前前世、前世で私を殺した婚約者と、今世もまた婚約するそうですが

小倉みち

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第4章

帰り

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 最後の小屋の案内が終了し、私は咳き込みながら馬車で隣国の城に戻った。


 その間、主にクリストファーが私の背中を擦る。


「すみません、セレナ王女」


 彼はまだ幼い顔を歪め、私に謝る。

「お身体があまり良くないのを知っていたのに、埃っぽいところに連れて行ってしまって」

「いえ」


 私は咳の合間を縫って答える。

「大丈夫です」


 身体が弱いというか、ただ単に私は魔力過多なだけだ。

 最新医療での治療でどうにか保っているが、いつかの拍子に魔力が爆発的に漏れる。


 今のところ、あの嫌な感じは訪れていない。


 私は少し安心する。

 が、埃のせいで咳が出ていることに変わりはなく、ゴホゴホとハンカチを口で押さえながらうずくまった。


「ほら見ろ」


 兄のルーカスは、非難がましくクリストファーに視線を向ける。

「彼女の身体が良くないのは知ってるだろ。俺はそう言ったはずだ」


 彼は自分の今までのことを棚に上げて怒っているらしい。


 クリストファーは可哀想に、目を伏せて落ち込んだ様子を見せる。


「はい、兄上。おっしゃる通りです」

「あそこがお前の気に入ってる場所というのはわかるが、きちんと周りのことを見て判断すべきだ」

「……はい。以後気をつけます」


 私はだんだん、ルーカスに対してこれ以上ないくらい苛立ちを覚え始めた。


 なんなのよ、この男は。

 散々私に対して酷いことしてきたのに。

 私を一度裏切り、二度も殺しておいて。

 よくそんなことを言えるのね。


 私は腸が煮えくり返ったまま、ルーカスに言う。

「私は気にしていませんよ。クリストファー殿下が、心底私を案内したいと思ってくださったことはわかりましたので」

「セレナ王女……」


 そう言っていただけて嬉しいです、と目をうるうるさせるクリストファーの横で。


 なぜ、ルーカスは傷ついた表情を浮かべるのだろうか。
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