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水鏡の深淵
昇太の結婚 4
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目が覚めた。体が重い。ハジメテのとき、どれだけ加減されていたのかを思い知った。
風呂を勧められたが立つこともままならなくて、二人に支えられて浴室に案内される。ぼんやりしている間に彼らに体をまさぐられるように丁寧に洗われて、私はまた快感の渦に放り込まれた。
「や、だめ。今、まだ敏感だから、あっ」
「ふふ。またイっちゃった?」
「ヒクヒクしているな。ナカもよく洗うべきなのか?」
龍司の骨張った二本の指が抜き挿しされた。なめらかなのにその指が心地のいい場所に当たってキュウっと締まる。それがまた心地よくて私は声を上げた。
「僕たちのを使って奥までグリグリしてあげたほうがいいかも」
「だめ、そんなことしたら、ひゃっ」
膝の裏に昇太の手が差し込まれて、大きく脚が広げられる。龍司の指が私を暴くのがよく見えた。
「幸菜は僕らに任せておいてよ」
「気持ちよくなることだけ考えればいい」
引き抜かれた指にぬるりとしたものがまとわりついているのがわかった。それがボディソープではないことは明らかだ。
「やっ」
秘裂に熱が当たる。これは背後にいる昇太のものだ。熱に驚いて腰を浮かせる。逃げるつもりが招くような形になって、不意に心地のいい場所に刺激を受けた。
「ああっ」
「幸菜はえっちだね」
「あまり煽らないでほしい」
誘っているつもりも煽っているつもりもないのだ。どうしてこんなことになっているのだろう。
「痛いわけではなさそうだから、奥のほうまでよく洗おうね」
昇太が動く。私は抵抗できなかった。
「あっあっあっ」
「ここ、気持ちいいんだね。すごく締まってる」
「や、あっ」
丁寧にこそげるように動かれると頭の中が快感でいっぱいになった。わざと外されそうになれば私は追って官能を貪った。
「幸菜がいい。相性がいいってこういうことなんだろうね」
私が深くイって床に崩れているのを見ながら、昇太は硬くなった自身の熱を扱く。先に私が達してしまったので、中で出すをやめたらしかった。
「だが、昇太は」
「うん。わかってる。子が産まれるまでの約束は守るよ」
ふぅ、と息を吐く音。
「おろすという選択は考えなかったんだな」
「ないよ。産んでほしいじゃない、元気な赤ちゃん。どっちにせよ、体の負担になるんだから」
「あの女はおろしたいっていうと思ってた」
「龍司は見る目がないねえ。瞳子(とうこ)は家庭を持ちたい人だよ。家を出る口実が必要だったから声を掛けてきたんだろうし。好き好んで遊んでいるわけじゃない」
瞳子というのが結婚相手なのだろうか。ここに来てやっとお相手の名前を私は聞いた。
昇太のあっさりとした返答に、龍司は食いつくように迫る。
「じゃあ、兄貴は騙されたってことじゃ――」
「どうだろ。僕が瞳子の人生を買い取ったとも考えられるでしょう?」
お金については気にしていない様子である。昇太はどれだけの蓄えがあるのだろう。ウチも出水家も裕福な方の家だとは思うが、学生結婚をすんなり選べるほどの家庭なのかはわからなかった。
納得がいかないと言った様子で龍司がにらむ。
「それでよかったのか?」
「これは僕の人生だからねえ。お前にはわからないだろうけど、僕はよかったって思えるし、これからも後悔はしないんじゃないかな」
「兄貴は」
そう詰め寄る龍司に対し、昇太は不敵な笑みを浮かべた。
「ふふ。僕は今お前たちにこうして復讐できているから、満足なんだよ」
「復讐?」
「お前の目の前で幸菜を抱くこと、さ。自慢したかったんだよ、幸菜の処女を奪ったときに、僕が一番乗りをしたって。孕ませて、自分のものにしたかった」
率先してゴムをつけてくれたのに?
言っている内容と行動が一致しないように感じた。たまたまあの時は妊娠に至らなかっただけということだろうか。
私は呼吸を整えながら昇太の言葉を待つ。
「でも、幸菜は僕を欲しいとは願わなかったから。僕に人生を賭けてくれるなら、中にたっぷり出したんだけどねえ。これっきりでいいだなんて言うから、他に女作ってこうして快感漬けにしてる。いまさら僕を欲しいと言っても無駄になるでしょ?」
「昇太……」
「じゃ、僕はお先に失礼するよ。あとは二人で好きなだけヤればいいさ。若いんだし、まだまだイケるよね?」
昇太はシャワーを勝手に浴びて浴室を出て行く。ポカンとしている間に玄関が閉まる音が聞こえた気がした。
「幸菜」
「なあに、龍ちゃん」
「幸菜はわかっていたのか?」
私は頭をふるふると横に振った。
「幸菜は俺を許さないよな。逃げたいという意志を踏みにじったこと……」
「龍ちゃんが満足したなら、いいよ、もう」
うまく体を起こせない。龍司は私が動けないことに気づいて、体を起こすのを手伝ってくれた。性的な気配はもうなかったのに体が勝手に反応して嫌になる。余韻がひどい残り方をしている。
「悪かった」
「謝らないで……あー、それとも、思ったより良くなかったってこと?」
私が問うと、焦ったように龍司は首を横に振った。
「兄貴の前でしたのは思うところはあるが、想像以上だった。そうじゃなかったら、兄貴に張り合うだけのことで幸菜を抱いたりしない」
「……そうだよね」
理性が吹っ飛んでいたわけではないらしいとわかって私はほっとした。龍司なりに私を愛してくれたのだろう。
「……復讐、ね」
胸が痛む。
身体の関係を頼んだときに恋人になりたいと告げていたら、昇太は私だけを愛してくれたのだろうか。複数の女性と遊んだりせず、突然結婚を決めて去るようなことはなかったのだろうか。
頭も痛い。
「なあ、幸菜」
「ん?」
「こんな状況で言うもんじゃないんだが」
「なあに?」
「ちゃんと、付き合わないか? 俺たち」
「え?」
確かにこんな状況で告白されるとは思わなかったのだが。
私は驚きすぎて目を瞬かせた。
龍司は真面目な顔をしている。流れや勢いに任せて交際を申し込んできたわけではないのだろう。なんらかの意図がそこにある。
「幸菜が嫌なら断ってほしい。だが、メリットはある。俺と付き合えば、兄貴は幸菜を無理に抱こうとはしないと思うんだ」
「また三人でって方向に持ち込まれたら体がもたないんだけど」
「付き合うことにしたら、俺が断る。恋人を恋敵に差し出すことはしない」
龍司の目は本気であることを伝えようとしている。私を真っ直ぐ見つめていた。
「他に意中の相手がいるならさっさと恋人になっておけ。そうすれば兄貴は手を出せない」
それはそうかもしれない。頷こうとして、私は止めた。
「あー、でも、龍ちゃんと恋人になったら、エッチはするんだよね?」
「無理には迫らない。幸菜に合わせる。悪い条件じゃないだろう?」
考えさせてと片手で制したら、その手を両手で掴まれた。
「幸菜。俺じゃ君を守ることはできない?」
そんな顔で言われたら、私は断れないよ。
問いには首を横に振って答えて、私は泣き出しそうな気持ちを封じ込めて笑顔を作ったのだった。
「お願いします、龍ちゃん」
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