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血玉髄は太陽を追って
*3* 10月11日金曜日、放課後
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「効果が期待できるとは限らないが、こっちも黒曜将人と同じ手を使おうと思う」
袋から中身を取り出し、抜折羅が紅の目の前に翳したのは、透明な六角柱の石がついたペンジュラムだった。
「水晶?」
「あぁ」
六角柱の両端が尖っている形状からすると、水晶の中でもダブルターミネイテッドと呼ばれるものだろう。シルバーのチェーンに、同じシルバーの留め具、それで水晶が固定されている。透明度の高い石で、木洩れ日を返す光がとても美しい。
「母さんの形見で、ずっと持ち歩いているんだ。魔性石ではないんだが、ともに同じ時間を過ごしてきたからか相性はいい」
「ずいぶんと純度の高い白水晶だね。持ち歩いてきたって言っている割には傷もないし」
遊輝がペンジュラムを興味深そうにまじまじと見ながら言う。
「そういう石なんですよ。――説明はこのくらいにして、早速始めましょうか。先を越されるわけにはいきませんし」
「よろしくお願いします」
紅は抜折羅に頭を下げる。抜折羅はチェーンの端をつまんでペンジュラムを下ろした。
ダウジングというものには興味がある。紅の亡き祖母、千晶もなくし物を探すときによくやっていた。それをやるとたちどころに見つけられたから、不思議に感じていたのだ。
「話し掛けてもいい?」
水平方向に少しずつ角度を変えてペンジュラムを翳している抜折羅に紅が問う。
「なんだ?」
「ダウジングってどうみるものなの?」
「石にイエスかノーかで答えられる質問をして動きを見るんだ。俺の場合、イエスなら時計回りに振れて、ノーなら動かない」
言って、抜折羅は動かない振り子を見せる。
「今がノーの状態。で――」
身体の向きをゆっくりと変える。さっきの方向から反時計回りに九〇度ほど進んだところで、振り子に変化があった。正円を描くように時計回りにくるくると振れている。
「こっちがイエスの状態だ。――人によってはイエスが時計回り、ノーが反時計回りだったりするが、そこは石の性質とか人との相性によるものだから、万人共通って訳じゃない。振れ方も様々らしいからな」
抜折羅はもう一度、他の方向に反応がないかどうかペンジュラムを翳して確認している。やはりある一方向でしか振れない。何かの反応は捉えたようだ。
「まずはこの方向だな」
反応があったのは星影の森からみて西側の場所だ。これで中等部が使用している学生東棟のほとんどや芸術棟、そのほか運動部で使用している武道館や弓道場などが除外された。
「この方角の施設ですと、食堂や宝物館、運動場あたりになるはずですが」
抜折羅が進み出したので、蒼衣が学内施設で思い当たる場所を挙げる。
――一応、全部調査はしたわよね……。
見落としがあった可能性は否定できないため、紅は黙って抜折羅のあとに続く。
「しっかし、面白いことができるんだね」
遊輝は退屈そうに告げる。今のところ活躍する出番がなくて暇なのだろう。
「水晶も扱える都合で覚えたんですよ。生きていれば、出水千晶女史に師事するつもりでいたんですが」
抜折羅の返しに、遊輝は挑戦的な視線を向ける。
「僕で見つけられなかったのに、君に見つけられるものなのかい?」
「今回は探し物が水晶ですからね。魔性石である〝氷雪の精霊〟が共鳴する可能性を否定することはできないでしょう」
数分歩いて最初にたどり着いたのは食堂だった。
食堂の入口で立ち止まると、星影の森でやったのと同じ要領でペンジュラムを翳す。
「あれ?」
抜折羅が首を傾げた。まったく反応がない。水平方向のいずれも、振り子は揺れなかった。
「食堂ではないってことはわかるんだけど、これってどういうこと?」
「さぁ……」
水晶をじっと見つめ、そのあとで入口から遠ざかるように森側へと走り、抜折羅はペンジュラムの反応をみている。
「あのー、星章先輩、食堂の上って何が入っているんですか?」
遠くから、食堂入口にいる蒼衣に叫んで問う。
――食堂の上? ……あ。
食堂は交流棟と呼ばれる建物の一階部分を占める、中等部と高等部が共有で使用している設備の一つだ。交流棟は三階建てであり、その高さは三階建てである学生東棟よりも高く、四階建ての学生西棟よりも低い。
つまり、交流棟の二階以上を占めている設備が存在している。
「なるほど、ホールとは盲点でした」
抜折羅の問いで、蒼衣も気付いたらしい。ぼそりと呟くと、両手をメガホン代わりにして叫んだ。
「金剛、戻ってください。交流棟の二階部分にご案内いたします」
紅たちは交流棟の二階に繋がる階段へと急いだ。
袋から中身を取り出し、抜折羅が紅の目の前に翳したのは、透明な六角柱の石がついたペンジュラムだった。
「水晶?」
「あぁ」
六角柱の両端が尖っている形状からすると、水晶の中でもダブルターミネイテッドと呼ばれるものだろう。シルバーのチェーンに、同じシルバーの留め具、それで水晶が固定されている。透明度の高い石で、木洩れ日を返す光がとても美しい。
「母さんの形見で、ずっと持ち歩いているんだ。魔性石ではないんだが、ともに同じ時間を過ごしてきたからか相性はいい」
「ずいぶんと純度の高い白水晶だね。持ち歩いてきたって言っている割には傷もないし」
遊輝がペンジュラムを興味深そうにまじまじと見ながら言う。
「そういう石なんですよ。――説明はこのくらいにして、早速始めましょうか。先を越されるわけにはいきませんし」
「よろしくお願いします」
紅は抜折羅に頭を下げる。抜折羅はチェーンの端をつまんでペンジュラムを下ろした。
ダウジングというものには興味がある。紅の亡き祖母、千晶もなくし物を探すときによくやっていた。それをやるとたちどころに見つけられたから、不思議に感じていたのだ。
「話し掛けてもいい?」
水平方向に少しずつ角度を変えてペンジュラムを翳している抜折羅に紅が問う。
「なんだ?」
「ダウジングってどうみるものなの?」
「石にイエスかノーかで答えられる質問をして動きを見るんだ。俺の場合、イエスなら時計回りに振れて、ノーなら動かない」
言って、抜折羅は動かない振り子を見せる。
「今がノーの状態。で――」
身体の向きをゆっくりと変える。さっきの方向から反時計回りに九〇度ほど進んだところで、振り子に変化があった。正円を描くように時計回りにくるくると振れている。
「こっちがイエスの状態だ。――人によってはイエスが時計回り、ノーが反時計回りだったりするが、そこは石の性質とか人との相性によるものだから、万人共通って訳じゃない。振れ方も様々らしいからな」
抜折羅はもう一度、他の方向に反応がないかどうかペンジュラムを翳して確認している。やはりある一方向でしか振れない。何かの反応は捉えたようだ。
「まずはこの方向だな」
反応があったのは星影の森からみて西側の場所だ。これで中等部が使用している学生東棟のほとんどや芸術棟、そのほか運動部で使用している武道館や弓道場などが除外された。
「この方角の施設ですと、食堂や宝物館、運動場あたりになるはずですが」
抜折羅が進み出したので、蒼衣が学内施設で思い当たる場所を挙げる。
――一応、全部調査はしたわよね……。
見落としがあった可能性は否定できないため、紅は黙って抜折羅のあとに続く。
「しっかし、面白いことができるんだね」
遊輝は退屈そうに告げる。今のところ活躍する出番がなくて暇なのだろう。
「水晶も扱える都合で覚えたんですよ。生きていれば、出水千晶女史に師事するつもりでいたんですが」
抜折羅の返しに、遊輝は挑戦的な視線を向ける。
「僕で見つけられなかったのに、君に見つけられるものなのかい?」
「今回は探し物が水晶ですからね。魔性石である〝氷雪の精霊〟が共鳴する可能性を否定することはできないでしょう」
数分歩いて最初にたどり着いたのは食堂だった。
食堂の入口で立ち止まると、星影の森でやったのと同じ要領でペンジュラムを翳す。
「あれ?」
抜折羅が首を傾げた。まったく反応がない。水平方向のいずれも、振り子は揺れなかった。
「食堂ではないってことはわかるんだけど、これってどういうこと?」
「さぁ……」
水晶をじっと見つめ、そのあとで入口から遠ざかるように森側へと走り、抜折羅はペンジュラムの反応をみている。
「あのー、星章先輩、食堂の上って何が入っているんですか?」
遠くから、食堂入口にいる蒼衣に叫んで問う。
――食堂の上? ……あ。
食堂は交流棟と呼ばれる建物の一階部分を占める、中等部と高等部が共有で使用している設備の一つだ。交流棟は三階建てであり、その高さは三階建てである学生東棟よりも高く、四階建ての学生西棟よりも低い。
つまり、交流棟の二階以上を占めている設備が存在している。
「なるほど、ホールとは盲点でした」
抜折羅の問いで、蒼衣も気付いたらしい。ぼそりと呟くと、両手をメガホン代わりにして叫んだ。
「金剛、戻ってください。交流棟の二階部分にご案内いたします」
紅たちは交流棟の二階に繋がる階段へと急いだ。
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