事が言えば
「私は考え方や食事マナーを見て彼は、どこかの貴族の子息ではないかと思いました。」
と長男のコハクが意見を言う。
「私はとても大人っぽいと思いましたわ。しかもお母様やお姉さまを見ても嫌らしい雰囲気もなく、紳士的な態度にかなり高い教養をお持ちだと思いますわ。」
と二女のサファイアが言えば。
「討伐された盗賊やダイヤウルフの傷跡を確認しましたが、かなりの腕前と思われます、しかも魔法まで使うとの情報もあります。」
騎士団の隊長であるサガンが答える。
それぞれの話や意見を聞いて辺境伯は
「滞在予定は1月とのことであるが、これから更に影響を持つ人物となると考えられる。そこでワシは彼との縁を結ぶため、後ろ盾としての立場を確立しようと思うがどうかな?」
という発言に「いや」と言う者はいなかった。

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