宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)

*11* 12月7日土曜日、昼

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「俺が探すから、余計なことは考えるな」

 抜折羅ばさらこうの手を握り、会場の外へと誘導する。設けられた休憩スペースで椅子に座らされると、抜折羅はスマートフォンを取り出して誰かに連絡を取った。
 流暢りゅうちょうな英語でのやり取りが終わると、彼は周囲を見渡す。

「〝アイススフィア〟は会場の外を移動している。落としたのではなく、盗られたようだな。追うぞ」

 抜折羅に焦りの様子が色濃く表れる。人混みを掻き分けて早足で移動する彼の後ろを、紅はすぐに追った。はぐれないようにダウンジャケットの端を握る。

「盗られたって……?」

 物騒な言い方に、思わず問う。

「ムーンストーンを選んでいるときは、まだ身に付けていたはずなんだ。そこで落としたのであればすぐに見つかるだろ? そうでないなら、落とし物として届けられていることか考えられる。だが、それ以外となれば――」
「落としたときに、誰かの荷物に引っかかったのかも知れないわよ?」

 高価な物ではあるが、盗まれたとは思いたくなかった。できるだけ穏便に処理したいという気持ちが、そんな想像を生み出す。

「あぁ、確かに。そうだとしても、さっさと追いつく必要はあるだろうな」
「えぇ。何はともあれ、返してもらわなくちゃ」

 会場のあるサンシャインシティ文化会館の二階を早足で抜けて、専門店が並ぶサンシャイン60の二階にやってくる。さすがは土曜日だ。ぎゅうぎゅうとは言わないが、若者や家族連れで賑やかである。

「これじゃ、誰が持っているのかわからないわ……」

 魔性石の気配はかすかに感じられ、そう遠くないことはわかる。だが、探知に特化した能力を持たない紅には特定が難しい。それに、女子高生として平均的な背丈の彼女では、この人混みだと見通しが悪くて不利だ。

「あれは……」

 抜折羅がぼそりと呟く。ダウンジャケットを握っていた紅の手を掴んで握り直すと、目的を持ってつかつかと進み出す。

「え、ちょっと、抜折羅っ!?」

 説明もなしに引っ張られると戸惑う。だが、すぐに理由がわかった。

「あなたも来ていたんですね、星章せいしょう先輩」

 一階へと向かうエスカレーターの脇で、抜折羅が背の高い少年を引き留める。振り向いたのは、質が良さそうな濃紺のロングコートを羽織った眼鏡の少年――星章せいしょう蒼衣あおいだった。
 蒼衣は紅と抜折羅を見て、冷たく微笑む。整った顔立ちでそういう表情をされると、背筋がぞくりとする。

「そちらは仲良くデートですか? 私のフィアンセがお世話になっているようですね」

 嫉妬の感情が台詞にありありとしている。

 ――〝紺青こんじょうの王〟仕事しなさいよっ!!

 星章蒼衣はサファイアの魔性石〝紺青の王〟と契約をしている〝石憑いしつき〟だ。サファイアの効能には《嫉妬心を抑える》というものがあるはずなのだが、魔性石が仕事を拒んでいるのか、はたまた彼の嫉妬心が限界を超えているのか、あまり抑えられているようには感じられない。

「べ、別にあたしの自由でしょ? 婚約者ってのは表向きなんですからっ」

 紅は抜折羅の少し後ろに身を隠しながら言ってやる。

「それに、クリスマスは例年通りに星章家のパーティーに出るってお伝えしているはずです。我慢してくださいっ!!」

 火群ほむら家は紅が生まれる前から星章家と付き合いがある。そんな理由で星章家主催のクリスマスパーティーに毎年招待されるのだ。
 非難すると、蒼衣はふっと鼻で笑った。

「我慢? 貴女あなたが私を苛立たせているのではありませんか」
「あたしにはそんなつもりは――」
「二人とも、その話は余所でしてください」

 呆れた口調で、抜折羅が間に入る。有無を言わせずに台詞は続く。

「星章先輩が〝アイススフィア〟を持っているんですよね? どうしてこんなことを。あなたらしくない」

 現物を出せとばかりに抜折羅は右手を出す。
 すると蒼衣は素直に応じ、コートのポケットから小さなスターサファイアが付いたヘアピンを取り出した。

「弁解までに一つ言うなら、これは私がくわだてたことではありませんよ?」

 抜折羅の手のひらにヘアピンが載せられることはなく、警戒しながら様子を窺っていた紅に直接戻される。正確には紅の前髪に付ける形で。

「どういう――」

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