14 / 41
さあ、婚約破棄から始めましょう!
思惑どおりにならない 1
しおりを挟む
入浴後に話し合うはずだったのに、疲れ果ててしまった私は帰宅することになった。加えて、ゴーティエ王子自身の仕事の都合もあって、改めて場を設けることにしたのだ。
二日後の昼下がり。
私はゴーティエ王子に招かれて王宮に参上していた。これから二人きりのお茶会と言う名の作戦会議である。
とにかく、ここまでの状況を整理して、どうにか死亡ルートだけは回避しないと……。
あまり悠長なことはしていられない。ゲーム内のイベントがこれから控えているのだ。日が経てば日が経つほど、ソフィエットとのハッピーエンドに向かって物語が進んでしまう。打てる手は打っておかないと私自身の命が危うい。
あれこれと思考を巡らせながらお茶会会場のテラスに出ると、予期せぬ人物が先客として席についていた。
「御機嫌よう、未来の王太子妃さま」
「御機嫌よう、アロルドさま。あの、これは……」
赤い髪、精悍な顔つきでガッチリとした体躯の持ち主はアロルドだった。今日は非番なのか、騎士の姿ではない。侯爵家の一員としての貴族らしい格好だ。
彼は私を見るなり片手を上げて挨拶してくれる。
私はというと、慌てて周囲を見渡した。アロルドと二人きりでいるところを見られたりでもしたら、ゴーティエ王子の嫉妬をかってしまう。かなりマズイ。
「そう警戒するな。ゴーティエに呼ばれたからここにいるわけで、やましいことはないはずだ」
説明されても、彼に近づく気にはなれない。ゴーティエ王子が現れてから席に着こうと、私は距離をとった。
アロルドは苦笑する。
「それに、今日は絶対に手は触れない。先日は冗談が過ぎて申し訳なかったな。監禁されていなくてなによりだ」
「当然です。あのあとは散々な目に遭いました。私にも落ち度はあったのだとは思いますが」
本当に監禁されなくてよかった。入浴で疲れてぐったりしていたら、泊まっていくように勧められたし。もちろん丁重にお断りしたけども。
釘をさすように私が冷たくあしらうと、アロルドは肩を竦めた。
「すまなかったな。あそこまで執着しているとは思っていなかったんだ。政治的に敵対したくないから手元に置いておきたい……その程度の興味だとばかり」
ええ、アロルドさま、私も同感です。
心の中で頷きつつ、私はため息をついた。
ゴーティエ王子がなんとしても手放したくないと強情になっているのが想定外なのである。私は穏便に婚約破棄をして、平穏な余生を送りたいだけだというのに。
「ゴーティエさまはずいぶんと私を評価してくださっているようですね」
「そうだな。――それはそれとして、ヴァランティーヌ嬢、君は女性としての魅力は誰よりも持っていると思うぞ」
また私をからかって――と思いつつアロルドの顔をじっと見ると、彼は真面目な顔をしていた。
「最近は特に色っぽくなった。周囲には気をつけたほうがいい」
色っぽく……ね。
自分では実感がないが、年齢的には成熟してきているのだからそう感じる人もいるだろう。
しかし、アロルドさまは命知らずな人なのね……お節介焼きというか。いい人ではあるんだけど。
「ご忠告ありがとうございます。ですが、気をつけたほうがよろしいのは、あなた様のほうではなくって?」
背後から殺気を感じる。背中がゾクッとした。
二日後の昼下がり。
私はゴーティエ王子に招かれて王宮に参上していた。これから二人きりのお茶会と言う名の作戦会議である。
とにかく、ここまでの状況を整理して、どうにか死亡ルートだけは回避しないと……。
あまり悠長なことはしていられない。ゲーム内のイベントがこれから控えているのだ。日が経てば日が経つほど、ソフィエットとのハッピーエンドに向かって物語が進んでしまう。打てる手は打っておかないと私自身の命が危うい。
あれこれと思考を巡らせながらお茶会会場のテラスに出ると、予期せぬ人物が先客として席についていた。
「御機嫌よう、未来の王太子妃さま」
「御機嫌よう、アロルドさま。あの、これは……」
赤い髪、精悍な顔つきでガッチリとした体躯の持ち主はアロルドだった。今日は非番なのか、騎士の姿ではない。侯爵家の一員としての貴族らしい格好だ。
彼は私を見るなり片手を上げて挨拶してくれる。
私はというと、慌てて周囲を見渡した。アロルドと二人きりでいるところを見られたりでもしたら、ゴーティエ王子の嫉妬をかってしまう。かなりマズイ。
「そう警戒するな。ゴーティエに呼ばれたからここにいるわけで、やましいことはないはずだ」
説明されても、彼に近づく気にはなれない。ゴーティエ王子が現れてから席に着こうと、私は距離をとった。
アロルドは苦笑する。
「それに、今日は絶対に手は触れない。先日は冗談が過ぎて申し訳なかったな。監禁されていなくてなによりだ」
「当然です。あのあとは散々な目に遭いました。私にも落ち度はあったのだとは思いますが」
本当に監禁されなくてよかった。入浴で疲れてぐったりしていたら、泊まっていくように勧められたし。もちろん丁重にお断りしたけども。
釘をさすように私が冷たくあしらうと、アロルドは肩を竦めた。
「すまなかったな。あそこまで執着しているとは思っていなかったんだ。政治的に敵対したくないから手元に置いておきたい……その程度の興味だとばかり」
ええ、アロルドさま、私も同感です。
心の中で頷きつつ、私はため息をついた。
ゴーティエ王子がなんとしても手放したくないと強情になっているのが想定外なのである。私は穏便に婚約破棄をして、平穏な余生を送りたいだけだというのに。
「ゴーティエさまはずいぶんと私を評価してくださっているようですね」
「そうだな。――それはそれとして、ヴァランティーヌ嬢、君は女性としての魅力は誰よりも持っていると思うぞ」
また私をからかって――と思いつつアロルドの顔をじっと見ると、彼は真面目な顔をしていた。
「最近は特に色っぽくなった。周囲には気をつけたほうがいい」
色っぽく……ね。
自分では実感がないが、年齢的には成熟してきているのだからそう感じる人もいるだろう。
しかし、アロルドさまは命知らずな人なのね……お節介焼きというか。いい人ではあるんだけど。
「ご忠告ありがとうございます。ですが、気をつけたほうがよろしいのは、あなた様のほうではなくって?」
背後から殺気を感じる。背中がゾクッとした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,632
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる