【完結】恋がしたい? どうぞご勝手に

小倉みち

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パトリック家

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 私たちは馬車に乗ってパトリックの家へと向かった。


 パトリックの屋敷は学園からほど近い、広い湖のある建物だった。


 私とユーリが幼馴染だと言っても、私たち貴族はもともと人数が少なく、また交流も多い。

 だから、マーサやパトリックとも幼少期からの知り合いだし、ほとんどの貴族の子息子女とも関わりがある。


 しかし、彼の家は未だに行ったことがなかった。


 私たちが彼とあまり仲が良くないとかそういうことではなく、彼が公爵家の中でも1つ頭が飛び出た存在だったからだ。


 貴族の中でも数少ない公爵家である私たちのうち、パトリックの家は1番王族に近しい家柄だ。

 パトリックの父親は、現国王陛下の実の弟で、彼は臣籍降下して公爵家を創設した。


 もっと言うと、国王陛下には今のところ息子も娘もいない。


 つまり彼は、自分の父親に次いで王位継承権第2位を持っている。


 本来なら、私たちが気軽に話しかけて良い人間ではないのだが、彼のその気さくな雰囲気や、実際に、

「継承権あるからと言っても、あくまで僕は貴族だよ」

 という彼の要望通り、私たちは彼と仲良く接している。


 しかし、仲が良いと言っても、向こうは王位継承権を持っている。


 そんなパトリックに暴力を振るったり彼の家族の前で失礼極まりないことをしたり、そんなことをユーリがするはずもないと思ってはいるのだが。


「恋は盲目」


 頭の中で、マーサの言葉を反芻した。


 私には、一切関係ないと思っていた言葉。

 ユーリとヒメナの関係に巻き込まれた今、その確証も信じ難いものとなっていた。
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