【完結】婚約破棄され追放された聖女 ~帰ってきてくれ? 帰るわけないでしょう~

つぼみ

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第四話 テーラル目線 ~オレは正しい~

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 ソフィアが消え、オレはカミラと喜びのキスをした。
 一時間ほどカミラとイチャイチャし、ガーデンテラスに移動してお祝いをした。
 邪魔者がいなくなった記念だ。

 二人で楽しくお茶をしていたところ、なにやら焦った様子の魔導士が入ってきた。

「テーラル様! 大変です!」
「なんだ! オレは今忙しいんだぞ!」
「大変なんです! 結界をはることがなかなかできなくて……」

 は?
 あの女が一人で楽々やってたのにか?
 こいつらは絶対手を抜いているんだな。

「そんなのお前らでなんとかしろ! できなかったらクビだ!」
「でっ、ですが……」
「さっさと結界をはりに戻れ!」
「はいぃ」

 これで手を抜かずにやるだろう。

 オレはまたカミラとのお茶を再開した。

 ただ、しばらくすると今度は回復術師がきた。

「テーラル様! 回復術師の人手が足りません! 重症な方や重い病気の人の治療はかなり体力と魔力を使用するのです!」

 人手が足りない?
 これは嘘だろう。
 なにせ王宮にいる回復術師は三十人ほど。
 あの女が一人でやっていたことができないわけがない。

「人手が足りないならなぜおまえがここにいる! 人手が足りないならその分働けばいいだろう!」
「無理です! 回復術師は酷使しすぎると死んでしまいます!」
「ええい、うるさい! そんなに文句があるならお父さまの方にいけ!」
「はっはい! わかりました」

 回復術師は酷使すると死ぬといっていたな。
 まあ、一人でできていたことなのに三十人でもできないような能無しは死んでもいい。
 空いた枠で別の優秀なものを雇えるからな。

「あのぉー」
「なんだい、カミラ?」
「まだ結界がはられてなくて私怖いですわぁ」
「なに! すぐに魔導士たちにいってくる。カミラは安全なここで待っていてくれ」
「わかりましたわぁ」

 カミラを怖がらせるなんて能無しどもめ。
 もしこのまま結界がはれなかったらクビだな。
 いや、カミラを怖がらせた罪として牢にぶちこむのもいいな。

 オレは魔導士たちのいる神殿にむかった。

 神殿のドアを勢いよく開ける。
 驚かしてやるためだ。

「おまえたち! なぜまだ結界をはっていないのだ!」
「結界をはるのは本来時間のかかることなのです! それを今すぐにといわれたので近隣の魔導士を集めておこなっていますがまだできません!」
「なっ……」

 たしかに魔導士の数が多いと思ったがそういうことか。
 しかし、なぜできないのだ?

「悔しいですが……ソフィアさんが天才だったのでしょう」
「そんなわけあるか!」
「ですが……」

 何かいいたげな魔導士をにらみつける。
 
 ん? 休んでいる者が何人もいるではないか。

「おまえたち! 休まずに働け!」
「ですが……」
「だまれ! できなかったらクビだ!」

 オレはそれだけいって神殿からでていった。

 カミラが待つガーデンテラスに急ぐ。

「カミラ、ただいま」
「おかえりなさいですわぁ」
「魔導士たちには急げといっておいたからもう心配しなくていい」
「ありがとうございますわぁ」

 カミラの顔が笑顔になる。
 かわいいなぁ。
 そう思いながら、またカミラと楽しいお茶を再開した。

 空が暗くなり、カミラの迎えのものがきた。
 カミラを抱きしめ「また明日」といって別れる。

 それから、オレは自室で今日のことを思い出しながらベッドに横になった。

「そろそろ結界もはられただろうか?」

 そう思い、魔法で確認するもまだだった。
 まあ、急げといったし今日中にははられるだろう。
 オレはのんきにそう考えていた。

 しかし、今日のうちに結界がはられることはなかった。

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