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復讐
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「復讐」
「復讐」という恐ろしい言葉に慄いているのか、それとも、このお上品そうな男性には聞き馴染みのない言葉なのか、男爵はぼんやりした顔で、私の呟いたその言葉を復唱した。
「しませんか?」
私はもう一度、強い口調で提案する。
「あなたは、それをしても良い立場なんですよ」
「……」
彼は答えず、視線は宙を彷徨う。
よほど頭になかった提案だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「私は、したいです」
返事のないバーン男爵に向かって、私は言葉を紡ぎ続ける。
「だって私、半年後に結婚する予定だったんです。……あいつと」
私は、テーブルの下で握りこぶしを作った。
「結婚するために仕事も辞めて、何もかも準備を進めて……。それで、互いの両親にも報告しあって、さああとは結婚を待つだけだってときに、あの男、勇者パーティに入るって言い出して」
「……」
「本当は、嫌だったんですよ。結婚して身を固めないといけないっていうのに、そんな危険な仕事。それに、パーティのリーダはあの女勇者だって言うし。心配に決まってるじゃないですか」
私の声は、どんどん怒りで震えていった。
「でも、彼の夢を応援したいと思って、それで我慢して」
大きく深呼吸する。
「私は全部、未来のために全部捧げたのに。なのにあいつは――」
「ジュリアナさん」
黙ったままだった男爵が言葉を発する。
その声は穏やかで、相手に寄り添うような優しい声だ。
「これ、使ってください」
彼に差し出されたのは、上等なシルクのハンカチ。
そこで初めて、自分が泣いていることに気づいた。
「私は、私は……」
私はハンカチで涙を拭いながら、バーン男爵に訴えかける。
「新しい仕事を貰っても、お金を貰っても、嫌なんです。そんなんじゃないんです。そんなことで、私の気持ちが切り替わることはありません」
好きだった、愛していた人間に裏切られた心は、そんなことでは晴れない。
そんなに簡単なことじゃないのだ。
「だから復讐したいんです。自分の心を救うために。感情にけりをつけるために」
「復讐」という恐ろしい言葉に慄いているのか、それとも、このお上品そうな男性には聞き馴染みのない言葉なのか、男爵はぼんやりした顔で、私の呟いたその言葉を復唱した。
「しませんか?」
私はもう一度、強い口調で提案する。
「あなたは、それをしても良い立場なんですよ」
「……」
彼は答えず、視線は宙を彷徨う。
よほど頭になかった提案だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「私は、したいです」
返事のないバーン男爵に向かって、私は言葉を紡ぎ続ける。
「だって私、半年後に結婚する予定だったんです。……あいつと」
私は、テーブルの下で握りこぶしを作った。
「結婚するために仕事も辞めて、何もかも準備を進めて……。それで、互いの両親にも報告しあって、さああとは結婚を待つだけだってときに、あの男、勇者パーティに入るって言い出して」
「……」
「本当は、嫌だったんですよ。結婚して身を固めないといけないっていうのに、そんな危険な仕事。それに、パーティのリーダはあの女勇者だって言うし。心配に決まってるじゃないですか」
私の声は、どんどん怒りで震えていった。
「でも、彼の夢を応援したいと思って、それで我慢して」
大きく深呼吸する。
「私は全部、未来のために全部捧げたのに。なのにあいつは――」
「ジュリアナさん」
黙ったままだった男爵が言葉を発する。
その声は穏やかで、相手に寄り添うような優しい声だ。
「これ、使ってください」
彼に差し出されたのは、上等なシルクのハンカチ。
そこで初めて、自分が泣いていることに気づいた。
「私は、私は……」
私はハンカチで涙を拭いながら、バーン男爵に訴えかける。
「新しい仕事を貰っても、お金を貰っても、嫌なんです。そんなんじゃないんです。そんなことで、私の気持ちが切り替わることはありません」
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そんなに簡単なことじゃないのだ。
「だから復讐したいんです。自分の心を救うために。感情にけりをつけるために」
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