女勇者に婚約者を寝取られたけど、逆に彼女の恋人を奪ってやった

小倉みち

文字の大きさ
14 / 25

復讐

しおりを挟む
「復讐」


 「復讐」という恐ろしい言葉に慄いているのか、それとも、このお上品そうな男性には聞き馴染みのない言葉なのか、男爵はぼんやりした顔で、私の呟いたその言葉を復唱した。


「しませんか?」


 私はもう一度、強い口調で提案する。


「あなたは、それをしても良い立場なんですよ」

「……」

 彼は答えず、視線は宙を彷徨う。


 よほど頭になかった提案だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。


「私は、したいです」


 返事のないバーン男爵に向かって、私は言葉を紡ぎ続ける。


「だって私、半年後に結婚する予定だったんです。……あいつと」


 私は、テーブルの下で握りこぶしを作った。

「結婚するために仕事も辞めて、何もかも準備を進めて……。それで、互いの両親にも報告しあって、さああとは結婚を待つだけだってときに、あの男、勇者パーティに入るって言い出して」

「……」

「本当は、嫌だったんですよ。結婚して身を固めないといけないっていうのに、そんな危険な仕事。それに、パーティのリーダは女勇者だって言うし。心配に決まってるじゃないですか」


 私の声は、どんどん怒りで震えていった。

「でも、彼の夢を応援したいと思って、それで我慢して」


 大きく深呼吸する。


「私は全部、未来のために全部捧げたのに。なのにあいつは――」

「ジュリアナさん」


 黙ったままだった男爵が言葉を発する。

 その声は穏やかで、相手に寄り添うような優しい声だ。


「これ、使ってください」


 彼に差し出されたのは、上等なシルクのハンカチ。


 そこで初めて、自分が泣いていることに気づいた。


「私は、私は……」


 私はハンカチで涙を拭いながら、バーン男爵に訴えかける。


「新しい仕事を貰っても、お金を貰っても、嫌なんです。そんなんじゃないんです。そんなことで、私の気持ちが切り替わることはありません」


 好きだった、愛していた人間に裏切られた心は、そんなことでは晴れない。

 そんなに簡単なことじゃないのだ。


「だから復讐したいんです。自分の心を救うために。感情にけりをつけるために」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...