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面倒ごとは金剛石の隣で【第2部完結】
★10★ 10月14日月曜日、15時過ぎ【A】
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「あ、でも、セキュリティーの都合で駄目だって言うなら諦めるわ。大事な物も管理しているだろうし」
ちらちらと抜折羅を見ながら、紅はもじもじしている。
「そりゃあ、紅の貯金じゃ弁償できないだろう物も置いてはあるが――」
抜折羅は念のため思い返す。特に困るようなこともなさそうだ。
――それに、この試験で俺が立てた目標を超えたら、渡すつもりでいたわけだし。
「むむ……当たり前よね。抜折羅にとっての職場だし」
「だが、紅にとっても職場ってことになれば、話は変わるだろ?」
落ち込みかけていた紅の手を取ると、抜折羅はポケットに入れていたカードキーを取り出して握らせた。
「お前が望んだ褒美だ。受け取れ」
みるみるうちに彼女の表情が明るくなる。
「えっ!? 本当に良いの!?」
受け取ったカードキーと抜折羅の顔を交互に見ながら、紅は興奮気味に訊ねてきた。
「よく頑張ったからな。それに、これがあればいつだってここに寄れるだろう?」
言って、子どもをあやすように紅の頭をぽんぽんっと撫でる。どうも彼女は頭を撫でられるのが好きらしい。この合宿で得られた貴重な情報だ。
紅が要求してきたのは、この事務所と私室に入るためのカードキーだった。とどのつまり、合い鍵を寄越せと言ってきたわけだ。
「ん? 待って。あたしにとっても職場になるってどういうこと?」
抜折羅がカードキーを渡すに至った経緯に気付いたらしい。彼女は不思議そうに見上げてくる。
「試験結果が基準値を満たしたので、バイトとして採用するってことだ。そういう建前があれば、何かと行動しやすいだろう?」
驚いているらしく、紅は目を瞬いた。それ以外にどんな反応を返したら良いのかわからないようだ。突っ立って、ただこちらを見ている。
「えっと……もうちょっとリアクションが欲しいんだが、どうかしたのか?」
一方的過ぎただろうか――抜折羅はほんの少し不安になる。紅にとってメリットが多いだろうと考えてそうしたのだが、迷惑だっただろうか。
返事を待っていると、紅はゆっくりと首を横に振った。
「なんか、現実感がなくって、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃったから」
告げて、紅は抜折羅に抱きついた。肩に額をくっつけて、紅は台詞を続ける。
「だって、抜折羅はいつもあたしをタリスマントーカーの厄介ごとから遠ざけようとしてきたじゃない。あたしがどんなに望んでも、あなたのいる世界には置いてくれないだろうって――そう考えていたのよ。……嬉しい」
回された腕に力がこもる。
抜折羅は片手を彼女の腰に回し、もう片方は彼女の頭に載せた。
「喜んでもらっているところで言いにくいのだが、今回の措置はお前の選択肢を増やしてやっただけのつもりだ。適当な肩書きを用意しただけで、実質的なところではお前を巻き込む気はない。そこは履き違えないでほしい」
紅の好きなようにさせたいが、危ないことはさせたくない――そんな気持ちが今回の褒美の裏側にある。彼女の行動力やトラブルを招く体質を思うと、遠ざけようとしたところで結局は関わってきてしまう。ならば、最初から目の届く場所においておくのが都合が良い。それが一番合理的であると抜折羅は判断したのだった。
「……うん、わかった。でも、必要であれば、あたしの力を頼りにして良いんだからね? 抜折羅の力になりたいの」
「紅の気持ちは把握している。どうしても必要になったら、そのときはお前を頼るさ」
言って、彼女の前髪をそっと持ち上げると口付けをする。
――あんまり可愛いことをしてくれるな。もっとお前を欲しいと思っちまう……。
ちらちらと抜折羅を見ながら、紅はもじもじしている。
「そりゃあ、紅の貯金じゃ弁償できないだろう物も置いてはあるが――」
抜折羅は念のため思い返す。特に困るようなこともなさそうだ。
――それに、この試験で俺が立てた目標を超えたら、渡すつもりでいたわけだし。
「むむ……当たり前よね。抜折羅にとっての職場だし」
「だが、紅にとっても職場ってことになれば、話は変わるだろ?」
落ち込みかけていた紅の手を取ると、抜折羅はポケットに入れていたカードキーを取り出して握らせた。
「お前が望んだ褒美だ。受け取れ」
みるみるうちに彼女の表情が明るくなる。
「えっ!? 本当に良いの!?」
受け取ったカードキーと抜折羅の顔を交互に見ながら、紅は興奮気味に訊ねてきた。
「よく頑張ったからな。それに、これがあればいつだってここに寄れるだろう?」
言って、子どもをあやすように紅の頭をぽんぽんっと撫でる。どうも彼女は頭を撫でられるのが好きらしい。この合宿で得られた貴重な情報だ。
紅が要求してきたのは、この事務所と私室に入るためのカードキーだった。とどのつまり、合い鍵を寄越せと言ってきたわけだ。
「ん? 待って。あたしにとっても職場になるってどういうこと?」
抜折羅がカードキーを渡すに至った経緯に気付いたらしい。彼女は不思議そうに見上げてくる。
「試験結果が基準値を満たしたので、バイトとして採用するってことだ。そういう建前があれば、何かと行動しやすいだろう?」
驚いているらしく、紅は目を瞬いた。それ以外にどんな反応を返したら良いのかわからないようだ。突っ立って、ただこちらを見ている。
「えっと……もうちょっとリアクションが欲しいんだが、どうかしたのか?」
一方的過ぎただろうか――抜折羅はほんの少し不安になる。紅にとってメリットが多いだろうと考えてそうしたのだが、迷惑だっただろうか。
返事を待っていると、紅はゆっくりと首を横に振った。
「なんか、現実感がなくって、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃったから」
告げて、紅は抜折羅に抱きついた。肩に額をくっつけて、紅は台詞を続ける。
「だって、抜折羅はいつもあたしをタリスマントーカーの厄介ごとから遠ざけようとしてきたじゃない。あたしがどんなに望んでも、あなたのいる世界には置いてくれないだろうって――そう考えていたのよ。……嬉しい」
回された腕に力がこもる。
抜折羅は片手を彼女の腰に回し、もう片方は彼女の頭に載せた。
「喜んでもらっているところで言いにくいのだが、今回の措置はお前の選択肢を増やしてやっただけのつもりだ。適当な肩書きを用意しただけで、実質的なところではお前を巻き込む気はない。そこは履き違えないでほしい」
紅の好きなようにさせたいが、危ないことはさせたくない――そんな気持ちが今回の褒美の裏側にある。彼女の行動力やトラブルを招く体質を思うと、遠ざけようとしたところで結局は関わってきてしまう。ならば、最初から目の届く場所においておくのが都合が良い。それが一番合理的であると抜折羅は判断したのだった。
「……うん、わかった。でも、必要であれば、あたしの力を頼りにして良いんだからね? 抜折羅の力になりたいの」
「紅の気持ちは把握している。どうしても必要になったら、そのときはお前を頼るさ」
言って、彼女の前髪をそっと持ち上げると口付けをする。
――あんまり可愛いことをしてくれるな。もっとお前を欲しいと思っちまう……。
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