【R-18】不眠症騎士と抱き枕令嬢【書籍版後日譚】

一花カナウ

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ゆっくりほぐして

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 ぬるりと体内に入り込んだセオフィラスの指を、今度は拒むことはなかった。

「痛くはないですか?」

 訊ねられて、レティーシャはゆっくり頷く。

「よかった……」

 彼の安堵する声が耳元で聞こえた。心配していたことがよくわかる。

「続けて、セオさま……」

 もう嫌がったりしないと誓うつもりで促せば、セオフィラスは左手をレティーシャの細い腰に巻きつけて抱き締めた。

「レティ……」
「……はい」
「本当にあなたは可愛い人だ」

 耳朶にキスをされる。レティーシャはくすぐったさに小さく身をよじった。

「レティ。少しずつここを拡げていきます。まずは指が三本ほど入る程度には拡げてならしておくことが目標でしょう――姿勢を変えますよ」

 抱き起こされて、再び鏡にレティーシャの姿が映った。セオフィラスに背中を預け、足を大きく広げられる。朱に染まった内腿を滑るようにして彼の手が股間に触れ、違和感なく指が挿入される。

「一本は慣れてきたようですね。三本となると先は長いと思いますが」

 中をぐるりと擦られると、慣れない刺激にビクビクと反応してしまう。

「んん……そ、そこにそんなに入るのですか?」

 現状は一本だけでもぎゅうぎゅうになっている。セオフィラスの指をしっかり咥え込んでいる感覚があって、その指の関節をイメージできるくらいだ。

「ええ。指よりももっと太いものがここを通ります。それにこの場所は赤ん坊も出てくる場所ですよ。指一本以上のものが入るに決まっているではありませんか」
「赤ちゃんがここから出てくる……そ、そんなに拡がるんですか……それはとても痛そうですね……」

 産まれたての赤ん坊の小ささは知っているつもりだったが、それでもこんな場所から出てくるのはイメージしにくい。女性の身体は自分が思っていた以上に柔らかくできているのかもしれないとレティーシャは真面目に考える。
 セオフィラスもレティーシャの台詞に生真面目に返してくれた。

「子どもを産むときは大変でしょうね。男なので想像することしかできませんが。――なので、痛むときは遠慮なく言ってほしいのです。先ほどは大変失礼いたしました」
「ううん……お気になさらないで。びっくりしてしまっただけなのです。私、初夜の儀のことを何も聞かされていなかったから、こんな場所に何かを挿れるだなんて考えたこともなくて……」

 やっときちんと謝ることができた。事情を説明できたことで覚悟も決まる。

「では、何がそこにあてがわれるのかもご存知ないと?」
「え、ええ」

 レティーシャはこくりと頷く。鏡越しに見えるセオフィラスは、少し思案する顔をした。
 こうしている間にも、指は二本に増えて中を出たり入ったりしながら道を拡げている。クチュクチュと音がすることにも少しは慣れてきた。

「男性を避けてきたのだから当然といえば当然か……」
「あ、あの……?」
「そうですね……女性の身体と比べるとグロテスクなのであなたは驚かれるかもしれませんが、確認してみますか?」

 彼の指は休まない。仕事を続けながら、セオフィラスは提案をしてきた。

「な、何を見せていただけるの?」

 グロテスクだの、驚かれるかも、などと言われると気になってしまう。女性の身体と比べると、という前置きをしたということは、おそらくそれは女性とは異なるものなのだろう。
 訊ねると、セオフィラスは回答をした。

「俺が、レティの中に挿れようとしているものを、です。あなたの身体ばかり見させていただきましたので、不公平があってはよくないかと」

 好奇心からか、彼の指をきゅうっときつく締め上げてしまった。セオフィラスがレティーシャの耳元でクスクスと笑う。

「気合い充分のようですね」
「あ、いえ、こ、これは違うの」

 自分の身体がどうしてこんな反応をしてしまったのか、無知なレティーシャにはさっぱりわからない。良いことなのか悪いことなのかも判然としないが、セオフィラスに笑われてしまったことから、これは恥ずかしいことなのだろうと思った。

「知識としてはなくても、身体は知っているのかもしれませんね」

 中を広げるために繰り返されていた優しい抽挿が止まり、するりと指が抜かれる。彼の指先はびしょびしょになっていて、少し糸を引いていた。

「レティ。実のところ、俺もそろそろ待てそうにないのです。前をくつろげないと苦しくて」
「苦しい? あの、わ、私ばかり気持ちよくなってしまっていて……気づかず申し訳ありません……」

 レティーシャが身体を離しながら慌てて謝ると、セオフィラスは苦笑した。

「謝ることはありませんよ、レティ」
「それに、トラウザーズも汚してしまいました」

 向かい合い、セオフィラスの下半身に目を向ける。レティーシャが座っていた辺りにはシミができていた。

 ああ、やっぱり……。

 彼が脱いだのは上半身だけであり、トラウザーズは穿いたままだった。彼に寄りかかる体勢で長いこといたので、必然的に濡らしてしまう。とても申し訳ない気分だ。

「いいんですよ、レティ。そういうものですから」
「わ、私が服を脱ぎたくないなんて言ったから、中途半端なことに……」

 しょんぼりと項垂れると、セオフィラスが頭を撫でた。

「気にし過ぎです。俺はどんなあなたでも愛しますよ。どんな形であれ」

 セオフィラスの手が頭から頬に移動し、レティーシャの顔を上げさせる。目が合う。アメジストの瞳は見慣れた色をしていた。

「セオさま……」

 引き寄せられて口づけを交わす。愛を伝えるために何度もなんども丁寧に施された気がした。

「あなたはあなたのままでいいのです。俺が一からお教えしますから。今日、覚えればいいのです。夫婦としての営みについて講義をすると約束したのは俺だ。だから、俺以外に講義を求めてはいけませんよ?」
「はい……」

 うっとりとした気分で頷くと、セオフィラスの幸せそうに笑う顔が目に入った。

「あなたは勉強熱心な生徒ですね。道のりが長くても、とても楽しい」

 キスをするとレティーシャの身体はゆっくりとベッドに横たえられた。その上をセオフィラスが覆うようにする。抱き締められるとしっとりと濡れた肌の感触が伝わった。

「レティ、俺も全部脱ぎます」
「はい」

 胸がドキドキする。レティーシャは全裸で重なるとどんな心地なのかを想像しながら、ベルトを外す音や衣擦れを聞いていた。
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