【完結】恋がしたい? どうぞご勝手に

小倉みち

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恐怖

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 警察の人の話は、こうだった。


 本当は、2人は私に毒を飲ませようとしたのだ。

 特にユーリが、私を酷く逆恨みしていた。


 私が自分の両親に告げ口し、そのせいで自分の計画が全部めちゃくちゃになった。

 私のせいで、孤立した。

 私のせいで、みんなから嫌われた。


 彼は、すべての問題を私のせいにしたかったようだ。


「加害者であるユーリ被告は、自分の毒の知識を生かし、古代の毒を作った。今だとほとんど使われていない、古代で暗殺に用いられていたものです。しかし材料は誰にでも手に入るようなもので、だからこそ被告はその毒を選んだのでしょう」


 彼は、私を殺すために毒を作った。

 そしてそれを、愛する恋人のヒメナにも教えたのだ。


「ヒメナ被告は、自分の関与を否定していますが。毒の瓶に指紋がついていたので、何らかのタイミングでその計画に関わっていたのは事実かと思います」


 毒を、一体どう盛ろうとしていたのか。


「盛る方法はまだわかっていません。しかし、彼らは物の扱いがかなり杜撰のようですね――なぜなら、その瓶を食堂に放置してしまったのですから」


 毒が入っていた瓶は、一見すると調味料入れにも見えた。


 中身は真っ白な結晶。

 誰も、それが毒だとわからないだろう。


 それを塩だと思った食堂の人がテーブルの上に放って置いたままにし、同じくそれを塩だと思ったパーシーが――。


「ええっと、つまり」

 私は尋ねた。

「パトリックは意図せず、自分で毒を身体に入れたということですか?」

「そういうことになります」

 警察は頷いた。


 私はその話を聞いて、身震いした。


 あの2人はパトリックを殺そうとしたんじゃない。

 殺そうとしたのは、私だったのだ。


 ……怖い。

 めちゃくちゃ怖い。


 あの2人の殺意が。


 もう二度と、あの2人に会いたくない。


 というか、もう永久に塀の向こうに住んでいてほしい。

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