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ダンジョン攻略と収穫祭

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ーー  ダンジョン攻略再開


そろそろレリーナ達のダンジョンの成長がひと段落する頃だ、ダンジョンは成長し続けるものとある程度の期間で成長を止めるものがある。
時期的にはそれを確認する頃合いであろう、そう考えたエストは、ダンジョンに潜ることにした。

ダンジョン前には多くの冒険者がならんでいた。
新しいダンジョンであり、取れる素材が高値で取引されるおかげで人気が高いのだが、最高到達点は未だ20層前後である。

このダンジョンの攻略が難航しているのは、浅い階層なのに魔物以上にダンジョンの環境が手強いのだ。
特に10層を超えると、火を噴く山々のある熱波の地でセーフティーゾーンが存在しないのだ。
大概のダンジョンであれば、何階層に一つくらいはセーフティーゾーンが存在するのだが、このダンジョンにはそれがない。

さらに10層を度の階層主を倒しても、転移陣がなく同じ道を戻るしかないため、深く潜ることが難しいのだ。

そこで私にレリーナから依頼があった。
どの程度の大きさかまたセーフティーゾーンや転移陣は無いのか調査してほしいと。


早速ダンジョンに潜る。
浅い階層に冒険者がひしめき合っているのを、縫う様に下へと進む。
10階層で階層主に挑む冒険者の列に並びながら、情報を収集する。
「これから下は命懸けだぜ、魔物よろ環境が酷え。11~20階層までは火の海の様な有様で、いかに耐熱装備を持っていても人がそこまで耐えられない。なんせ帰りもそこを通らなければならないからだよ。」

長い待ち時間で得た情報はこれくらいだった。

「しかしおめえ、荷物らしい荷物も持たずに単独でここまできたのか?これ以上は無理せん方がいいぜ。」
と心配された。

情報の通り、11階層からは火の海の様な環境だったが、身体異常無効の私には変わった風景程度にしか感じられなかった。

魔物はまだそれほど強くもなく、熱対策が十分にできれば大丈夫だと思う。
20階層の階層主はサラマンダーばかり20匹が出て来た、体格も他のものより2回るほど大きく感じた。

21階層からは、突然氷の世界が現れた。
しかもまだセーフティーゾーンは見つからない。
30階層まで行くと階層主の
「スノー・ベアー」が20頭ほど出て来た。
これを倒すと、31階層は何もなかった。
「ここがセーフティーゾーンなのか?」
2日ほど滞在して、確認したが魔物がいないし水や食べられる木のみなどが多くなっており、ここ自体に拠点を作れそうだった。

32~40階層は、大型の魔物が多く多人数で攻略する必要があると思われた。
40階層の階層主は、サイクロプスとミノタウルスの混合で、破壊力大の魔物だ。

そこを突破すると、転移陣が見つかった。
どこに転移するかはまだ分からない。

41~50階層は、身体異常を得意とする魔物達だ。
石化の魔眼を持つバジリクスやヘビ系の魔物。
猛毒を吐くトカゲの様な魔物に、罠を仕掛け毒を持つ蜘蛛系の魔物など、種類や生態が多種多様でかなりの経験が必要な難易度だ。
50階層の階層主は、コカトリス、バジリスク、アラクネの混合であった。

51~60階層は、個体のレベルが急に上がって、地上で見かける魔物と姿は同じだが、頭がいい上に数倍の力を持つ
ゴブリン、コボルト、オーク、ウルフ
と手強い魔物が集団で襲いかかる。
ここまでセーフティーゾーンは31階層のみ、これはかなりきつそうだ。
60階層の階層主は、ワイバーンとオークの混合で何も地上の同種と比べると、数倍の力の差を感じるものだった。

61階層は31階層同様何も無いセーフティーゾーンの様だった、ここにあった転移陣を使うと31階層に転移できることが分かった。

そのまま私はダンジョンの出口へ戻るとレリーナ達の元へ向かった。

「これが61階層までの魔物分布と、セーフティーゾーンだよ。」
と言いながら渡すと
「エストニア伯爵様、ありがとうございます。これを元に攻略隊を編成させます。」
と喜んでいたが、ここのダンジョンが攻略されるのはだいぶ先のことだろう。
多分あの先にはアンデットやドラゴン類がいるはずなので、90~120階層というのが私の予想だ。


ーー 黄の休み


ダンジョン調査から戻ると黄の休みになっていた。

実りの時期だ、自然災害は相変わらず、至る所で発生しているが対策と備えでかなり問題なく生活できる様になって来た、この世界の人間も順応性は高い様だ。

未だうまく対応できない王国や地域がある様で、可能な限り食料備蓄はしておこう。

今度の秋祭りの計画と、悪天候で魔物狩りができなかった日が多い森での、魔物狩りの予定を立てておこう。

ーー 黄の季節到来。

見事に実った穀倉地帯を見ながら私は、領民達に混じって収穫に精を出す。
「領主様、今年も大豊作ですな。」
私が治める様になって移民して来た領民が、そう言いながら笑う。
周りでは多くの子供が手伝いをしながら、元気に駆け回る姿が見える。
「いい風景だ。」
ポツリとこぼす私のそばに、1人の少女が
「領主様お願いがあります、この子を助けてください。」
と怪我をした子犬を手に抱いていた。
その子犬を受け取ると私は
「ヒール」
と唱える、子犬は怪我が嘘の様に消え痛みが引いたのだろう、空腹を訴える様に「クークー」鳴き始めた。
ミルクを取り出すと器に入れて地面に下ろすと、勢いよくそれを飲み出した。
「もう大丈夫だ。」
と少女を見ながら言うと、少女はニコニコとして
「これからもよろしく頼わよ。」
と大人の女性の声で答えると煙の様に消えた。

「ダメ女神か。暇なやつめ。」
と私はぼやきながら周りを見渡した。
子犬は元気よくミルクを飲んでいる。
「コイツはどうするんだ?」
と呟きながら、ペットが増える未来を想像していた。


  黄の祭り(収穫祭)の始まり。


収穫がほぼ終わった頃合いを見計らって、祭りの準備を始めた。
伯爵領の祭りは規模が大きく、見物客も多いことから準備が大変なのだ。

祭り当日。
毎年ながらこの領地の祭りは盛大だ。
今回の盛況の様だ、新しい商品を祭りの時に売り出すと、商人も多く来るためさらに賑わうのだ。

今年は子供の姿も多く、子供用の遊び道具を数多く売り出したら、商人達が目の色を変えて買い占めていた。
娯楽の少ない世界で、遊び道具が増えるのは幸せのバロメーターの様なものだ。

そんな領地での仕事をこなしている間に、マッケンジー君とミリアの結婚式の招待状が届いた。
「白の休みに結婚か」
と独り言を言いながら、お祝いに何をあげるか考えていた。

他のメンバーはどうするのかな?一度集まって聞いてみてもいいかもしれないな。
と思いつつ、エリス男爵家はどうだろうと思った。

妹はこの祭りが大好きな様で、今日も両手に大好きなお菓子を持って戻ってきた。
「エストお兄様、美味しいものがこんなにありましたの。一緒にいただきましょう。」
と嬉しそうに話しかける。

ダメ女神のことは置いといて、この世界がもっと住みよくなる様に頑張ってみようと思う私がいた。

もうすぐ白の季節か。今年も大雪になるのかな。
抜ける様に青く高い黄の季節の空を見ながら、私は白の到来を感じずにはいられなかった。
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