病床の末期癌患者は、異世界で若さと健康を取り戻す。

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王都激震、魔物のスタンピード

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ーー 王国激震、陰謀と災害の連発。


第二王子が襲われて20日ほど経過した。
護衛騎士のガンテツ男爵は、チャールストン王子が襲そわれた事や安否について一切公言していない。
襲撃者としては、その安否が知りたいとこであるが、医者の出入りもいないことから暗殺が成功したと思い始めていた。

センターターク王国には3人の王子がおり、第一第二王子が第一夫人の子で、第三王子が第二夫人の子供であるが、第三夫人が自分の子供を国王にしたいが為の暗躍のようだ。

第三夫人は、次のターゲットを第一王子に狙いをつけた。
同じように暗殺を計画し、刺客を放つ。

第二王子は、密かに第一王子に連絡を取って、暗殺の危険があることを教えたが、第一王子は取り合わなかった。
それは第一王子と第三王子が仲が良かったからだ。
逆に第二王子の言葉に不審を覚え、それ以降全く連絡が取れなくなった。


ーー 第一王子の襲撃、疑われた第二に王子。


3日後、第一王子が襲われた。
同じように毒がにられた剣で傷を負ったのだ。

さらに同時的ではあるが、東の森で魔物のスタンピードが発生した。
王国は大騒ぎになった。
連絡のつかない第二王子、襲われて傷を負った第一王子、無傷の第三王子を見て国王は、
「第三王子よ、見事魔物のスタンピードを鎮めてまいれ」
と命じると王命を受けた第三王子は、意気揚々と東の森に向かったのだ。

当初魔物の種類はゴブリンやコボルトなど低位の魔物ばかりの目撃報告であった為、そこまで危機感は持っていなかった王国も、第三王子が現場に差し掛かった頃から雲行きがおかしくなってきた。
「何!ミノタウルス、ワイバーンが姿を現したと言うのか?」
王城で報告を受けていた宰相が青ざめる
「ミノタウルスやワイバーンは、単独でもかなり危険生物で、それがスタンピードの一つとなれば国家自体が危険と思われる状態だ。
当然討伐に向かった第三王子の安否も危険に晒される、すぐに帰還の命令を出したが連絡がつかない。

その頃、第一王子は、傷を治療したが日に日に体調が悪くなり、現在は意識朦朧となった。


この時になって、第二王子が王城に姿を現した。
「第二王子よ今までどこで何をしていたのだ?」
国王が鋭く疑いの目を向けて問う。
「はい陛下、私は刺客に襲われて今まで離宮で療養しておりました。」
と答えると
「何お前も襲われたと言うのか?して何故に報告しなかったのだ。」
と聞かれ
「相手が誰かもわからず、尻尾を出すのを待っていたのです。」
と答えたが、国王は疑いの目を向けたまま
「現在、東の森で魔物のスタンピードが発生しており、王国の存亡がかかっておる。お前もそこに向かい第三王子と共に平定せよ。」
と王命を受けた。
「はい陛下、必ずや魔物を防いで参ります。」
と答えると出撃の準備に向かった。


ーー 第二王子   side


「ガンテツ男爵、我は疑われているようだ。ここで魔物を防ぎ手柄を立てねば今後の立場が危ういだろうな。」
と自分の立場が危ういと護衛騎士隊長に漏らしたのだ。
すると騎士隊長が進言した
「王子に報告することがあります。実は先日王子を治療した男について私が調査したところ、その男は現在スラム街を見違えるように立て替えて、怪我人を治していると分かりました。魔法もですがかなり腕も立つようで、今回の進軍には動向を求めるにはどうでしょうか?」
と言うものだった。

「分かったその者のことはお前に任せよう。我々は明日の朝には東の森を目指して出発するぞ。」
と言う第ニ王子に頭を下げて騎士隊長は、スラム街に向かった。


ーー 同行依頼とスタンピードの原因。


タケヒロがスラムの住人を使い大規模な改革を行っている頃、第ニ王子の護衛騎士が尋ねてきた。
その話によると、東の森で魔物のスタンピードが発生し、第三王子が向かっているがかなり強力な魔物が出始めており、第二王子もその討伐に向かうことになった。
しかし、戦力も薬もあまり無い中、向かえばかなりの被害が予想される。
そこでタケヒロに同行を依頼してきたのだ。
タケヒロは、スタンピードの場所と時期を考えて
『俺が森で魔物を乱獲したすぐ後にスタンピードが発生している、ひよっとすると俺の行動が原因の一端の可能性があるな、ここは確認と後始末に向かうか。』と思い
「分かりました、同行しましょう。」
と答えた。


次の日の朝、第ニ王子の離宮に集まった兵士1000人が、東の森を目指して出陣した。
後方に王子を乗せた馬車があるがその席に、タケヒロは同席を求められていた。
「その節は大変世話になった、病床であったとは言え礼もせず誠にすまなかった。」
と言う王子に
「気にしないでください、自分から言い出したこと御礼もいただいたので。」
と断ると、
「聞くところによるとお主は今、スラムに住人を治し住処を立て直しているとか。国王に代わり礼を言わなければならんと思っておった。」
「それほどのこよではありません、崩れかけた教会を直すついでの事、王子に気にしてもらうほどではありません。」
とその話に蓋をした。

「ところでタケヒロ殿は、腕の方も立つと伺いましたが。」
と騎士爵隊長が話を振る
「俺のはチンピラ相手の剣です、正式な訓練を受けている騎士殿には歯が立ちませんよ。」
と答えるタケヒロ。

そのまま馬車は東へと進む、一泊して次の昼頃に魔物の第一派と思われる群れに遭遇した。
初めは足が速いがそこまで強く無い魔物の群れ。
騎士たちは練度の高い戦いを見せ問題なく第一波を防いで見せた。
「王子おかしいですね、この程度の群れであれば第三王子の兵でも防げるはずですが。」
騎士隊長が疑問を口にする。

その後夕刻に第二波と遭遇する。
オークや魔熊、魔猪などの少し大型の魔物の群れだ、ここまで大きくなると兵士でも苦戦し始める。
俺は兵士の防御を抜ける魔物を中心に倒していく。波が落ち着いてきたとこで、兵士の前に出て魔物を倒し始めると、何とか仕留め切った。
レベルが少しだけ上がった。
夜間は魔物も動かないと聞いていたので、その日はそこで野営となった。

「いや流石タケヒロ殿ですな、あの魔物を一刀の元に倒してしまうとは。」
騎士隊長が興奮気味にタケヒロを褒める
「いや、流石は練度の高い兵士達ですね。この調子ならば次の本命もなんとかなるのでは無いですか?」
と尋ねるタケヒロに
「次が本体だと思われますか?」
「はい多分魔の森に何度か仮に入ったことがありますが、中心は分かりませんが中程までなら今日の魔物がほとんどです。この次に来るなら本命だと思いますよ。」
と答えたら
「実はミノタウルスとワイバーンを見たとの報告があるのです。」
と答える騎士隊長。

ーー ミノタウルスとワイバーン。

次の日朝早くに進軍を開始した第ニ王子の兵、良い具合に森からの道が狭くなっている切り通しの道を見つけ、その前に陣を敷いた。

待つこと1時間、遠目でも魔物が向かってくるのが見え出した。
上空にはワイバーンが10頭ほど見える。
「ワイバーンがあんなに!上空からの攻撃に備えよ!」
騎士隊長が檄を飛ばす。

俺は、新しいスキルを手に入れる機会が来たと半ばうずうずしている状態で
「俺にも参加させてください。」
と言いながら防御の列の側に向かった。

予想通りワイバーンが先に飛んできた、兵の列を飛び越えると反転して後方から襲いかかってきた。
それを俺はミスリルの剣に魔力を流しながら、手当たり次第切り裂いていく。
初めはただの獲物と舐めていたワイバーンも、仲間が半分ほど斬り落とされると警戒し始めた。
俺は素早くワイバーンの血を啜る。
「スキル飛行魔法を入手しました。」
「スキル風魔法を入手しました。」
「スキル遠視を入手しました。」
とメッセージが響き、トドメを刺して回るとレベルアップのメッセージが数回流れた。

その後ワイバーンは俺に対して警戒しながら群れで襲い掛かって来たが、スキル竜燐のおかげで擦り傷さえ負うことはなくかえって手の届くところにきた、ワイバーンを手当たり次第切り落とし殲滅した。

「もの凄いですな!ワイバーンを単独でこれほどの数を倒すとは!」
騎士隊長が興奮気味に口にするのを聞き流しながら今度は、兵の前に飛び出した。
迫り来るのはミノタウルスを先頭にした大型の魔物。

「ミノタウルスだけではなく、他にも初見の魔物がいる。全て食らってやる。」
そう呟きながら俺は走り出した。

先頭のミノタウルス5頭が最初の目標だ。
スキル剛力と竜燐、俊速、物理・魔法耐性大を発動したまま、ミスリルの剣に魔力を流してミノタウルスの足を中心に切り裂いていく。
大きな斧のような武器を振り下ろすミノタウルスが、スローモーションの様に見えながらそのすぐそばを抜けながら足を切り裂くと。
後方に抜けた瞬間に5体のミノタウルスが地面に倒れるのが同時だった。
その後は首を切り飛ばして回りその血を啜る。
「スキル超剛力を入手しました。」
「スキル剣術を入手しました。」
「レベルが上がりました。」
と連続でメッセージが流れる。
そのままの勢いで、後続の大型魔物を倒しに向かう。
一つ目のサイクロプスが3体、まるでティラノサウルスの様な魔物が2体、大蛇が3体がいたが全てを切り伏せた。
「スキル重力魔法を入手しました。」
「スキル孔砲を入手しました。」
「スキル隠密を入手しました。」
「スキル気配察知を入手しました。」
「称号絶対者を得ました。」
「レベルが上がりました。」
と続いて頭が痛くなるほどだった。

ふと静かになる中、後ろを振り返れば俺を何か恐ろしいものを見る様な目の兵士が、無言で見つめておりその防御体系は崩すことがなかった。
「しまったな、やりすぎたかな。」
と呟きながら戻る俺の道を盾が割れる様に道を作っていた。

「申し訳ありません。やりすぎたでしょうか?」
と騎士隊長に声をかけると
「ハッ!こちらこそ失礼しました。貴方がここまでの実力者だとは、ありがとうございました。これで我が主人も面目が保たれた上、大きな成果を上げることができました。」
と頭を下げた。
その後は殲滅した魔物をどう運ぶかと言うことで話をしていたので、俺が全てを収納して見せるとまた驚いていた。
その日は、オークの肉や魔猪、魔熊の肉で焼肉パーティーを開催し大いに騒いだのだった。


ーー 第ニ王子チャールストン   side


私は今回の魔物のスタンピード討伐の命には半分死を覚悟していた。
今でも第三王子の安否がわからない状態だ。
あの魔物の種類では・・・多分まともに当たっていればほぼ全滅だろう、ひょっとして逃げていれば生きているだろうがそれでは、王命を守ったことにはならない。
と考えていたが、先ほどのあの男の戦いを目にして、私は強運を自覚しないではいられなかった。
先日の刺客の怪我も毒や呪いを受けて、普通であれば助からなかったものをあの男に巡り合った幸運で助かった。
今回もあの魔物をほぼ一人で殲滅する姿は、古の勇者を彷彿するものだった。

しかし彼の態度は慎み深く、スラムの住人すらも無償の施しをしていると聞く。
彼は本当に何者何だろう。
友誼を結ぶことはもちろんのこと、彼の力に少しでもなれる様にしなくてはいけない気持ちが高まった。


ーー 遠征隊の目的が魔物の次に第三王子の部隊となった。

次の日第二王子の遠征隊は、第三王子の安否を確認するためにさらに東に向かった。
途中の村や街は、廃墟の様な有様でいかにあの魔物らが強力で恐ろしいかを表していた。

「隊長!ここに第三王子の旗が落ちております。」
一枚の破れかけた旗を拾った兵士が報告に来たのを手始めに、
「鎧の破片が落ちています。」
「これは馬車の破片では無いでしょうか?」
などと次々に見つかる第三王子の部隊の形跡、
「生存者を探せ!必ず生き残りが居るはずだ!」
と命じる第二王子。

その後周辺をくまなく捜索するも生存者を見つけることはできなかった。
次の日はさらに東に向かいとうとう東の森が見えるところまで到達した。
「王子、ここまで来て生存者が見つからないのは、ほぼ絶望的と思われます。伝令を飛ばしておきましょう。」
と3名ほどを王都に向かわせた。

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