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戦場の処女は誘惑する

戦場の処女は誘惑する・3

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「勘違いだったら笑ってくれていいのだが……それは誘惑をしているつもりか?」
「……あ、いえ……誘惑ではないです」

 襲っても許されるだろうかと、一瞬だけ考えてしまっただけだ。さすがに不躾な視線だったなと反省して、マーティナは遠くに目を向けた。
 空が赤く染まっている。
 ルビが息を大きく吐き出した。

「はあ……。いいか? 君は保護管理課から応援要員で特殊強襲部隊に来てもらっている。向こうに君のパートナーがいることは知っているからな。俺には君を五体満足な状態で返す義務がある」

 五体満足と言われて、マーティナは自分の手足を確認する。どこにも異常はない。

「手も足も無事ですよ」
「君の貞操も含む」

 マーティナはルビを見る。どんな顔をしてそんなことを言っているのかと思えば、至極まじめな表情をしていた。意外だ。

「……紅玉の鉱物人形は手が早いとお聞きしておりますが」

 自分に性的な魅力がないのだろうかと心配になってしまった。
 胸はそれなりにあるし、腰はくびれているし、尻は肉付きがいいと思う。戦場には不要だが、女性らしい体型だと自負していたのだが。

「それは性質上、魔力の消耗が激しいからというのと、紅玉に性的興奮を煽る効果があるせいだ。仕様上のことで、本能とも言える」
「だったら」
「言っただろ、君にはパートナーがいるから、って。それに必要以上に魔力を得ようとは思わない。さっきの口吸いで充分以上の魔力を受け取ったからな。これだけあれば、ホームに戻るまで足りるだろ。心配しなくていい」

 ルビの説明には納得できたが、この衝動をどうしてくれようか。体が疼く。彼に触れたいし、触れられたい。体が熱いのだ。
 マーティナは泣きたい気持ちに駆られながら、ルビの顔を覗き込む。

「さっき、続きは魔物を倒してからにしようっておっしゃったじゃないですか」

 初手で壊滅的なダメージを受け、マーティナは応急処置としてルビに魔力供給をおこなった。深い口づけをして粘膜接触を通じて相手に魔力を供給する。そのときに興奮状態になってしまい、襲いかかってしまいそうになったところをルビにいさめられた。
 そこで彼と約束したのだ。続きは魔物を倒してから、と。
 自身が発した言葉を、ルビは忘れてはいなかったようだ。気まずそうな表情を浮かべた。
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