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第1章
ライバル
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彼女は、ゲロまみれの俺を連れてどこかへ行く。
ふらふらと千鳥足の俺に向かって、彼女は色々と教えてくれた。
「羽柴君、この辺に住んでるの?」
「……ああ、まあ」
住んでいたと言えば、住んでいた。
もうその住みかはどこにもないが。
「奇遇ね。私もよ」
竹中は、歌うように言った。
楽しそうに。
旧友が近くに住んでいた奇跡を、無邪気に喜んでいるようだ。
「私、この近くに勤め先があって」
「へぇ」
「羽柴君も?」
「ああ、うん。まあ――なんていう会社?」
彼女は、自分の勤め先の正式名称を答えた。
それは誰でも知っている。
俺でも知っているような、有名企業だ。
「羽柴君は? きっと君のことだから、良いところに入ってるんじゃないの?」
「……いや、まあ普通だよ」
俺は乾いた笑いを漏らす。
惨めだった。
凄く。
かつて彼女は、俺のライバルだった。
神童と呼ばれた俺に、唯一対抗した同級生。
勉強も運動も、ずっと競い合ってきた。
そんな人間に、今の俺の立場を知られたくない。
あのころは同じく天才ともてはやされた2人が、こうも真逆の人生を歩むようになるとは。
俺の中学時代までしか知らない竹中に、俺の境遇など知ってほしくなかった。
――だが。
「飲み過ぎちゃだめだよ」
竹中は笑う。
「次からはちゃんと気をつけてね」
「ああ」
「私の家、ここから近いから、連れて帰ってあげる――今日は私の家で、ゆっくりして」
「すまん」
「気にしなくて良いのよ。だって私たち、仲良かったじゃない」
俺は、竹中の優しさに甘えるしかなかった。
俺の心はボロボロ。
ゴミにすらなれなかった。
俺は、寄りかかることの出来る「何か」を探していた。
だから俺は、一番知られたくない彼女についていくしかなかったのだ。
ふらふらと千鳥足の俺に向かって、彼女は色々と教えてくれた。
「羽柴君、この辺に住んでるの?」
「……ああ、まあ」
住んでいたと言えば、住んでいた。
もうその住みかはどこにもないが。
「奇遇ね。私もよ」
竹中は、歌うように言った。
楽しそうに。
旧友が近くに住んでいた奇跡を、無邪気に喜んでいるようだ。
「私、この近くに勤め先があって」
「へぇ」
「羽柴君も?」
「ああ、うん。まあ――なんていう会社?」
彼女は、自分の勤め先の正式名称を答えた。
それは誰でも知っている。
俺でも知っているような、有名企業だ。
「羽柴君は? きっと君のことだから、良いところに入ってるんじゃないの?」
「……いや、まあ普通だよ」
俺は乾いた笑いを漏らす。
惨めだった。
凄く。
かつて彼女は、俺のライバルだった。
神童と呼ばれた俺に、唯一対抗した同級生。
勉強も運動も、ずっと競い合ってきた。
そんな人間に、今の俺の立場を知られたくない。
あのころは同じく天才ともてはやされた2人が、こうも真逆の人生を歩むようになるとは。
俺の中学時代までしか知らない竹中に、俺の境遇など知ってほしくなかった。
――だが。
「飲み過ぎちゃだめだよ」
竹中は笑う。
「次からはちゃんと気をつけてね」
「ああ」
「私の家、ここから近いから、連れて帰ってあげる――今日は私の家で、ゆっくりして」
「すまん」
「気にしなくて良いのよ。だって私たち、仲良かったじゃない」
俺は、竹中の優しさに甘えるしかなかった。
俺の心はボロボロ。
ゴミにすらなれなかった。
俺は、寄りかかることの出来る「何か」を探していた。
だから俺は、一番知られたくない彼女についていくしかなかったのだ。
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