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【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)
*9* 12月7日土曜日、11時過ぎ
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少しだけ、抜折羅の印象が変わった。
――想像以上に彼はすごい。
様々なブースの前を歩いて行くと、進む先々で声を掛けられた。昨日話した店員なのだそうだが、これがよく覚えられているのである。世界の様々な地域から出展してきているらしく、明らかに日本人ではなさそうな人まで声を掛けてくるのだから驚きだ。
「……って、今の何語?」
呼び止められたのは隕石を主に扱っているブース。英語ではないどこかの言葉で話し掛けられ、二、三やり取りをして抜折羅が戻ってきたところだ。
「ん? ロシア語だが」
当然のように返された。
――いや、ちょっと待て。
紅は思い返す。
「英語とフランス語だけじゃなく、ロシア語もできるの!?」
「基本的な挨拶と買い物に必要な会話くらいは。何か冗談を言われたみたいなんだが、俺にはわからなかったし、まだまだ勉強が足りん」
さぁ行くぞ、とばかりに手をひかれる。
――ゴメン、抜折羅。あたし、あなたのこと、そーとー侮っていたわ……。
あまり過去のことを話したがらないこともあり、抜折羅には謎めいたところもたくさんある。高校卒業レベルの学力がないと取得できないとされる宝石学資格を持っていたり、実はタリスマンオーダー社の社長が養母で次期社長候補であったり、日本での生活をサポートする専属の執事が付いていたり――と、知っているだけでもその辺にうろうろしている高校生とは違う。そして、本人はそのことに無頓着だ。
――無頓着だから、こうして自然に接することができるんだけど……。
抜折羅は自分の能力をひけらかすようなことをしないし、それなりに裕福であるのに持ち物や服装は気取らない。そういうところは、高校生にして画家である白浪遊輝や、お金持ちで学校始まって以来の秀才などと言われている星章蒼衣とは違う。目立つことを避けているのに、つい注目されてしまう庶民が金剛抜折羅というパーソナリティなのだ。
「どうした? じっと俺の顔を見つめたりして。言いたいことがあるなら、言えよ?」
「あ、うん。なんでもないの」
紅は慌てて首を横に振ってごまかす。抜折羅が不安げだ。そんな顔をさせてしまったことに申し訳なさを感じていると、抜折羅が続ける。
「紅? 俺は他の男よりも感情の機微に疎い。だから、何でも教えろよ? 何をされようとも、何を言われようとも、お前が俺を好いていてくれる限り、お前を……手放したりしないから」
言って、ぷいっと顔を背けられてしまった。彼の耳がすごく赤い。
――自分の台詞に照れてるんだわ……。
一生懸命な彼が好きだ。頑張って、やってみて、それで恥ずかしがってしまうようなところを可愛いと思う。自分なりに努力しているのも伝わってきて、彼に夢中になってしまう。
――あたしは、抜折羅が、好き。
どんな言葉を返そうか迷って。だけどどの言葉も告げるには気恥ずかしくて。
結局、紅は絡めた指に力を込め、彼に身を寄せるだけにした。これが今の精一杯。
――伝わるかな、あたしの気持ち。
ムーンストーンが置いてある店まではあと少しだ。
――想像以上に彼はすごい。
様々なブースの前を歩いて行くと、進む先々で声を掛けられた。昨日話した店員なのだそうだが、これがよく覚えられているのである。世界の様々な地域から出展してきているらしく、明らかに日本人ではなさそうな人まで声を掛けてくるのだから驚きだ。
「……って、今の何語?」
呼び止められたのは隕石を主に扱っているブース。英語ではないどこかの言葉で話し掛けられ、二、三やり取りをして抜折羅が戻ってきたところだ。
「ん? ロシア語だが」
当然のように返された。
――いや、ちょっと待て。
紅は思い返す。
「英語とフランス語だけじゃなく、ロシア語もできるの!?」
「基本的な挨拶と買い物に必要な会話くらいは。何か冗談を言われたみたいなんだが、俺にはわからなかったし、まだまだ勉強が足りん」
さぁ行くぞ、とばかりに手をひかれる。
――ゴメン、抜折羅。あたし、あなたのこと、そーとー侮っていたわ……。
あまり過去のことを話したがらないこともあり、抜折羅には謎めいたところもたくさんある。高校卒業レベルの学力がないと取得できないとされる宝石学資格を持っていたり、実はタリスマンオーダー社の社長が養母で次期社長候補であったり、日本での生活をサポートする専属の執事が付いていたり――と、知っているだけでもその辺にうろうろしている高校生とは違う。そして、本人はそのことに無頓着だ。
――無頓着だから、こうして自然に接することができるんだけど……。
抜折羅は自分の能力をひけらかすようなことをしないし、それなりに裕福であるのに持ち物や服装は気取らない。そういうところは、高校生にして画家である白浪遊輝や、お金持ちで学校始まって以来の秀才などと言われている星章蒼衣とは違う。目立つことを避けているのに、つい注目されてしまう庶民が金剛抜折羅というパーソナリティなのだ。
「どうした? じっと俺の顔を見つめたりして。言いたいことがあるなら、言えよ?」
「あ、うん。なんでもないの」
紅は慌てて首を横に振ってごまかす。抜折羅が不安げだ。そんな顔をさせてしまったことに申し訳なさを感じていると、抜折羅が続ける。
「紅? 俺は他の男よりも感情の機微に疎い。だから、何でも教えろよ? 何をされようとも、何を言われようとも、お前が俺を好いていてくれる限り、お前を……手放したりしないから」
言って、ぷいっと顔を背けられてしまった。彼の耳がすごく赤い。
――自分の台詞に照れてるんだわ……。
一生懸命な彼が好きだ。頑張って、やってみて、それで恥ずかしがってしまうようなところを可愛いと思う。自分なりに努力しているのも伝わってきて、彼に夢中になってしまう。
――あたしは、抜折羅が、好き。
どんな言葉を返そうか迷って。だけどどの言葉も告げるには気恥ずかしくて。
結局、紅は絡めた指に力を込め、彼に身を寄せるだけにした。これが今の精一杯。
――伝わるかな、あたしの気持ち。
ムーンストーンが置いてある店まではあと少しだ。
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