【完結】恋がしたい? どうぞご勝手に

小倉みち

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パトリックの屋敷

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 事前連絡もなしに屋敷へやって来るという失礼極まりない行動をした私たちに対しても、パトリックの両親は優しかった。


「ウェンディさん、マーサさん、今日はパトリックのために来てくれてどうもありがとう」


 私たちを客間に案内した奥様は、優雅な微笑みを浮かべてそう言った。

「お茶はいかが?」

「ありがとうございます。いただきます」

「ありがとうございます。お土産も持って来ていないのに、すみません」

「いえいえ、お気になさらずーー少し待っていてね」


 パトリックの母親は、席を立ってお茶を入れに行った。


 2人きりになったので、私たちは話し始める。

「今のところは大丈夫そうね」

 と、マーサが言った。

「ええ」


 私は頷く。

「ただの熱だったのね」


 馬車から降りた後、私たちは慌てて屋敷に入り、出迎えてくれた母親に向かって挨拶もそこそこに、

「パトリックに何かあったんですか?」

 と尋ねた。


 彼女は困惑した顔で、

「えっ、今は家にいるけれど」

 と、言う。


「えっ」

「どうかしたの? パトリックが何か?」

「いるんですか!?」


 私たちはお互いの顔を見合わせ、安堵のため息をついた。

 全然事情を飲み込めていない母親に、事情を説明する。

「パトリックが無断欠席して、何かあったのかと思いまして」

「あらそうなの。無断欠席? ……変ねえ、連絡してと命じたはずなんだけど」


 パトリックの母親曰く、

「今朝凄く気分が悪そうで、熱があるもんだから休ませたの。使用人に連絡を任せたんだけど、行き違いがあったのかもしれないわね」

 とのこと。


 ……安心した。

「ちょっとマーサ」

 私は文句を言う。

「あなたが変なこと言うからめちゃくちゃ心配したじゃない。やっぱり、全然大したことなかったわよ。ユーリとも関係なさそうね」

「それはどうかしらねえ」


 だが、彼女はまだ何か引っかかるらしい。

「何よ? パトリックはただの風邪よ」

「実際この目で確認したわけじゃないわ。とりあえずお茶をいただいてから、彼の様子を見に行きましょう」
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