強運と幸運を持ったガチャ好きな召喚者は目標が無いので最強を目指してみた

中沢日秋

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第一章 奔走冒険者編

第九話 経験

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 袋叩き状態になってる。こいつらの攻撃方法は残酷だからなあ。草の葉を集めて槍の先端のような形になると、ねっこで勢いづけて突っ込んでくる。刺さると毒を出し続ける。

 「助けてーーー!!!いやーーーーー!!!」

 あ、服が。元から露出は多かったけど、雑草が刺さったり根っこの毒で溶けたりして色々ヤバイ。

 「殺されるようなことにはならないけど、瀕死には追い込まれるからなー。防御力と体力が高ければ高いほど地獄を見ることになるぞー。まあ、服は用意しといてやるから、がんばれー」
 「ちょ、待ってーーーーー!!!助けてーーーーー!!!能力使う時間が無いーーーーー!!!」

 魔王最強も魔法が使えなかったらこうなるんだ。まあ、俺もまわり一帯を重力で潰したんだけどな。範囲攻撃で一撃で倒さないと絶対無理。
 ポイントが残り少ないからなー。確かレアガチャは10ポイント。倍で20ポイント。まあ、ここの奴らは倒してもレベルアップしないけど、ポイントとかはもらえるからなあ。
 現在ポイント残高2639P。こいつら倒すとポイントがメッチャもらえるんだよなあ。
 8連続くらいがちょうど良いだろう。女性用衣服で発動。


 ・浴衣(女)   ☆7
 ・ロングスカート ☆6
 ・下着セット   ☆5
 ・スカート    ☆6
 ・ジーパン    ☆8
 ・ミニスカート  ☆7
 ・ドレス(紫)  ☆7
 ・シャツ     ☆3


 うん、結果は上々。あとは適当に渡しておくか。
 にしてもどうなったんだろう。あの雑草薬草にもなるんだよな。
 ボロ布を体にかけただけの女性の遺体を発見。

 「・・・・・・死んじゃってる」
 「死んでない!」
 「生きてた。あ、はいどうぞ。しばらくはこれでも着とけ」
 「あー待ってよー!まだ14歳なんだからー!」

 は?と思いながら振り返る。
 振り向くと普通の女子が座り込んでいた。
 服を着た後に訳を聞いた。さっきまで大人だったのにいきなり14歳とか意味が分からない。

   *****

 話を簡単にまとめると、
 ベルナは魔王と人間のあいだに生まれた混血で、生まれてすぐに魔王である父親は勇者に殺され、母親は他の人間に迫害を受け自殺。
 魔王の父親の手下に7歳まで育ててもらったが、ある日人間に殺された。そのときの怒りで力が覚醒し、魔王最強の座まで自力で這い上がった。

 「ふーん。で?」
 「それで子供のままだとなめられるから見た目を大人に変えて高慢なフリをしてたの!」
 「へー。で、そのじゃじゃ馬な性格がお前か?見た目と中身が全くかみ合ってないぞ。子供みたいだ」
 「ま、魔王最強に向かってその態度は何よ!?私はあんたより絶対に強い。何でもありなら絶対に強い」

 子供は苦手だ。あんまりわがままばかりだと腹が立つ。
 ていうか。やろうと思えばいくらでも俺は強くなる。本心を言えばこんな奴ほっときたい。

 「で、どうする?」
 「な、何がよ」
 「絶対に勝てるとは言うけどさあ、一つの分野でしか勝てないんだったら意味がないと思うよ。そうそう。今この世界にいても魔法が使えるようにしたぞとりあえずここで余裕で生き残れるくらい強くならないと」

 そして俺とベルナの競争が始まる。
 で、肝心のルールなんだが、一週間でどっちのほうが強い生物を倒したかということになった。
 俺はまず雑草→花→大型植物→小石→石→大き目の石→岩→土→砂→水→ハエ→蚊→コオロギ→バッタ→トンボ→ゴキブリ→ネズミ。この順番で少しずつ倒していく。自然の石とかでもかなり強いからな。

   *****

 一週間後、二人揃って狩った生物を置いた。俺は子犬。といっても8メートルは有るけど。
 一方ベルナは、ハエ。といっても、3メートルは有る大人のハエ。
 ここでは大きさより能力で順位が決まる。

 「負けた・・・・・・」

 ベルナががっくりひざをついてる。

 「あー。一つ言っとくけど、ここの生物は毎日進化してる。強さはあまり変わらないが、能力や弱点は変わってくる。しかも知能もある程度は有る。知能が高い固体が生き残り、知能が低い固体はどれだけ生物として上位でもすぐに殺される」
 「じゃ、じゃあ、あんたは全部知ってたの!?」
 「いや、ただ他の自生するのものを利用した。こいつは雑草地帯におびき出して雑草にある程度ダメージを与えさせた。要するに頭を使ったんだ。力だけで成り上がれるほどここは甘くない。最初、自分でここに入って学んだことだ」
 「・・・・・・・・・・・・」

 そう。俺はここで学んだ。知恵が回らない、力が無い、考えることが出来ない、そんな奴らは真っ先に死んでいく。俺も死にかけた。そして学んだ。敗北から学ぶことが出来ないやつはみんな死んでいく。

 「お前はどうだ?何か学んだか?強くなったか?死ぬことがどれだけ怖いか分かったか?自分がどれだけ甘かったか、今まで自分が自分に甘えてきたことに気付けたか?」
 「・・・・・・・・・・・・」

 ベルナは下を向いて黙ったままだ。

 「俺は一度死のうと思うほどそれを感じたぞ。何よりも自分が許せない瞬間。誰よりも恨みたいモノ。何度考えても自分が悪いという考えに行き着いて、気付けば何も見えなくなっていたこと。お前は死に掛けて、何か気付いたか?」
 「・・・・・・私は、いつも甘えてた。助けてくれる人や、自分に。大切な人も一度なくしたことが有る。でも、そこまで悲しんだことは無いわよ」

 そう。何度思い出しても、自分が悲しんだとは思えない。俺もだ。悲しんだんじゃなくて何も見えなくなった。ただただ怖くて。どうなってるか、どうなるかが分からなくなって、壊れて。

 「だよな。そろそろ戻るぞ。ここでは弱肉強食。長居してると襲われかねない」
 「うん。次の世界会議は明後日だから。ちゃんと参加してね」

 行く気は無かったんだけどな。どうせ暇だし行くか。
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