一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

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家族

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ーー 家族て良いよね。

ーー ケンドール公爵夫人の社交


セガール王国の社交界で不動の位置を占めている女性、その1人がケンドール公爵夫人である。
その美貌と若さは羨望の的であり、美しい肌と若さについてはある手段を持っており、それを他人へも与えることができるのだ。
世の女性たちが喉から手が出そうな手段を、持つ彼女を敵にだけはすることはできないのだ、決して。

今宵も親友のサンドール侯爵夫人と社交に現れた彼女は、直ぐに多くの貴婦人らに囲まれる。

「公爵夫人、今夜もお美しいですわね。」
「今日のドレスは新作出なくて、素敵だわ。」
「公爵夫人、アクセサリーありがとうございます。」
などと褒め称える言葉と、派閥の印である「ミスリルのアクセサリー」は、セガール王国の女性たちにとって勲章以上の力を持つものなのだ。

彼女が専属のメイドに合図をすると、メイドは料理を乗せたワゴンを会場に運び込む。
そう彼女にはまだ沢山の切り札がありその一つに、料理があるのだ。
「今宵の料理は、「カリー」と「和菓子」と言うものよ。カリーは多くの香辛料を調合したクセになり美味しさで、和菓子は季節の植物を模した優しいお菓子です。さあお召し上がれ。」
と料理を紹介する彼女。

カリーの香りが会場の女性たちの食欲を刺激する。
和菓子の優しくも美しい造形が、女性の心を鷲掴みにする。
今宵も話題をさらった彼女は満足そうに、笑顔を見せる。


ーー ケンドール公爵の務め


エストニア伯爵の父であるケンドール公爵は、今やセガール王国の重鎮中の重鎮である。
以前は4公(候)と呼ばれる者の1人としての立場であったが、既に3公(候)であり下手すると2公(候)にすらなりそうな状況である。
もう1人の侯爵はと言うと、学園時代からの親友サンドール侯爵だ。
二人の息子が同じ歳で、仲が良いのもあり親子で親密な関係にある。

新しい事を行う息子エストニア伯爵の手法を、うまく王国内で使う事で二人は自分の派閥を大きく強くしてきたのだ。
今や二人の障害となる存在は国王ですらなることはできないほどだ、しかし彼は王権を欲することも利益を独占する貪欲さも持っていない。
常に息子の手本になるべき貴族としての姿を具現しているのだ。

今日も忙しい仕事の合間に宰相として働いている親友のサンドール侯爵を誘って、
「新しく100年もののウイスキーを手に入れたよ。一杯どうかね。」
と誘うと
「それは良い、また息子らの話を聞いたぞそれをつまみに飲もうか。」
と意気投合する二人。
雪の積もるセガール王国の中でこの二人は、移転陣を自由に使って移動することができる特権を持っているのだ。


ーー ケンドール公爵の養女クレアリーナ


私は亡国となったスミス共和国の第一王女だった、王国内の取り返しのつかない行動で王国は滅亡し、私も殺されるばかりのところを今の兄に助けられたのだ。
そして私はエストニア伯爵の妹としてケンドール公爵家の養女となった。

生きていることすら奇跡とわかっている筈なのに・・・妹という立場が・・。

今私はよく親愛なるエストニアお兄様のパートナーとして、社交にパーティーにと出かける日々。
養母様(お母様)から社交を厳しく教わっている私は、短い期間であると思うが、お兄様のパートナーとして出かける日々がとても幸せなのです。

今日もお気に入りのお兄様デザインのドレスに袖を通しながら、ウキウキした気持ちでアクセサリーを身に付ける。



ーー エストニア伯爵


私は、エストニア=ケンドール 17歳。
この異世界に攫われて17年ということだ、攫われたというのはこの世界のダメ女神がルール違反を犯して、私を無理やり攫ってきたのだ。
しかし飛行機事故で死んでしまった以上、戻ることもできない私はそこまで地球に思い入れもなかったことから、転生することに同意したのだった。

今では地球の神と僅かであるが交信することが可能になり、ダメ女神の行動がわかる様になった。

私もこの世界で成人の15歳を超えて、普通なら「嫁をもらえ」と両親に言われるはずなのに・・・言われないのだ。不思議だ。
お母様はこの国の社交では一番と言われる存在、そのお母様が何も言わない、何か考えがあるのだろうか?今私にその様な思いを寄せる女性もいなければ、必要も感じていないので助かるのだが・・腑に落ちない。

さて冬ここでは白の季節の間は、暖かい南の海の家に行くか地下街を散策したり、好きな発明開発をして時間を潰すのだが、どうしようかな。
意外とこの世界に馴染んだ私は、流行や便利なものを流行らせることが趣味となっている。

そういえばこの世界に「漫画やアニメ」、それに「ラベノ」が無かったな。今度はこれらを流行らせようか。

自由は良いよな。
でもこれも私を愛して育ててくれた、両親らの存在が大きい。
新しい妹も悪くないし、こんな家族愛を以前感じたことは・・無かったかもしれない。


ーー ダメ女神と大神と地球の神


「女神の世界は近頃どうじゃな。」
大神がダメ女神に声をかける。
「はい、どうにかものになりつつあります。その節は大変お世話になりました。」
「そうか、もうルールを破る必要も無くなったか。良いことじゃ。」
と言うと姿を消した。
「バレてた!」
と青くなるダメ女神に
「本当、気づかれないと思っていた貴方の自信が信じられないわ。」
と地球の神アマテラスが溜息混じりにそう言う。
「あ、これは何時もご迷惑をおかけしております、お姉様。私今度ばかりは己の不徳を恥いっていますのよ。これからは素直にお姉さまの教えを守ります。またよろしくお願いしますわね。」
と頭を下げた。
「・・・わかれば良いのよ。それじゃね。」
と言うと姿を消した。
「いつも何かと私のことを見ているんだから。」
そう言うとダメ女神も姿を消した。



ーー エストニアのペット、シロ


「・・・・。」
~心の言葉
「僕は誇り高きフェンリル、新しい盟主として大森林に戻る為、強きご主人のもとで修行中の身、これからも母フェンリルに近づける様に努力します。

満足そうに尻尾を振るシロ。
神獣というよりマスコット化している様な。


ーー 青の休み

今年も沢山の雪が積もり自然の厳しさを感じさせた。
そんな白の季節が緩んできた、芽吹きの季節が到来するのだ。

今年エストニア伯爵は、葡萄の品種改良と増産を計画している。
この世界での葡萄といえば、ワインに利用するぐらいで単体で食べたりしないのだ。
女神のおかげで地球の知識が自由に使えるエストニア伯爵は、魔法に力で時間をも扱うことができる。
品種改良はお手のものである。

「今年の黄の季節には美味しい葡萄とそれを使ったデザート。良いね。」
満足げに笑顔になるエストニア伯爵であった。


          ◇


新種の野菜や植物の種を手に入れた。
と言っても丘の上の神社で、地球の神様から
「気候が地球に似てきました、これらを育ててみてください。」
と頂いた種や苗である。

ありがたく頂いた後、ハウスの中で育てている。

『これで色々な料理ができそうだ、この間はスパイスをいただきカレーを作ったが、スパイも作り放題になるな。』
などと心を躍らせていたエストニア伯爵に、腹ペコ残念エルフがやって来た。

「お久しぶりです、伯爵様。学園のお料理が伯爵が卒業してから、どんどんお味が落ちて来て・・責任をとってくださいませ。」
と無茶振りをして来た。
彼女は僕専属の侍女のシルエイティの姉である。
前学園長が退任した後釜に居座ったのだ。
とても食いしん坊の残念エルフであるが、それだけに食にはうるさいのだ。

「分かりました、今ちょうど新しい料理を作っている最中です。試食されますなら食堂でお待ちください。」
と言いながら厨房から追い出し私。


            ◇


「お待たせいたしました。これらが新作です。」
と言いながら、香辛料をたっぷり使った
「辛口カリー」「丸鳥の香辛料焼き」「四川風麻婆豆腐」と杏仁豆腐をテーブルに並べた、それぞれの強烈な香辛料の香りがエルフの食欲をそそる。

「ううー。早く食べたいです。シルエイティ、私に装ってください早く!」
と妹に急かせる。

「コレは・・辛いですけど、美味しいわ。」
と次々に口に入れ痺れた口を杏仁豆腐で癒すエルフ、とてもシュールです。


こんなことをしながらゆっくりと日常が過ぎていく、
「こんな日常が幸せを感じるよね」
と呟く私だった。


ーー 青の季節

本格的な農業の季節になりました。
領民総出で種蒔きや苗を植えていきます。
「今年も豊作間違いなしじゃ。」
「なんでも今年は新しいものがたくさんある様じゃ。」
などと話をする農民たち。

伯爵領の領民たちは、エストニア伯爵に非常に感謝している。
住み良い家に美味しい食事、そして健康でいられる幸せを与えてくれるエストニア伯爵は、神の如き存在なのだ。

田植えなどが終わると、「実りを祈って青の祭り」が行われる。
それぞれが魔物に扮した姿をして街を練り歩き、それを神に扮した子供らが追い立てると言う祭りだ。
なぜこうな姿になったかと言うと、エストニア伯爵の様な強く元気な子供に育ってほしいと思う領民の思いが、この祭りの姿になったと言う。
別名エストら祭りと言うそうだ。

大いに賑わった青の祭りと共に世界から商人が押し寄せてくる、ここは流行の発信地なのだ。
新しい料理、新しいドレス、新しい玩具、新しい物が毎年この季節に見本として展示され、商人たちは商品を注文したり権利を買い取るのだ。
そしてここから世界へとその商品は広がり、この世界が文化的にも大きく発展し出すのだ。


「今年も良い物が多そうですね。あらコレはお姉さまですね。ウフフ。」
またどこかの空で声が聞こえる。
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