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【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)
★6★ 12月7日土曜日、朝
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黙って見つめていると、紅は視線を右に外した。
「妙なことを口走ったことについては反省しているので、その手をどけてくれないでしょうか?」
「わかった」
充分楽しめたので、何もせずにおとなしくひいた。からかいすぎて嫌われたら本末転倒だ。
「紅が欲求不満なのかどうかの話はそれで良いとして、その夢の原因は他にもあるぞ?」
抜折羅が告げると、紅はむすっとする。
「あたしとしてはまだまだ文句はあるけど、他の原因って何よ?」
「結論の前に確認だ。お前、枕元に魔性石を置いていないか?」
魔性石と限らなくても良いのだが、これほど愉快な夢を二度も見せる代物だ。ただのパワーストーンではそうもいくまい。
「えっとね……星章先輩から貰ったスターサファイアの〝アイススフィア〟でしょ。あとは、白浪先輩から貰ったブラックオパールの〝ラッキートゥモロー〟と、将人から預かったままになっているオブシディアンの〝ダークスピア〟が割とベッドのそばにあると思うけど」
「お前にはガーネットを贈れないな」
紅の台詞に呆れて、思わず台詞がついて出た。
――男からンな物騒なものを受け取るな。
彼らなりに意図があって、それぞれの石を彼女に贈っているのだろうが、今回は置き場所が問題だ。それらの石が干渉しあって厄介な状況を作り出しているのはほぼ間違いない。
「ガーネットを贈れないって?」
「一途な想いには力を貸すが、浮気性な人間には力をなくすと言われている石だからだ。石言葉に《貞節》があるくらいで、持ち主が他の石を持つことを嫌う。だから、お前にはガーネットは不向きだ」
わざと穿った言い方をしてやる。
――紅のところに魔性石が集まってしまうのは、《宝石の女王》と呼ばれるルビーの仕業なんだろうが。
「あたしは抜折羅一筋だもん……」
「そうだと信じさせてくれよ?」
意図が伝わったようで何よりだ。自分のことに飽きて気変わりをされるのは仕方がないと諦めがつくが、好きだと言いながら他の男に目移りされては不愉快である。男友達を作るな、男と仲良くするな、などと言って独占しようとまでは思っていないつもりだ。だから、せめて安心させて欲しい。
紅の頭を撫でると、彼女はくすぐったそうに目を細めた。
「――話が逸れたな。で、それらの魔性石が寝ている人間にどんな作用をもたらすかが問題なんだ」
彼女は宝石の効能については疎い。あるときに勉強させたものの、ちょっとした雑学程度の知識止まりで、実用性は伴わない。抜折羅は魔性石を扱う都合でそれなりの知識を有していた。
「夢に作用するってこと?」
興味深そうに身を乗り出して、問い掛けてくる。
「そう。一番厄介なものはオパールだな。良い夢を見させてくれる効果は期待できるものの、いささか刺激的なものになりやすい」
刺激的という表現で良いのかはわからないが、オパールが見せる夢は情動を呼び起こすものだという。夢操作に限定すれば、初心者には不向きな石とされれているのだ。
「他は?」
「サファイアは《浮気封じ》の石だから、贈り主が誰であれ、持ち主が浮気だと思わない相手が夢に現れやすくなる可能性がある。睡眠に関してなら、寝付きが良くなるとして《不眠症の解消》効果はあるのだが」
《不実に遭うと色を変える》と言われる石、サファイア。その性質はルチルの内包物を含むスターサファイアも同様だ。《浮気封じ》としての伝説を持つこの宝石の効能を期待して、星章蒼衣は彼女に贈ったのだろうが、結果は今ひとつのようだ。ヘアピンになっているので紅はほぼ毎日それを身に付けているというのに。
「じゃあ、オブシディアンは?」
「オブシディアンは《現実と向き合う》石。現状をありのままに突き付けてくる。その結果、最も現実的な形で問題解決の方法を示すこともある。それは、おそらく夢に対してもな」
オブシディアンという名前は聞き慣れない人も多いかも知れないが、ようは黒曜石のことだ。中世ヨーロッパでは呪術の用途で鏡として利用されたという。かなり強い力で持ち主に働きかけるために、しっかりとした目的を描けない人間には扱いにくいものらしい。
「――以上のことから、紅の中にある願望がそれらの石に影響された結果、そういう夢を見せた可能性が高い」
石の効能に基づいた知識を総合すると、そうなる。ただ、何がきっかけでそんな夢を見るに至ったのかが、想像できない。フラストレーションが溜まっていたのだとすれば、予兆があっても良さそうであるのに、紅には思い当たる節がなかったようなのだ。
「妙なことを口走ったことについては反省しているので、その手をどけてくれないでしょうか?」
「わかった」
充分楽しめたので、何もせずにおとなしくひいた。からかいすぎて嫌われたら本末転倒だ。
「紅が欲求不満なのかどうかの話はそれで良いとして、その夢の原因は他にもあるぞ?」
抜折羅が告げると、紅はむすっとする。
「あたしとしてはまだまだ文句はあるけど、他の原因って何よ?」
「結論の前に確認だ。お前、枕元に魔性石を置いていないか?」
魔性石と限らなくても良いのだが、これほど愉快な夢を二度も見せる代物だ。ただのパワーストーンではそうもいくまい。
「えっとね……星章先輩から貰ったスターサファイアの〝アイススフィア〟でしょ。あとは、白浪先輩から貰ったブラックオパールの〝ラッキートゥモロー〟と、将人から預かったままになっているオブシディアンの〝ダークスピア〟が割とベッドのそばにあると思うけど」
「お前にはガーネットを贈れないな」
紅の台詞に呆れて、思わず台詞がついて出た。
――男からンな物騒なものを受け取るな。
彼らなりに意図があって、それぞれの石を彼女に贈っているのだろうが、今回は置き場所が問題だ。それらの石が干渉しあって厄介な状況を作り出しているのはほぼ間違いない。
「ガーネットを贈れないって?」
「一途な想いには力を貸すが、浮気性な人間には力をなくすと言われている石だからだ。石言葉に《貞節》があるくらいで、持ち主が他の石を持つことを嫌う。だから、お前にはガーネットは不向きだ」
わざと穿った言い方をしてやる。
――紅のところに魔性石が集まってしまうのは、《宝石の女王》と呼ばれるルビーの仕業なんだろうが。
「あたしは抜折羅一筋だもん……」
「そうだと信じさせてくれよ?」
意図が伝わったようで何よりだ。自分のことに飽きて気変わりをされるのは仕方がないと諦めがつくが、好きだと言いながら他の男に目移りされては不愉快である。男友達を作るな、男と仲良くするな、などと言って独占しようとまでは思っていないつもりだ。だから、せめて安心させて欲しい。
紅の頭を撫でると、彼女はくすぐったそうに目を細めた。
「――話が逸れたな。で、それらの魔性石が寝ている人間にどんな作用をもたらすかが問題なんだ」
彼女は宝石の効能については疎い。あるときに勉強させたものの、ちょっとした雑学程度の知識止まりで、実用性は伴わない。抜折羅は魔性石を扱う都合でそれなりの知識を有していた。
「夢に作用するってこと?」
興味深そうに身を乗り出して、問い掛けてくる。
「そう。一番厄介なものはオパールだな。良い夢を見させてくれる効果は期待できるものの、いささか刺激的なものになりやすい」
刺激的という表現で良いのかはわからないが、オパールが見せる夢は情動を呼び起こすものだという。夢操作に限定すれば、初心者には不向きな石とされれているのだ。
「他は?」
「サファイアは《浮気封じ》の石だから、贈り主が誰であれ、持ち主が浮気だと思わない相手が夢に現れやすくなる可能性がある。睡眠に関してなら、寝付きが良くなるとして《不眠症の解消》効果はあるのだが」
《不実に遭うと色を変える》と言われる石、サファイア。その性質はルチルの内包物を含むスターサファイアも同様だ。《浮気封じ》としての伝説を持つこの宝石の効能を期待して、星章蒼衣は彼女に贈ったのだろうが、結果は今ひとつのようだ。ヘアピンになっているので紅はほぼ毎日それを身に付けているというのに。
「じゃあ、オブシディアンは?」
「オブシディアンは《現実と向き合う》石。現状をありのままに突き付けてくる。その結果、最も現実的な形で問題解決の方法を示すこともある。それは、おそらく夢に対してもな」
オブシディアンという名前は聞き慣れない人も多いかも知れないが、ようは黒曜石のことだ。中世ヨーロッパでは呪術の用途で鏡として利用されたという。かなり強い力で持ち主に働きかけるために、しっかりとした目的を描けない人間には扱いにくいものらしい。
「――以上のことから、紅の中にある願望がそれらの石に影響された結果、そういう夢を見せた可能性が高い」
石の効能に基づいた知識を総合すると、そうなる。ただ、何がきっかけでそんな夢を見るに至ったのかが、想像できない。フラストレーションが溜まっていたのだとすれば、予兆があっても良さそうであるのに、紅には思い当たる節がなかったようなのだ。
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