不死身の俺と出来損ないのカミサマと。

一花カナウ

文字の大きさ
2 / 5
祠を壊したら、美形の怪異に因縁つけられた話。

藪の中の屋敷※

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆


 彼が言うように、案内された場所はそう遠くなかった。
 獣道のようなおよそ人が通るような道じゃない場所を通って辿たどり着いたのはやぶの中に建つ古い日本家屋。農家の、おそらく地主であっただろう一族の住んでいたような大きなお屋敷だ。木造の立派な門があって、その先に平屋の広そうな家屋が見える。
 こんな場所があるなんて。
 狐にかされているような気分だ。俺が誘われるままに門をくぐると、ぽつりぽつりと大粒の雨が降り出した。

「ああ、降り出してしまったね。急ごう」

 腕を掴まれていたので引っ張られるようにして屋敷の中に入る。服も荷物も少し濡れてしまったが、大した問題にはならないだろう。
 彼は外を見やって、腕を組んだ。ざあざあと大きな音を立てて雨が降り注ぐ。

「いやはや、僕が屋敷に入るまで天気がもたなかったか」
「あんたが雨を降らせたんじゃないのか?」

 俺がもっともらしく指摘してやると、彼はわざとらしく肩をすくめた。

「面白いことをいうね」
「ここに連れ込んでなにをするつもりだ?」

 さすがにいくつも祠を壊していれば、本気まじでやばいようなものにも遭遇する。この屋敷にはそういうたぐいの空気を感じた。

「ありゃ、外でするほうが好みだったかな。てっきり入浴をして身を清めてからのほうが好きなタイプかと」

 じっとりとした視線を向けられて、俺はようやく察した。
 彼の言っていた「身を委ねて天にも昇る心地になってみないか?」とは、体の繋がりを持つことなのだと。

「あんた……俺の体が目的なのか?」
「あまり明けけにゆうてくれるな。ふむ、きみは婉曲えんきょく的な表現よりも直裁ちょくさい的な表現のほうがそそられる性質たちということか」
「別にそういう話じゃない」

 俺は大きく息を吐いた。頭をいて、もう一度大きく息を吐き出す。魔除まよけの煙草たばこを吸っておくべきだったのかもしれない。

「美女に誘われる怪異の話はよく見聞きしたが、あんたのような妖艶ようえんな男性に迫られる話は俺の耳には入らなかった」
「おや。文献をあされば意外と記録は残っていると思うがねえ」

 そういう文献をあさる趣味はなかったので、俺はもう一度ため息をついた。頭がまわらないのは呪いを受けている影響だろうか。

「……悪い。もうこの天候があんたのせいでもそうじゃなくてもどうでもいい。少しだけ、横になることはできないか?」
「少しといわず、ゆっくり休めばいい。僕は構わないよ」
「雨が止むまでの約束だったろう?」
「雨が止まなかったら、ずっといてくれるということでいいかな?」

 しれっと厄介やっかいなことを言ってくるので、俺は片手をあげた。

「このまま雨がやまないなら、俺は俺の力でこの屋敷自体を破壊する。俺は祠を壊すことにだけ特化しているわけじゃない」

 はったりである。どこまで目の前の怪異に通用するのかをはかるためにも嘘をついてみた。
 さあ、どう出る?
 彼は長い睫毛まつげのついた目をぱちぱちとしばたたかせて、にたりと笑った。

「ああきみは面白いね。できないはずだけど、きみならできるかもしれない」

 そう返して、彼の長い人差し指で俺の顎は持ち上げられる。瞬時に距離を詰められていた。

「ひとまずは回復が先だ。きみは寝ていればいい」

 美麗びれいな顔が近い。
 逃げ遅れたのは見惚みとれていたからだとは思いたくないが、視線を釘づけにする程度には魅了みりょうされてしまったのは事実だ。
 唇が重なったのだと理解してからの記憶がないのは、おそらく術にとされただけではないのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~

大波小波
BL
 鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。  彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。  和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。  祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。  夕食も共にするほど、親しくなった二人。  しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。  それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。  浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。  そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。  彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

虐げられた氷の聖子は隣国の野獣皇帝に執着(愛)されすぎて溶かされる

たら昆布
BL
暴君皇帝×薄幸の聖子

処理中です...