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Chapter.1 秋庭学園
4 Gクラス
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――予知。
先に起きるであろう事象をあらかじめ知ること。虫の知らせなどと言われることもある。
沙耶ちゃんの場合は、夢としてそれを見ることができる。それはすぐ一時間後のことだったり、一ヶ月後のことだったり、一年後のことである場合もあるらしい。その夢を、沙耶ちゃんは幼い頃より見続けているそうだ。
きっとそれは、良いことばかりではなかったはずだ。人は普通でないことを、ことさら特別視する。物珍しさから注目することもあれば、時に蔑みの対象にすることもある。他と少し違うということだけで、いじめの対象になることだってあるのだ。特別な力を持って良いことなど、ほとんどない。ないのに違いない。実際、僕にはなかった。
――気味の悪い子だ。
祖母の言葉を思い出す。ずっと胸の奥にしまい込んでいたつもりでも、ふとしたことで思い起こされる。それは奇妙な呪文のようで、その言葉を思い出すたびに、自分がこの世界の中で、たった一人になってしまったような気持ちになるのだ。
先のことがわかってしまうという、沙耶ちゃんの心はどうだったろう。見たくなくても見てしまう。そしてそれが、現実として起きてしまう。それが幸せなことばかりならいい。
けれど、きっとそうばかりではなかったろう。それはきっととても恐ろしい。夢を見るたびに不安が押し寄せる。なにか良くないことが起こるのではないか。恐ろしいなにかが迫っている。そんな疑心暗鬼。
そんなものにさいなまれ続ける沙耶ちゃんの心のうちは、どうだったろう。
学園は、I県北部の静かな山あいに建っている。中高一貫の私立校で、僕たちが通うのは、そのうちの高等部である。敷地は広く、グラウンドや講堂もきちんと整備されている。自然も多く、春には正門から続く桜並木が登校する学生たちの目を楽しませ、秋には至る所で銀杏や紅葉が美しく色づく。
他にも、敷地内には特別研究施設というものがあり、そこでは派遣されてきた研究員が、日々様々な研究を行っている。
――秋庭学園。
ここは日本有数の大財閥である、秋庭グループの創設した学園。超名門校として知られる学校である。通う学生は、平均してお金持ちの家の子供が多い。
しかしこの学園には、お金がなくとも通える幸運な学生たちもいる。その幸運に恵まれた学生は、特待生として学園に通うことができる。そして、その幸運の切符を手に入れられるのは、ある条件を満たしたものだけだ。
その条件とはただひとつ。
――特別な能力を有すること。
その意味するところは、かなり常識からはずれているともいえる。なぜならば、普通に考え得る特別とは、次元を超えた意味での『特別』を学園側は設定しているからだ。学業、スポーツ、芸術というだけなら、疑問の対象にはならないだろう。他にも計算能力や暗記能力、プログラミングの能力ということまでなら、理解の範疇におさめることができる。しかし秋庭学園では、その理解の範疇を超えた意味での特別な生徒を迎え入れているのだ。
秋庭学園では、能力開発、あるいは脳科学の研究を積極的に進めている。これには噂によると、財閥の有力者のてこ入れが大きく関係しているということらしいが、くわしいことはよくわからない。よくわからないが、その研究に協力をしてもらうという名目で、学園は本当に特別な、未解明な才能の持ち主を集めている。
つまり、それが僕たちなのだ。
僕の場合は霊視能力。沙耶ちゃんの場合は予知能力。
特に僕たちのような未解明な力を持つ特待生は、特別推薦クラスと呼ばれるクラスに配属される。なぜかはわからないが、特別推薦クラスは、どの学年もGクラスとされている。僕たちのクラスの場合は1‐Gだ。そのため、G組というと、他のクラスの生徒たちには特別な目で見られたりする。
しかし基本的に、特殊能力のことについては、校外はもちろん、校内においても無闇に口外してはいけないということになっている。クラス内では多少仕方がないところもあるだろうが、基本的にみな、やたらそのことについて話したりはしない。たぶん、他の生徒への配慮からだったり、無用な騒ぎを起こさないためだろうと思われる。
常識的に考えれば、僕たちのような力は今の世の中において、認められないものである。非常識。非科学的。その力がなにかの役に立つとは考えられない。現に僕は、この学園に来るまで、その力のせいでなにか役に立つことがあった試しがなかった。
しかしここでは、その役に立たないはずの力の研究をしているのである。学園理事長の娯楽だという噂もあるが、娯楽でもなんでもいい。この学園に通うことは、僕にとっても都合がよかったのだから。
Gクラスに通う学生は、特待生として学園に通うことができる代わりに、財閥が行っている研究に協力している。財閥の研究者たちは、学生一人一人のデータを記録し、その能力への研究を行っているのだ。
先に起きるであろう事象をあらかじめ知ること。虫の知らせなどと言われることもある。
沙耶ちゃんの場合は、夢としてそれを見ることができる。それはすぐ一時間後のことだったり、一ヶ月後のことだったり、一年後のことである場合もあるらしい。その夢を、沙耶ちゃんは幼い頃より見続けているそうだ。
きっとそれは、良いことばかりではなかったはずだ。人は普通でないことを、ことさら特別視する。物珍しさから注目することもあれば、時に蔑みの対象にすることもある。他と少し違うということだけで、いじめの対象になることだってあるのだ。特別な力を持って良いことなど、ほとんどない。ないのに違いない。実際、僕にはなかった。
――気味の悪い子だ。
祖母の言葉を思い出す。ずっと胸の奥にしまい込んでいたつもりでも、ふとしたことで思い起こされる。それは奇妙な呪文のようで、その言葉を思い出すたびに、自分がこの世界の中で、たった一人になってしまったような気持ちになるのだ。
先のことがわかってしまうという、沙耶ちゃんの心はどうだったろう。見たくなくても見てしまう。そしてそれが、現実として起きてしまう。それが幸せなことばかりならいい。
けれど、きっとそうばかりではなかったろう。それはきっととても恐ろしい。夢を見るたびに不安が押し寄せる。なにか良くないことが起こるのではないか。恐ろしいなにかが迫っている。そんな疑心暗鬼。
そんなものにさいなまれ続ける沙耶ちゃんの心のうちは、どうだったろう。
学園は、I県北部の静かな山あいに建っている。中高一貫の私立校で、僕たちが通うのは、そのうちの高等部である。敷地は広く、グラウンドや講堂もきちんと整備されている。自然も多く、春には正門から続く桜並木が登校する学生たちの目を楽しませ、秋には至る所で銀杏や紅葉が美しく色づく。
他にも、敷地内には特別研究施設というものがあり、そこでは派遣されてきた研究員が、日々様々な研究を行っている。
――秋庭学園。
ここは日本有数の大財閥である、秋庭グループの創設した学園。超名門校として知られる学校である。通う学生は、平均してお金持ちの家の子供が多い。
しかしこの学園には、お金がなくとも通える幸運な学生たちもいる。その幸運に恵まれた学生は、特待生として学園に通うことができる。そして、その幸運の切符を手に入れられるのは、ある条件を満たしたものだけだ。
その条件とはただひとつ。
――特別な能力を有すること。
その意味するところは、かなり常識からはずれているともいえる。なぜならば、普通に考え得る特別とは、次元を超えた意味での『特別』を学園側は設定しているからだ。学業、スポーツ、芸術というだけなら、疑問の対象にはならないだろう。他にも計算能力や暗記能力、プログラミングの能力ということまでなら、理解の範疇におさめることができる。しかし秋庭学園では、その理解の範疇を超えた意味での特別な生徒を迎え入れているのだ。
秋庭学園では、能力開発、あるいは脳科学の研究を積極的に進めている。これには噂によると、財閥の有力者のてこ入れが大きく関係しているということらしいが、くわしいことはよくわからない。よくわからないが、その研究に協力をしてもらうという名目で、学園は本当に特別な、未解明な才能の持ち主を集めている。
つまり、それが僕たちなのだ。
僕の場合は霊視能力。沙耶ちゃんの場合は予知能力。
特に僕たちのような未解明な力を持つ特待生は、特別推薦クラスと呼ばれるクラスに配属される。なぜかはわからないが、特別推薦クラスは、どの学年もGクラスとされている。僕たちのクラスの場合は1‐Gだ。そのため、G組というと、他のクラスの生徒たちには特別な目で見られたりする。
しかし基本的に、特殊能力のことについては、校外はもちろん、校内においても無闇に口外してはいけないということになっている。クラス内では多少仕方がないところもあるだろうが、基本的にみな、やたらそのことについて話したりはしない。たぶん、他の生徒への配慮からだったり、無用な騒ぎを起こさないためだろうと思われる。
常識的に考えれば、僕たちのような力は今の世の中において、認められないものである。非常識。非科学的。その力がなにかの役に立つとは考えられない。現に僕は、この学園に来るまで、その力のせいでなにか役に立つことがあった試しがなかった。
しかしここでは、その役に立たないはずの力の研究をしているのである。学園理事長の娯楽だという噂もあるが、娯楽でもなんでもいい。この学園に通うことは、僕にとっても都合がよかったのだから。
Gクラスに通う学生は、特待生として学園に通うことができる代わりに、財閥が行っている研究に協力している。財閥の研究者たちは、学生一人一人のデータを記録し、その能力への研究を行っているのだ。
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