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第1章
部屋
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私の救世主かつ悪魔みたいなことをしでかしやがった雛子は、
「じゃあ、私用事あるから! あとはよろしくぅ」
と、笑顔で退散していった。
辞めてくれ。
二人きりにしないでよ。
だけど、彼女は非情だ。
結局残された私たちの間に流れるのは、気まずい雰囲気。
ひとまず、冬馬さんに私の使う部屋を案内してもらう。
「あんたの部屋はここだから。あと、俺の部屋は絶対入るなよ。それに、キッチンに足を踏み入れるな」
私の部屋を指差した彼は、不機嫌な顔でそう言った。
はいはいはい。
誰がそんなところ入るもんですか。
なんてことは大人なので言わない。
代わりに大袈裟に頷いて、冬馬さんの神経を逆なでさせる。
「で、あんたの荷物はこれだけか?」
向こうも大人なので私の荷物を運んでくれているが、いかんせん私の持ち物は大体燃えてしまって、大事なもの以外はない。
段ボール一箱分。
せめてアルバムくらいは残っていてほしかったが、どうせ神から見捨てられている身だ。
仕方がない。
「全部燃えたので、今はこれくらいしかありません」
つっけんどんにそう答えると、何か気に障ったのか、
「あ、そう」
とだけ彼は答え、そっぽを向いた。
荷物を部屋の中に入れてくれた冬馬さんは、無言で部屋を出ていく。
段ボールを床に置いたまま、備え付けのベッドに身体を埋める。
少々カビっぽい匂いだが、掃除をした跡がある。
あまり使われていない部屋にしては手入れが行き届いており、また家なき子の身分としては、まさにここは都であった。
こんないい部屋を貸してくれた雛子 WITH 彼女の両親。
本当にありがとう。
ただ、この部屋は一時的に借りるしかあるまい。
問題は雛子のお兄様だ。
普通に考えて男の人と住まいを同じにするのは抵抗があるし、なおかつ彼は金色の長髪だ。
私の人生において、そう言う髪形をしている奴ほど信用に置けないというのは嫌と言うほど知っている。
最初の彼氏も、その次の彼氏も、そのまた次の彼氏も、初めは黒髪だった彼らはみんな金色長髪となって私の目の前から姿を消してしまった。
もしかして私は呪われているのかもしれない。
にしても雛子、あんた何にも考えてないの?
普通、兄と自分の友達を同居させるなんてありえないでしょ。
なんて考えていたらタイミングよくスマートフォンの着信が鳴った。
「マコへ♡ お兄ちゃんと結婚したいって言ってたでしょ? 私がお兄ちゃんとあんたをくっつけあげるから、感謝してよね♡ 雛子より」
……なーにが「くっつけてあげる」だバーカ!
思ってたよ。
確かに、
「お兄様と結婚したーい」
って言ったよ。
でもそれは言葉のあやじゃん。
本気じゃないのよ。
いや、半分は本気だったけど。
しかしそれでも半本気なのよ。
あーもう、なんて余計なことしてくれたんだあのバカ。
でも寝床貸してくれてありがとう。
ものすごく複雑な心情と積もりに積もった疲労というボロネーゼをかけた身体が睡魔に勝てるはずもなく、私の視界はゆっくりと狭まっていった。
「じゃあ、私用事あるから! あとはよろしくぅ」
と、笑顔で退散していった。
辞めてくれ。
二人きりにしないでよ。
だけど、彼女は非情だ。
結局残された私たちの間に流れるのは、気まずい雰囲気。
ひとまず、冬馬さんに私の使う部屋を案内してもらう。
「あんたの部屋はここだから。あと、俺の部屋は絶対入るなよ。それに、キッチンに足を踏み入れるな」
私の部屋を指差した彼は、不機嫌な顔でそう言った。
はいはいはい。
誰がそんなところ入るもんですか。
なんてことは大人なので言わない。
代わりに大袈裟に頷いて、冬馬さんの神経を逆なでさせる。
「で、あんたの荷物はこれだけか?」
向こうも大人なので私の荷物を運んでくれているが、いかんせん私の持ち物は大体燃えてしまって、大事なもの以外はない。
段ボール一箱分。
せめてアルバムくらいは残っていてほしかったが、どうせ神から見捨てられている身だ。
仕方がない。
「全部燃えたので、今はこれくらいしかありません」
つっけんどんにそう答えると、何か気に障ったのか、
「あ、そう」
とだけ彼は答え、そっぽを向いた。
荷物を部屋の中に入れてくれた冬馬さんは、無言で部屋を出ていく。
段ボールを床に置いたまま、備え付けのベッドに身体を埋める。
少々カビっぽい匂いだが、掃除をした跡がある。
あまり使われていない部屋にしては手入れが行き届いており、また家なき子の身分としては、まさにここは都であった。
こんないい部屋を貸してくれた雛子 WITH 彼女の両親。
本当にありがとう。
ただ、この部屋は一時的に借りるしかあるまい。
問題は雛子のお兄様だ。
普通に考えて男の人と住まいを同じにするのは抵抗があるし、なおかつ彼は金色の長髪だ。
私の人生において、そう言う髪形をしている奴ほど信用に置けないというのは嫌と言うほど知っている。
最初の彼氏も、その次の彼氏も、そのまた次の彼氏も、初めは黒髪だった彼らはみんな金色長髪となって私の目の前から姿を消してしまった。
もしかして私は呪われているのかもしれない。
にしても雛子、あんた何にも考えてないの?
普通、兄と自分の友達を同居させるなんてありえないでしょ。
なんて考えていたらタイミングよくスマートフォンの着信が鳴った。
「マコへ♡ お兄ちゃんと結婚したいって言ってたでしょ? 私がお兄ちゃんとあんたをくっつけあげるから、感謝してよね♡ 雛子より」
……なーにが「くっつけてあげる」だバーカ!
思ってたよ。
確かに、
「お兄様と結婚したーい」
って言ったよ。
でもそれは言葉のあやじゃん。
本気じゃないのよ。
いや、半分は本気だったけど。
しかしそれでも半本気なのよ。
あーもう、なんて余計なことしてくれたんだあのバカ。
でも寝床貸してくれてありがとう。
ものすごく複雑な心情と積もりに積もった疲労というボロネーゼをかけた身体が睡魔に勝てるはずもなく、私の視界はゆっくりと狭まっていった。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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