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召喚聖女は早くお家に帰りたい!
逃げるあてなどないのだけれど 1
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――寝間着のまま飛び出してきた私です。バッグで思いっきりぶん殴ってきたからか、神官長は追ってきませんでした。たぶん、伸びている、ってか、伸びていてほしい。
魔法を使って追跡されたら勝ち目はないので、できるだけ早足で森の中を歩いている。月の明るい夜なので、ありがたいことに道がよく見えた。ときおり獣の鳴き声や鳥の威嚇する声などが聴こえてびっくりするけれど、城下町の灯りが空をほのかに照らしているのでそこに向かって進むのみである。
城下町を目指しているのは、そこに何度か行ったことがあって顔見知りがいるからにすぎない。こんな夜更けに突然訪ねたらどんな顔をされるかわからないが、頼れる相手はそこにしかいないのだ。藁にもすがる気持ちで、あまり期待はせずに向かうのである。
――ああ、もう嫌。すぐにでも水浴びしたい……
触られたり舐められたりした部分が気持ち悪い。わりと好みのタイプだったのに、こんなことをいきなりされるのはごめんなのだ。もう少し関係をちゃんと築いてからにしてほしかった。
――ってか、私の前世の聖女さんと本当に恋仲だったのか、超怪しいし。思い込み激しかったんじゃないの?
ああ嫌だ嫌だと、寒気を覚えて両肩を抱きしめながら城下町までの一本道を進む。
真夜中なので他に人はいない。全力で走って抜けることも考えてはいたが、大きな物音を立てて周辺の動物たちを刺激するのは得策ではなかろう。できるだけ静かに、でも可能な限り急いで足を進めた。
城下町までは私の感覚で三十分はかかる。早足で進んでも二十分程度は必要だ。そんな一本道の行程を半分ほど過ぎたとき、肌がザワッとして足を止めた。
――この気配……
身体にまとわりつく生温かくてじめっとした空気は、この世界に来て最初に感じたあるものの気配に似ている。
引き返そうと踵を返すも、挟み討ちにされていた。
――しまったな。
武器はなかっただろうかとバッグに手を突っ込むが、使えそうなものは全くない。投擲武器としては貧弱ではあるけど、化粧品類はまだ使えるだろうか。スプレーあたりなら目くらましになるかもしれない。
バッグの中で手をゴソゴソさせながら、相手の様子をうかがう。やがて気配だけでなく姿が現れた。
――お出ましね。ただで死んでやるつもりはないから、覚悟しなさい!
ぬっと現れたのは異形の生物――魔物と呼ばれているものだった。一本道の前後を塞ぐように二体出現し、ギョロリとした大きな目をこちらに向けている。
「――今さら私に何の用かしら?」
「セイジョ……セイジョ……見ィツケタ」
デフォルメされた大きな黒い鳥のような魔物は私に向かって突っ込んできた。くちばしの鋭さにビビった私は、瞬時に森の中に身体を転がす。ちょうど飛び込み前転みたいな感じ。
草むらの中に飛び込んだ私は、寝間着が枝に引っかかって破れるのも気にせずに全力で走った。
後方からバキバキと枝が折れる音が響く。追いかけて来ているのだ。
――ひぃぃぃっ‼︎ なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ‼︎
儀式が終われば家に帰れるのではなかったのか。話が違うではないか。
魔法を使って追跡されたら勝ち目はないので、できるだけ早足で森の中を歩いている。月の明るい夜なので、ありがたいことに道がよく見えた。ときおり獣の鳴き声や鳥の威嚇する声などが聴こえてびっくりするけれど、城下町の灯りが空をほのかに照らしているのでそこに向かって進むのみである。
城下町を目指しているのは、そこに何度か行ったことがあって顔見知りがいるからにすぎない。こんな夜更けに突然訪ねたらどんな顔をされるかわからないが、頼れる相手はそこにしかいないのだ。藁にもすがる気持ちで、あまり期待はせずに向かうのである。
――ああ、もう嫌。すぐにでも水浴びしたい……
触られたり舐められたりした部分が気持ち悪い。わりと好みのタイプだったのに、こんなことをいきなりされるのはごめんなのだ。もう少し関係をちゃんと築いてからにしてほしかった。
――ってか、私の前世の聖女さんと本当に恋仲だったのか、超怪しいし。思い込み激しかったんじゃないの?
ああ嫌だ嫌だと、寒気を覚えて両肩を抱きしめながら城下町までの一本道を進む。
真夜中なので他に人はいない。全力で走って抜けることも考えてはいたが、大きな物音を立てて周辺の動物たちを刺激するのは得策ではなかろう。できるだけ静かに、でも可能な限り急いで足を進めた。
城下町までは私の感覚で三十分はかかる。早足で進んでも二十分程度は必要だ。そんな一本道の行程を半分ほど過ぎたとき、肌がザワッとして足を止めた。
――この気配……
身体にまとわりつく生温かくてじめっとした空気は、この世界に来て最初に感じたあるものの気配に似ている。
引き返そうと踵を返すも、挟み討ちにされていた。
――しまったな。
武器はなかっただろうかとバッグに手を突っ込むが、使えそうなものは全くない。投擲武器としては貧弱ではあるけど、化粧品類はまだ使えるだろうか。スプレーあたりなら目くらましになるかもしれない。
バッグの中で手をゴソゴソさせながら、相手の様子をうかがう。やがて気配だけでなく姿が現れた。
――お出ましね。ただで死んでやるつもりはないから、覚悟しなさい!
ぬっと現れたのは異形の生物――魔物と呼ばれているものだった。一本道の前後を塞ぐように二体出現し、ギョロリとした大きな目をこちらに向けている。
「――今さら私に何の用かしら?」
「セイジョ……セイジョ……見ィツケタ」
デフォルメされた大きな黒い鳥のような魔物は私に向かって突っ込んできた。くちばしの鋭さにビビった私は、瞬時に森の中に身体を転がす。ちょうど飛び込み前転みたいな感じ。
草むらの中に飛び込んだ私は、寝間着が枝に引っかかって破れるのも気にせずに全力で走った。
後方からバキバキと枝が折れる音が響く。追いかけて来ているのだ。
――ひぃぃぃっ‼︎ なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ‼︎
儀式が終われば家に帰れるのではなかったのか。話が違うではないか。
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