スキル「改編」を貰った僕は、ステータスを好きに変えられる。

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無能とスキル「改編」

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ーー プロローグ


「何時まで棒を振っているんだ。」
同じ孤児院のカイジが僕に声をかける。
「あと100回。先に戻っていて。」
と、答えると僕は剣に見立てた棒を振り続ける。

僕はアルカトラズという街の教会が運営する孤児院で育った。
もう直ぐ10歳を迎える。そうすれば自分の得意な分野で仕事につくことができる。

孤児院は12歳までしかいられない。13歳を迎えると独り立ちする事になる。
10歳で受ける儀式で、スキルなどの表示されるステータスボードが見えるようになるのだ。

この世界には、レベルやスキルそして魔法が存在する。
街の外には、恐ろしい魔物がおり力の無い者は、自力では旅をすることができない。

僕は冒険者になりたいのだ。自分の力で自由に生きたいのだ。
その為に毎日棒を振り、スキルを望むのだ。冒険者として生きて行ける力を得る為に。


                ◇


儀式の日。

「カイ。次はお前の番だぞ。」
とカイジが僕にいう。
今日は儀式の日だ。10歳の子供が自分のステータスボードを手に入れる日。

 今日の結果で自分の将来が左右される日なのだ。ただどんな結果が出ようと、僕は意思を変える気はない。
そう、冒険者になるのだ。そして自由にこの世界を旅して回るのだ、まだ見ぬ世界を見るために。

「次の子来なさい。」
神父の呼び込みの声に返事をして、僕は祈りの間に足を踏み入れる。
「カイか。そこに膝をつき祈りなさい。」
神父の言う言葉に従い祈りの姿勢になり、目を瞑る。

何かが流れ込む感覚が全身を包む。頭の中に自分ではない別の人間の知識が無理やり流れ込む。
『これが儀式なのか。』と思いながら耐える。

「もういいぞ。立ち上がりステータスと唱えなさい。」
と神父に言われ。心の中で『ステータス』と唱える。
すると目の前に半透明のステータスボードが現れた。
「見えました。」
と言うと、外に出るよう言われ外に出る。


ーー  無能と言われる。

「ステータス」

カイ  10歳  男  人族   レベル10  
HP 20       MP  12      力 10       敏捷性 10      器用 5
スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(1)  
ユニークスキル
 改編(1)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

これが僕のステータスだ。

ステータスには、基礎能力、スキルと魔法の能力が表示される。
全てに数字が有り、大きな数字がより強い。
よって(0)と言う表示は、無能という事だ。

僕は魔法は生活魔法以外は(0)つまり無能だ。
スキルも剣術(1)しかない。「改編」なんて読むことすらできない。

その日から僕のステータスを知った者から僕は「無能」と呼ばれる事になる。



ーー 冒険者になる


冒険者になるには、年齢が10歳以上であればそれ以外要らない。

僕は冒険者ギルドに向かい登録の申請をする。
「はいこれがカイ君の冒険者証よ。無くさないでね。」
と手続きをしてくれた、お姉さんが渡してくれた。

僕はそれを首からかけると、依頼の貼ってある壁に移動して僕のランクの依頼を探す。

冒険者ランクは、
 S、A、B、C、D、E、F、と7段階存在する。
最初はFからだ。依頼をクリアしたほど点数が上がり、上のランクに上がることができる。
ランクが上がると、高い報酬の依頼を受けられるようになるし強くなるのだ。

レベルというのが有り、10歳までは歳の数。それからは魔物を倒すと上がると聞いているが、その為にはスキルがあるとないとでは、雲泥の差が出る聞いている。
当然無能な僕には、茨の道だろう。しかし諦める事だけはしたくない。

[薬草採取]
の依頼を受ける事にした。

「これをお願いします。」
先ほどのお姉さんに差し出すと、受け取ったお姉さんが
「薬草ね。この依頼は常時依頼の物。ここに[常]と書いてるでしょ。これは何時でもいいという意味よ。」
と依頼の内容を教えてくれたあと
「二階の書棚に薬草の挿絵と説明が書いてある本があるから、薬草を確認して向かってね。」
と言われ、その通りに二階に向かう。

何冊かの本の中に「薬草」と書かれた本を見つける。
机に持って行き薬草の種類や採取の方法を覚える。
今回の薬草は
・回復薬
・傷薬
の物だ。


ーー  初めての街に外


生まれて初めて街の外に出る。
街は魔物からの侵攻を防ぐために、高い壁に囲まれている。

街には東西南北に門があり、僕らの使う門は南門だけだ。

門から出ると向こうに森が見える、薬草のある森だ。
ただ魔物のいる森でもある。森の浅い部分では魔物もスライムなどの弱い魔物しかいないそうだ。
でも時々ゴブリンやコボルトと言われる魔物が出てくると聞いている。

僕は腰にナイフを差し、薬草を入れる袋を担いで森に早足で向かう。
夕方6時で門が閉まるため、それまでに戻る必要があるのだ。


              ◇


森に着いた。森の奥は薄暗く、恐ろしい魔物が口を開いているように見える。

力を込め歩き出す。森に入ると温度が下がった感じがした。
「震えているんじゃない、これは寒いからだ。」
自分に言い訳しながら周囲に気を配りながら、森の奥に向かう。

手前の方は既に人に採取された為に、ロクな薬草はない。
更に気味が悪い森の奥へと入る。
「ガサ」
何かが居る!音のした方にそっと近づくと。
『いた。』スライムが何かを取り込み消化しているようだ。

スライムは核というのが有りそれを破壊すれば、倒せる魔物だっと聞いている。
僕はナイフを手に取り静かに近づく。スライムは顔がないので、前を向いているのか後ろなのかわからない。
ナイフを何時ものように刃を立てて振り抜く。
半透明のスライムの中の核が二つに切れる。
「ドロー。」
という感じでスライムが水のように変わる。
倒せたようだ。


少し自信がついた僕は、薬草を探し始めた。
幾本かの薬草を見つけ採取するが、これでは大した報酬にならない。もっと奥に行かなければ。

薬草を探しながら奥へと知らず知らず進む僕、ある音でその危険を知った。
「グギャガガ」
鳴き声とも言葉とも言えない音が聞こえた。
そっと近づき覗くと、僕ぐらいの背の緑色の魔物が2匹何かを食べているようだ。

『ゴブリンだ。ここから直ぐに立ち去らねば。』そう思いながら後退りしていて枯れ木を踏んだ。
「パキン」
「しまった。」
逃げなくては。

後ろから追いかける気配を感じながら、僕は森の外を目指して走り出す。
「ギャギャ」
ゴブリンの声が聞こえる、まさか仲間を呼んでるにでは。
恐ろしい可能性を感じながら、ジグザグに走りまこうとする僕。

どのくらい走っただろう、とっくに森の外に出ていなければならない距離を走った。
でも出口は無い。
『迷ったのか。』最悪な思いに抜けそうな力を入れ直す。
その時、目の前に1匹にゴブリンが姿を表す。

『どうする。逃げるか闘うか。』一瞬の迷いの後僕は、ナイフを握り直す。
ぶつかるようにゴブリンの胸にナイフを突き入れる。
「グッグググ」
声にならない息を漏らしながらゴブリンは息絶える。

何かが身体を走る。気にする間もなく僕はゴブリンの右耳を切り取りその場を後にする。
すると突然、開けた場所に出る。
周りを見ると薬草が群生している、ここは穴場だ。

薬草を袋いっぱい採取すると、空を見る。
鳥はこの時間になると巣に戻り出す、その反対に向かえば外に出られるのだ。

1時間後無事に森の外に出れた僕は街を目指す。



               ◇

ギルドに着いて、買取カウンターで薬草とゴブリンの耳を出す。
「かなりの薬草を取ってきたな。ん!ゴブリンに出会ったのか。怪我はないか?」
買取の職員に聞かれる。
「ええ、大丈夫です。」
と答え、報酬を貰う、初めての自分のお金だ。

報酬は
・銀貨 25枚
・銅貨 50枚
だ。

パンが銅貨5枚なので・・・2510個分の報酬だ。
月に金貨1枚必要と聞いている、銀貨100枚分だ。
今日は運が良かった、今度は気を付けよう。

帰りに肉串の屋台で五本買った、銅貨25枚だ。

カイジにも分けてやろう。急足で孤児院に戻る、午後6時の鐘が聞こえる。



ーー  「改編」の謎。


冒険者として働きながら10日ほど経った。

報酬の合計は、金貨1枚銀貨20枚銅貨80枚になった。
十分に生活できる金額だが、運がいいだけのような気がする。

今のステータスは
カイ  10歳  男  人族   レベル16
HP 38       MP  18      力 19       敏捷性 19      器用 8
スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(2)  
ユニークスキル
 改編(2)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

に変化していた。
レベルが6上がった、剣術も2に。
改編が2に上がっている、これは何のスキルなんだ。
そう思いながら指でステータスボードをなぞる様に動かしている時に、指がレベルに触れた。
[改編を行いますか?YES  NO]
とメッセージが表示された。

「何か分からないが、ステータスをいじれるということか?」
よく分からないが悪くはならないだろうと思い、YESを触れると。
レベルの表示の色が変わった。16を触れると
[入れ替えますか?YES  NO]
と表示。
『ええ!入れ替えたら・・61になる。』そう思いながらYESを触ると、クルリと数字が入れ替わった。
『身体に変化はない。基礎体力がこれじゃそうだよな・・こっちも変えれるのか?』
思いながら同じように触ると、『変わった。』。

その結果僕にステータスは
カイ  10歳  男  人族   レベル61
HP 83       MP  81      力 91       敏捷性 91      器用 8
スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(2)  
ユニークスキル
 改編(2)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

となった。それと同じく身体に力が漲った。

「改編」というスキルはステータスボードをいじれるんだ。
もし更に改編のレベルが上がれば、もっと凄いことが出来るのかもしれない。


               ◇


次の日。
森に走って向かう、昨日と全く違う。飛ぶように走れる。
興奮しながら森に入り、ゴブリンを探す。
今日はゴブリンを討伐する事にしたのだ。

昼までにゴブリンを25匹倒した。
ステータスが

カイ  10歳  男  人族   レベル79
 HP119       MP  106      力 125       敏捷性 137      器用 18

スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(2)  
ユニークスキル
 改編(3)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

に変わっていた。

森の外に出てから改編のスキルを使う。
レベルを97に変えて、次にHPを触った時に変化があった。
[どれとどれを入れ替えますか?]
と表示された。
『3桁になったから、数字2つを選んで入れ替え出来るんだ。』と気付き。
1と9を触ると
[入れ替えますか?YES  NO]
の表示、YESを触ると。
HPが911に変わる。同じように他の数字を変えてゆく。

最終的にステータスは

カイ  10歳  男  人族   レベル97
 HP911       MP  601      力 521       敏捷性 731      器用 81

スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(2)  
ユニークスキル
 改編(3)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

に変わった途端、物凄いエネルギーが身体に溢れた。

「このまま改編してゆけば、最強の冒険者になれるかもしれない。」
と呟きながら、再度森に入っていった。

結局その日はゴブリンを67匹、コボルトを35匹討伐した。




ステータスは

カイ  10歳  男  人族   レベル123
 HP1035       MP  669      力 678       敏捷性 880      器用 85

スキル
 ※※※         ※※※       ※※※      ※※※      剣術(2)  
ユニークスキル
 改編(4)
魔法
 火(0)     水(0)    土(0)    風(0)    光(0)    闇(0)    時空(0)    空間(0)
 生活魔法

に変わっていた。
「また改編が上がった。帰って確かめよう。」
と言いながら街に戻った。
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