宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)

*10* 12月7日土曜日、昼

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 いくつも並ぶ柔らかな白色の石がついたアクセサリーの中で、白地に潤んだように青く輝く光を宿す丸い石がついたネックレスが目についた。シルバーの台座にセットされているカボションカットのその石は、ムーンストーンの中でもロイヤルブルームーンストーンと呼ばれるものだそうだ。

 ――これだわ。

 手に取っても構わないと言われたので、こうはシルバーのチェーンを恐る恐る持ち上げる。

「素敵……」

 親指の爪よりも一回りくらい大きいだろうか。こんもりとした丸い膨らみや縦長の楕円形の形状は悪くない。主張し過ぎない程度のサイズで好感が持てた。

「……それが良いのか?」

 抜折羅ばさらこうの手のひらに載せられた石を見ながら訊ねる。

「うん。これに一番惹かれるの」

 素直に頷く。この石が自分に合うものだと直感していた。

「ネックレス以外にも加工できるみたいだが」
「このままが良いわ。それに、多少のアレンジなら、自分でできるし」
「ん?」

 何のことを言っているのかわからなかったらしい。抜折羅が不思議そうな顔をするので、紅は補足する。

「あたしのお父さんがジュエリーデザイナーだってこと、話してなかったっけ?」
「あぁ、それは知ってる」
「で、父さんの知り合いに加工業者の人もいて、この前見学させてもらったの。また遊びに来て良いって言っていたから、頼めばどうにかなるかなって」

 作業の様子を見させてくれた人は三十代の女性で、「デザインだけじゃなく自分でも作りたくなったら、弟子にしてあげるわよ?」などと誘ってくる、明るく気さくな人だった。その人柄で、もしジュエリーデザイナーになる夢が叶ったら、絶対にこの人に依頼しようと決めている。

「そっか……。夢の実現のためにお前なりの努力しているんだな」

 ぼそりと告げて、抜折羅は紅からロイヤルブルームーンストーンのネックレスを受け取る。店員に声を掛けて、さっさと会計を始めた。

 ――なんか……変?

 抜折羅が何を思ったのかよくわからない。いつもの生真面目そうな横顔をじっと見つめてみるが、なんせ元来感情の起伏が表れにくい彼なのだ、気持ちを読み取るのは難しい。

 ――うーん。何だろう、この違和感。

 そのとき、とんっと頭に何かが当たった。誰かの荷物がぶつかったらしい。机で仕切られたブースが並ぶ狭い通路に客が群がるように立っていては、通るときに多少ぶつかってしまうのは致し方ない。
 紅は物が当たった右側のこめかみの上部をさする。

 ――え?

 冷や汗が流れた。そこに付けていたはずのヘアピンがなかったからだ。

 ――やだっ!? あれは蒼衣あおい兄様から貰った誕生日プレゼントなのにっ!?

 ぶつかった拍子に落下したのではないかと慌てて足下を見やるが、スターサファイアがついたヘアピンの姿はない。

「紅?」

 店員からロイヤルブルームーンストーンが入った紙袋を受け取った抜折羅が、狼狽うろたえている紅に気付いて声を掛けてくる。

「どうしよう。星章せいしょう先輩から貰った〝アイススフィア〟を落としちゃったみたい」

 おそらく、身に付けていたものの中では最高額の品だ。まさかそれを落としてしまうだなんて。

「落ち着け、紅。〝アイススフィア〟は魔性石なんだし、俺らなら見つけられるだろ?」
「でも、万が一見つけられなかったら、ただじゃ済まないわ。どうしよう……」

 動揺している。大事にするように、常に身に付けているように――そう言われて渡された物だ。相手が蒼衣であるがために、嫌な予感しかしない。説教程度で片付けばまだマシで、彼から何を要求されるかは想像がつかない。

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