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283 冒険者⑪(勧誘)
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一斉攻撃が行われた後、それ程時間を掛けることなく迷宮の出口へと辿り着く。やはりと言うべきか、あれが最後の攻撃だったようじゃのう。
外はどんな光景が広がっておるのかと、期待を胸に外へ出れば、サンサンと降り注ぐ太陽の光が、外の風景を鮮明に照らし出す。
表の垂直な壁と違い、裏面は移動しやすいようなだらかな傾斜や階段で整備され、踊り場の様な広場に、傾斜を利用した日除けの屋根までありよる。居心地良さそうな環境じゃのう。
そして、それ以上にワシの視線を引き付けるモノが、眼前に広がっとった。
それは、地平線の先まで広がる霧の壁。上空の雲との切れ目も無く、その奥の様子を完全に覆い隠しとる。遠方からでは、この様な霧の壁など見えんかったはずだが……隠すのが上手い連中じゃわい。
「「「完走、おめでとうございま~す!!!」」」
「完走までにかかった時間、3時間24分58秒……文句なしの最短記録です! ぐふ!」
「ルナ様でも、8時間くらい掛かったのにねぇ」
「いや~、キッツいっす。流石にショックを隠し切れないよねぇ」
「普通の人系種族のグループが相手なら、1週間はイケると思ってたしねぇ」
そして、出口をぐるりと囲うように、アルト共が諸手を上げて出迎える。何体かは血反吐を吐くかのような仕草と共に、地面に突っ伏しとるが……あれじゃのう、絶対に壊れない武器だと鍛冶士が自信満々に紹介してきたことが有ったが、ワシが魔力を流しただけで壊れた時に、あんな感じになっとったのう。あれは悪いことをしたわい。
「では、完走した感想じゃが……」
「「「どきどき」」」
「「「わくわく」」」
つい先ほどまで、本気でワシの事を殺そうとしとったと言うに、何の詫びを入れた様子もなく、期待に溢れた視線をワシに向けておる。
まぁ、依頼は依頼じゃからのう。前金も貰っとるし、責務は果たすわい。それでこの迷宮に挑んだ評価じゃったか? そんなもん、とっくの前に決まっとるわ。
「クソ迷宮じゃ!」
「「「えぇ~~~~!?」」」
え~? では無いわ! ワシだから生きて出られたものを、こんなもん誰も挑まんわ! ワシなら迷いなくSランクの危険度を付けるわい! 立入禁止じゃ! 立入禁止!
「もう少し、難易度の調節をせい。せめて襲撃回数と初見殺しを減らさんと話にならんわい」
「それは、おじいちゃんが一切止まらずに進んだ結果だよ」
「こんな早く進むことを想定して無かったしねぇ……」
「寄り道してくれれば、もっと襲撃準備に余裕が持てたかもしれないのに……道中の脇道に設置していた宝箱とか、目もくれないんだもん」
こ奴らの言い分としては、ワシが進む速度に比例して襲撃間隔が短くなったと言いたいのかのう? 確かに、それは一理ある。ワシと同じ速度で進めるモノは、Aランクグループでもそうそうおらんしのう……。
「……さりとて、初見殺しの数は変わらんよのう? ん?」
「「「……てへ!」」」
「改修せい!」
愛嬌と勢いで誤魔化すで無いわぁ! ……因みにじゃが、置いてあった宝とは何ぞ?
「「「え? 超高級酒だけど?」」」
「なん……だと?」
「「「因みに、追加報酬扱い」」」
もっと細部まで探索しとくんじゃった!?
―――
アルト共の見送りを受けつつ、依頼の達成報酬を飲みながら霧の壁に向けて移動する。
この辺りはアルト共の整備が行き届いておる関係で、随分と歩きやすいわい。道の左右は木々で覆われ、木漏れ日が適度に道を照らしておる。
この先に案内役が居ると言うとったが、これ程しっかり整備された道であれば、目的地まで迷う事は無さそうじゃのう。
「お?」
霧の壁の前に、誰かおるのう……。そのまま進めば、獣の顔をした紳士が声を掛けて来た。
「お待ちしておりました、ジャック・バルバル・リューゲル様」
「おお! 案内役とはお前さんの事じゃったか、ゴトー!」
以前カッターナの街で出会ったゴトーが、恭しく頭を下げ歓迎してくれよった。
男とも女とも取れん曖昧な存在感が、よく馴染んどる。前回は絶世の美女の姿をしとったが、この姿が本来の姿なのじゃろうのう。
「先ずは、ここまでの攻略達成、おめでとうございます。ここ、【世界樹の迷宮】に所属する者として、最大限の尊敬と賛辞を送らせていただきます」
「うむ、何だかんだ楽しかったわい」
「メルル、それはなりよりでございます」
ゴトーの賛辞に、軽く片手を上げて返す。
事実、目新しいモノに溢れたここは、見ているだけでも楽しい場所だからのう。攻撃も妨害もされんかったお陰で、気楽に進めたわい。
もし、ワシが敵として訪れたならば、これ程生易しい対応は望めんかったじゃろう。先ほどのアルト共の要塞迷宮を考えれば、比較にならん殺意に塗れた対応がなされていたはずじゃ……もしそうなれば、おそらくワシは、こんなに早くここまで辿り着く事などできんかったじゃろう。
「では、早速行きましょうか。説明は道中でもできますゆえ」
「うむ」
ゴトーに促される形で、霧の壁の中へ足を踏み入れる。その途端、魔力を感知できんくなる。これは、さっきアルト共がつかっとった、白い煙と同じものか? 先導するゴトーの後ろ姿を見失うと、高確率で迷うじゃろうのう。
「先ずはこの場所の説明からいたしましょう。私めが以前お渡した硬貨は、お持ちでございましょうか?」
「持っとるぞ」
「そちらをお持ちであれば、敵として判断される事無く、この霧の中を進むことが可能でございます」
「……進む事だけかのう?」
「メルル! 進む事だけでございます」
「それはまた、エグイ仕組みじゃのう。お前さんらの案内が無ければ、何処に辿り着くか分かったもんでは無いわい」
「おや、お気付きでございましたか?」
真っ直ぐ進んでおるのに、前を歩くゴトーの後ろ姿が時折歪んだかのように見える。更に方向感覚が狂い、音の反響にも違和感がある。この感じは恐らくじゃが、空間が歪んどるのう。魔力を感知できんようにしたのは、この歪みを察知させない為か。
ワシが理解したことが全てと確信できんのが、また何とも……もしこの空間の歪みを自在に調節できるのであれば、一生をここで過ごす事になりかねん。お~、怖いのう。
「お察しの通り、ここは【無限回廊】と銘打っている場所でございまして、客人の仕分けを行う所でもございます。何分設置したのが最近なものでして、微調整を行っている最中との事です。性能的には十分と判断されておりましたが……改良の余地があると、報告する必要がありそうですね」
今回の事で、更なる改良が加わる事が決まってしもうたかもしれん。後続には悪いことをしてしまったわい。
「ここから先は、私め達の領域へとご案内いたします」
「む? 今までの場所と役目が違うと言う事かのう?」
「はい。今までは侵入者の迎撃と、自然環境の整備などが主な役目でしたが、ここからはこの迷宮に所属する者達の生活空間となります。基本的に戦闘行為は禁止となりますので、ご容赦くださいませ」
「安全と言う事じゃのう!」
「メルル! ジャック様でございましたら、問題ございません。どうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ……そろそろですね」
「む?」
ゴトーと話していると、場の空気ががらりと変わる。魔力の感知を妨害する煙も薄れとるし、【無限回廊】とか言う場所を抜け、誰かの領域に足を踏み入れた様じゃ。
「この辺りは……あの方々の領域でございますね。これより先は、誰かしらの領域となっております。その領域主が思い思いに弄っているので、その者の特徴が色濃く出る場所でございますね」
「ほほう? ここはどんな場所かのう?」
「そうですね……一言で言えば、普通でしょうか。ここの主に会えばその理由は分かるかと」
空間の歪みも安定し白い煙が晴れる。
周囲に木々が疎らに見られるようになり、上空から降り注ぐ光が木々の枝葉の間を抜け、程よく照らしておる。足元は薄い霧が漂い、空中には草木の葉や種がゆっくりと揺蕩い、頬を撫でる優しいそよ風に流される。
「まるで、天上の森林じゃのう」
「メルル、何とも詩的な表現でございますね。ここの主が寝心地の良い環境を求めた結果、この様な環境になっただけでございます」
迷いなく進むゴトーの後を付いて行くと、少々開けた場所へ出る。暖かい光に満ちたその広場の中央に、何かモコモコとした白い物体が鎮座しとった。
「こんにちは~。ほら、モコモコも起きて、お客さんだよ!」
「……、…………ZZZ」
「も~、二度寝しないの!」
「ムゥ……面倒」
白いモコモコの奥で、これまた白い何かが飛び跳ねている影がちらつく。その行為に苛立たし気にではあるが、白いモコモコが、その黒い獣の顔をこちらに向けよった。
ふむ、ゴトーの言葉をそのままに受けるのであれば、あの黒い顔をした白いモコモコがここの主かのう?
「改めまして、こんにちは~。初めまして~。ぼくはモフモフ。こっちの大きいのはモコモコです。よろしくね~」
「……適当に、よろ」
「うむ、知っとるかもしれんが、ジャックじゃ。よろしくのう」
ちっこい魔物がモフモフ。でっかい魔物がモコモコ……と、正に名前通りの姿じゃのう。
そんな二体が挨拶してきよったが……うむ、二体共化け物じゃ。
ステータスは、抑えているのを考慮してもBランク程度じゃろうが、纏っている気配が普通ではない。素の技量と取得しとるスキルが、尋常ではないレベルと見た。野生の魔物が一般人だとするなら、こ奴らは正規兵。それもエリートと言ったところかのう。
「……乗る、案内する」
「む? 良いのかのう?」
「ジャックさんは好待遇で案内するよ~」
モコモコがワシの前でひざを折り、背に乗る様に促してきよった。誰かを背に乗せる事を許容する様なタイプには見えんかったのじゃが……随分と好待遇じゃのう? 何か裏がありそうで勘繰って仕舞うわい。
「もうね? 上では、ジャックさんをこちらに引き込もうって方向で動いてるの。可能な限りのおもてなしを、全力でやろう! って感じだね」
「ぶっちゃけるのう?」
「メルル、ここの者は祭りごとが好きですからね。相手の事を思ってという以上に、自分達がやりたいからやっている者が殆どです。なので、気兼ねなく歓迎を受ける事をお勧めいたします」
「……いい迷惑」
そんなワシの気持ちを察してか、モコモコの頭に乗っているモフモフが、好待遇の理由を述べる。あのアルト共のノリと、ゴトーの説明を考慮するに……どちらも嘘とは思えんのう。
そして、モコモコはそれに対し不満を抱いとると。まぁ、憤慨する程でも無いようじゃし、お言葉に甘えて乗らせてもらおうかのう。
「乗り心地最高じゃのう!」
おぉ、貴族共が使っている様な高級ソファーなんぞ目ではない乗り心地じゃ。精神に作用する何かが仕込まれとったりしないじゃろうな? そんな事を心配して仕舞う程じゃ……気を抜くと寝てしまいそうじゃわい。
外はどんな光景が広がっておるのかと、期待を胸に外へ出れば、サンサンと降り注ぐ太陽の光が、外の風景を鮮明に照らし出す。
表の垂直な壁と違い、裏面は移動しやすいようなだらかな傾斜や階段で整備され、踊り場の様な広場に、傾斜を利用した日除けの屋根までありよる。居心地良さそうな環境じゃのう。
そして、それ以上にワシの視線を引き付けるモノが、眼前に広がっとった。
それは、地平線の先まで広がる霧の壁。上空の雲との切れ目も無く、その奥の様子を完全に覆い隠しとる。遠方からでは、この様な霧の壁など見えんかったはずだが……隠すのが上手い連中じゃわい。
「「「完走、おめでとうございま~す!!!」」」
「完走までにかかった時間、3時間24分58秒……文句なしの最短記録です! ぐふ!」
「ルナ様でも、8時間くらい掛かったのにねぇ」
「いや~、キッツいっす。流石にショックを隠し切れないよねぇ」
「普通の人系種族のグループが相手なら、1週間はイケると思ってたしねぇ」
そして、出口をぐるりと囲うように、アルト共が諸手を上げて出迎える。何体かは血反吐を吐くかのような仕草と共に、地面に突っ伏しとるが……あれじゃのう、絶対に壊れない武器だと鍛冶士が自信満々に紹介してきたことが有ったが、ワシが魔力を流しただけで壊れた時に、あんな感じになっとったのう。あれは悪いことをしたわい。
「では、完走した感想じゃが……」
「「「どきどき」」」
「「「わくわく」」」
つい先ほどまで、本気でワシの事を殺そうとしとったと言うに、何の詫びを入れた様子もなく、期待に溢れた視線をワシに向けておる。
まぁ、依頼は依頼じゃからのう。前金も貰っとるし、責務は果たすわい。それでこの迷宮に挑んだ評価じゃったか? そんなもん、とっくの前に決まっとるわ。
「クソ迷宮じゃ!」
「「「えぇ~~~~!?」」」
え~? では無いわ! ワシだから生きて出られたものを、こんなもん誰も挑まんわ! ワシなら迷いなくSランクの危険度を付けるわい! 立入禁止じゃ! 立入禁止!
「もう少し、難易度の調節をせい。せめて襲撃回数と初見殺しを減らさんと話にならんわい」
「それは、おじいちゃんが一切止まらずに進んだ結果だよ」
「こんな早く進むことを想定して無かったしねぇ……」
「寄り道してくれれば、もっと襲撃準備に余裕が持てたかもしれないのに……道中の脇道に設置していた宝箱とか、目もくれないんだもん」
こ奴らの言い分としては、ワシが進む速度に比例して襲撃間隔が短くなったと言いたいのかのう? 確かに、それは一理ある。ワシと同じ速度で進めるモノは、Aランクグループでもそうそうおらんしのう……。
「……さりとて、初見殺しの数は変わらんよのう? ん?」
「「「……てへ!」」」
「改修せい!」
愛嬌と勢いで誤魔化すで無いわぁ! ……因みにじゃが、置いてあった宝とは何ぞ?
「「「え? 超高級酒だけど?」」」
「なん……だと?」
「「「因みに、追加報酬扱い」」」
もっと細部まで探索しとくんじゃった!?
―――
アルト共の見送りを受けつつ、依頼の達成報酬を飲みながら霧の壁に向けて移動する。
この辺りはアルト共の整備が行き届いておる関係で、随分と歩きやすいわい。道の左右は木々で覆われ、木漏れ日が適度に道を照らしておる。
この先に案内役が居ると言うとったが、これ程しっかり整備された道であれば、目的地まで迷う事は無さそうじゃのう。
「お?」
霧の壁の前に、誰かおるのう……。そのまま進めば、獣の顔をした紳士が声を掛けて来た。
「お待ちしておりました、ジャック・バルバル・リューゲル様」
「おお! 案内役とはお前さんの事じゃったか、ゴトー!」
以前カッターナの街で出会ったゴトーが、恭しく頭を下げ歓迎してくれよった。
男とも女とも取れん曖昧な存在感が、よく馴染んどる。前回は絶世の美女の姿をしとったが、この姿が本来の姿なのじゃろうのう。
「先ずは、ここまでの攻略達成、おめでとうございます。ここ、【世界樹の迷宮】に所属する者として、最大限の尊敬と賛辞を送らせていただきます」
「うむ、何だかんだ楽しかったわい」
「メルル、それはなりよりでございます」
ゴトーの賛辞に、軽く片手を上げて返す。
事実、目新しいモノに溢れたここは、見ているだけでも楽しい場所だからのう。攻撃も妨害もされんかったお陰で、気楽に進めたわい。
もし、ワシが敵として訪れたならば、これ程生易しい対応は望めんかったじゃろう。先ほどのアルト共の要塞迷宮を考えれば、比較にならん殺意に塗れた対応がなされていたはずじゃ……もしそうなれば、おそらくワシは、こんなに早くここまで辿り着く事などできんかったじゃろう。
「では、早速行きましょうか。説明は道中でもできますゆえ」
「うむ」
ゴトーに促される形で、霧の壁の中へ足を踏み入れる。その途端、魔力を感知できんくなる。これは、さっきアルト共がつかっとった、白い煙と同じものか? 先導するゴトーの後ろ姿を見失うと、高確率で迷うじゃろうのう。
「先ずはこの場所の説明からいたしましょう。私めが以前お渡した硬貨は、お持ちでございましょうか?」
「持っとるぞ」
「そちらをお持ちであれば、敵として判断される事無く、この霧の中を進むことが可能でございます」
「……進む事だけかのう?」
「メルル! 進む事だけでございます」
「それはまた、エグイ仕組みじゃのう。お前さんらの案内が無ければ、何処に辿り着くか分かったもんでは無いわい」
「おや、お気付きでございましたか?」
真っ直ぐ進んでおるのに、前を歩くゴトーの後ろ姿が時折歪んだかのように見える。更に方向感覚が狂い、音の反響にも違和感がある。この感じは恐らくじゃが、空間が歪んどるのう。魔力を感知できんようにしたのは、この歪みを察知させない為か。
ワシが理解したことが全てと確信できんのが、また何とも……もしこの空間の歪みを自在に調節できるのであれば、一生をここで過ごす事になりかねん。お~、怖いのう。
「お察しの通り、ここは【無限回廊】と銘打っている場所でございまして、客人の仕分けを行う所でもございます。何分設置したのが最近なものでして、微調整を行っている最中との事です。性能的には十分と判断されておりましたが……改良の余地があると、報告する必要がありそうですね」
今回の事で、更なる改良が加わる事が決まってしもうたかもしれん。後続には悪いことをしてしまったわい。
「ここから先は、私め達の領域へとご案内いたします」
「む? 今までの場所と役目が違うと言う事かのう?」
「はい。今までは侵入者の迎撃と、自然環境の整備などが主な役目でしたが、ここからはこの迷宮に所属する者達の生活空間となります。基本的に戦闘行為は禁止となりますので、ご容赦くださいませ」
「安全と言う事じゃのう!」
「メルル! ジャック様でございましたら、問題ございません。どうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ……そろそろですね」
「む?」
ゴトーと話していると、場の空気ががらりと変わる。魔力の感知を妨害する煙も薄れとるし、【無限回廊】とか言う場所を抜け、誰かの領域に足を踏み入れた様じゃ。
「この辺りは……あの方々の領域でございますね。これより先は、誰かしらの領域となっております。その領域主が思い思いに弄っているので、その者の特徴が色濃く出る場所でございますね」
「ほほう? ここはどんな場所かのう?」
「そうですね……一言で言えば、普通でしょうか。ここの主に会えばその理由は分かるかと」
空間の歪みも安定し白い煙が晴れる。
周囲に木々が疎らに見られるようになり、上空から降り注ぐ光が木々の枝葉の間を抜け、程よく照らしておる。足元は薄い霧が漂い、空中には草木の葉や種がゆっくりと揺蕩い、頬を撫でる優しいそよ風に流される。
「まるで、天上の森林じゃのう」
「メルル、何とも詩的な表現でございますね。ここの主が寝心地の良い環境を求めた結果、この様な環境になっただけでございます」
迷いなく進むゴトーの後を付いて行くと、少々開けた場所へ出る。暖かい光に満ちたその広場の中央に、何かモコモコとした白い物体が鎮座しとった。
「こんにちは~。ほら、モコモコも起きて、お客さんだよ!」
「……、…………ZZZ」
「も~、二度寝しないの!」
「ムゥ……面倒」
白いモコモコの奥で、これまた白い何かが飛び跳ねている影がちらつく。その行為に苛立たし気にではあるが、白いモコモコが、その黒い獣の顔をこちらに向けよった。
ふむ、ゴトーの言葉をそのままに受けるのであれば、あの黒い顔をした白いモコモコがここの主かのう?
「改めまして、こんにちは~。初めまして~。ぼくはモフモフ。こっちの大きいのはモコモコです。よろしくね~」
「……適当に、よろ」
「うむ、知っとるかもしれんが、ジャックじゃ。よろしくのう」
ちっこい魔物がモフモフ。でっかい魔物がモコモコ……と、正に名前通りの姿じゃのう。
そんな二体が挨拶してきよったが……うむ、二体共化け物じゃ。
ステータスは、抑えているのを考慮してもBランク程度じゃろうが、纏っている気配が普通ではない。素の技量と取得しとるスキルが、尋常ではないレベルと見た。野生の魔物が一般人だとするなら、こ奴らは正規兵。それもエリートと言ったところかのう。
「……乗る、案内する」
「む? 良いのかのう?」
「ジャックさんは好待遇で案内するよ~」
モコモコがワシの前でひざを折り、背に乗る様に促してきよった。誰かを背に乗せる事を許容する様なタイプには見えんかったのじゃが……随分と好待遇じゃのう? 何か裏がありそうで勘繰って仕舞うわい。
「もうね? 上では、ジャックさんをこちらに引き込もうって方向で動いてるの。可能な限りのおもてなしを、全力でやろう! って感じだね」
「ぶっちゃけるのう?」
「メルル、ここの者は祭りごとが好きですからね。相手の事を思ってという以上に、自分達がやりたいからやっている者が殆どです。なので、気兼ねなく歓迎を受ける事をお勧めいたします」
「……いい迷惑」
そんなワシの気持ちを察してか、モコモコの頭に乗っているモフモフが、好待遇の理由を述べる。あのアルト共のノリと、ゴトーの説明を考慮するに……どちらも嘘とは思えんのう。
そして、モコモコはそれに対し不満を抱いとると。まぁ、憤慨する程でも無いようじゃし、お言葉に甘えて乗らせてもらおうかのう。
「乗り心地最高じゃのう!」
おぉ、貴族共が使っている様な高級ソファーなんぞ目ではない乗り心地じゃ。精神に作用する何かが仕込まれとったりしないじゃろうな? そんな事を心配して仕舞う程じゃ……気を抜くと寝てしまいそうじゃわい。
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イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
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交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
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リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
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