君の名をよばせて

雨ましろ

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受け取り

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最初は軽く触れ合うだけだった。
そのまま我慢できなくなっていた。
「義くんつかれている?」
「いや、期待に応えるよ」

「義くん」
「うん」
僕らは、だんだん激しくなっていった。
舌を絡ませて、お互いを求めあった。
吐息も荒くなっていく。


「もっと、欲しい」
僕は、義くんを押し倒した。
そして、服を脱がせて、上半身裸にした。
胸を触ると、柔らかい感触が伝わってきた。
乳首を口に含むと、甘い味を感じた。
「気持ちいい」
義くんが言った。
「もうこんなになっている」
「恥ずかしいから、言わないで、だって、嬉しいんだもん」

「そうなの?」
「だって、いつも義くんは僕のことを優先してくれる。だから、こういうときぐらい甘えてもいいでしょう」
「そうだな」
いつもやさいい義くんがすき。
「好きだよ、義くん」
「オレもだよ、元希」
僕たちは体を重ね合った。
「じゃあ、続きはオレの部屋で」
「うん」

お互いを求めあうように。
何度も、名前を呼びあって。
僕たちの愛を確認し続けた。


それから、数ヶ月後のことだった。
僕は、ようやく貯金とあわせて300万円が用意できたので、田丸の部屋に行った。
そして、田丸に現金を渡した。
「これ、受け取ってほしいんだ」
「これは何だ?」
田丸は驚いていた。なんで300万円を渡されるのかと。
「婚約破棄で田丸が支払った分だ」
「どういうことだ?」
確かに田丸は支払ったかもしれないけれど、それを戸狩が何でという感じだ。

「田丸が支払ったのは、300万円だろ。だけど、僕は全然しらなくて、僕のせいで婚約破棄にしてくれたようなものだから。だから、300万円を貯めてきたんだ」
「しかし、こんなに受け取れない」
田丸は受け取れないって言ったけれど。
「ダメなんだ。僕が許せないんだ」
「オレは、戸狩と一緒にいられればそれで十分だ」
田丸は遠慮して受けてくれないが、それでは今までの僕の気が晴れない。

「田丸が満足しても、僕が納得できないんだ。田丸は優しいから僕は全然しらなくて。ごめん」
「いいんだよ、オレが勝手にやったことなんだから」
田丸は仕方なかったみたいにいうけれど。
「それでも、僕は納得できなかったんだ。だから、田丸のために使って欲しいんだ。お願いします」
僕は田丸に頼んだ。
「そうか。…じゃあ、ありがたく使わせてもらう。ありがとうな」
「うん」
僕は清々とした気分だった。


「これから、どうする?」
田丸にきいた。
「そうだな、とりあえず、旅行に行こうよ」
「いいね」
「温泉とかどう?」
田丸の提案に僕はのった。
僕も田丸との旅行が大好きだった。
「いいね」
「決まりね」
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