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第1章
食事
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こんなに眠ったのはいつ以来だろうか。
お陰でしばらく思い出さなかった元カレとのお別れシーンが脳内で再生され、枕は涙でぐちょぐちょ、目は真っ赤に腫れあがっている。
最近の不摂生がたたって顔が何だかぼそぼそしている。
そぼろみたい。
もう最悪だ。
顔を冷やそう。話はそれからだ。
とりあえず泣いたおかげで、すっきりとまではいかないが心の半分くらいは浄化されたのではないだろうか。
眼をこすりながら一階へ降りる。
洗面台を探し当て、顔に思う存分水をかける。
顔を拭こうというとき、自分用のタオルがないことに気づいた。
買っておかなきゃなあと代わりに来ていたシャツで顔をぬぐっていると、目の前の鏡にドン引きした様子の冬馬さんが見えていた。
あっ、ヤバ。
見られてた。
「あのさ。夕飯できたから呼ぼうと思ったんだけど、その、食えるか?」
なぜか心配そうな冬馬さん。
「食べます」
私は即答する。
「あ、でも。本当に食べてもいいんですか……?」
「いらないのか?」
「いえ、頂きます。ありがとうございます」
まさか作ってくれるとは思わなかった。
初対面は最悪だし、生活は別々にしようって感じだし。
とはいえ、冬馬さんの料理は聖書である。
これさえあれば私は生きていけるといっても過言ではない。
もちろんお金は払うが、そんな料理を家で食べられるというのは、私にとっては幸せ以外の何物でもない。
多分冬馬さんは冬馬さんなりに私を気遣ってくれているのだろう。
まあそりゃ、どん底真っただ中の私を気遣わない奴なんておそらく誰もいないが、彼が金色長髪であることなんかもはやどうでもいい。
金髪万歳。
長髪万歳。
冬馬さんは私を店内に案内した。
定休日だからか静まり返った店の中。
私はまるで、特別なお客様みたいだった。
わくわくした気持ちでカウンターに座る。
冬馬さんは厨房に立った。
そういや気づいていなかったが、今冬馬さんはあの長い髪を一つに束ね、しっかりコックコートに身を包んでいる。
手も綺麗だし、清潔感にあふれている。
さすがは料理人だ。
そう言えば、他人のをじろじろ見る前にまず自分の身支度をちゃんとしろよって、最近別れた元カレに言われたっけ。
確かにそうかもしれないけど、お前に言われたきゃねーよバカヤロー!
清潔感の欠片もなかったじゃんか!
……ふう、落ち着こう。
彼の作る料理の前で荒ぶってはいけない。
「はい、どうぞ」
カウンターの前に出したのは、アサリの酒蒸しにたっぷり野菜の豚汁、さらにほかほかの白米である。
あー駄目だ。
見ているだけでお腹が空いてくる。
「昼飯の残りで悪いが」
「悪くないです! むしろいいですありがとうございます!」
「待て」
勢いでがっつこうとするが、冬馬さんに止められる。
「おい、ちゃんと『いただきます』と『ごちそうさま』を言えよ。常識だろうが」
確かにそうだ。
「いただきます」
彼の指示通り、手を合わせてそう言った。
久しぶりの感覚。
中学生以来だなあ、おい。
懐かし過ぎる。
そうね、まずはどれにしようか。
どれから手をつけるか悩みに悩んで箸をふらふらさせると、また冬馬さんに注意された。
迷い箸だそうだ。
確か小学生のころ、同じように初恋の先生に注意されたことあったな。
それもまた懐かしい。
最初に選んだのは豚汁だ。
たっぷりと入った野菜の中に見え隠れする豚肉。
柔らかく甘い湯気が私の鼻孔をくすぐる。
じゃがいも、人参、ごぼう、玉ねぎ、大根、長葱、こんにゃく、そして豚肉。
まずは一口。
しっとりと出汁が染み込んだ野菜たちが口の中で溶けてゆく。
大きめだが、私の口に入る大きさの具材は、まさに愛。
汁が身体の中心部から染み渡り、一気に温もっていく。
次にアサリの酒蒸し。
軽く焼き目が付いている貝殻の中に、ツンとした日本酒と醤油の香り。
はち切れんばかりに身が大きいのは、ちょうど旬に当たるからだろうか。
ちょこんと乗っている葱のみじん切りが、この作品に彩りをプラスしている。
一口で頂いた。
身はつるっと口の中に収まる。
噛む度に濃厚な出汁が溢れ出し、私の心を満たしていく。
なんだかお酒が飲みたくなってきた。
それも、日本酒。
そんなこおを考えていたら、無言で冬馬さんは熱燗をくれた。
見た目はアレだけどイケメンだ。
中身イケメンだ。
お酒を飲みつつ、ご飯をかき込んだ。
口の中に残るアサリの仄かな味わいが甘い白米とマッチし、それがまた素晴らしいコンビネーションを生み出してくれる。
あっという間に完食。
名残惜しいが、まるで私が普段どれくらい食べているか知っているかのように、ちょうどいい量だった。
何も文句を言うことがない。
「ごちそうさまでした!」
元気よく言うと、さっきから冬馬さんがじっと私を見つめていたことに気づいた。
食事中のにやにやを見られていたのは、ちょっと恥ずかしい。
「あ、ありがとうございました……」
照れながらお礼を言うと、真顔で頷いた冬馬さんは、何やら文字らしきものが書かれた紙を渡してきた。
「え? それ、なんですか?」
「ルームシェアをする上での決め事だ」
まあ確かにそれは必要だ。
だが、どこからどう見てもまともに読めやしない。
字が汚すぎる。
何とかそれを解読すると、そこにはこう書いていた。
その一 お互いの生活に干渉しない。
その二 厨房は使わない。
その三 家賃はしっかり払うこと。
その四 友達や家族をここに呼ばない。
その五 俺の料理には毎食金を払うこと。
うん。
決め事と言うよりは、私にして欲しいことだな。
人類破壊兵器しか作れないのでキッチンはそもそも入らないし、友達という友達も今のところ雛子しか頭に浮かばない。
家族は田舎デビューしたので呼ぶ必要もない。
残りはまあ常識の範疇だろう。
「はい、わかりました」
私が了承すると、冬馬さんはその紙を厨房に貼った。
いやそれキッチンに入れない私は見れないですし、そもそもここ定食屋です。
お客さん来ます。
というかまず字が汚くて読めません。
心の中でツッコむ私。
だけど、満足そうな冬馬さんの顔に、私は何も言えなくなる。
「じゃあ、この通りに今から動いてもらうぞ」
そう言って冬馬さんは私の前に手のひらを出した。
「じゃあ、千円」
いや、高っ。
お陰でしばらく思い出さなかった元カレとのお別れシーンが脳内で再生され、枕は涙でぐちょぐちょ、目は真っ赤に腫れあがっている。
最近の不摂生がたたって顔が何だかぼそぼそしている。
そぼろみたい。
もう最悪だ。
顔を冷やそう。話はそれからだ。
とりあえず泣いたおかげで、すっきりとまではいかないが心の半分くらいは浄化されたのではないだろうか。
眼をこすりながら一階へ降りる。
洗面台を探し当て、顔に思う存分水をかける。
顔を拭こうというとき、自分用のタオルがないことに気づいた。
買っておかなきゃなあと代わりに来ていたシャツで顔をぬぐっていると、目の前の鏡にドン引きした様子の冬馬さんが見えていた。
あっ、ヤバ。
見られてた。
「あのさ。夕飯できたから呼ぼうと思ったんだけど、その、食えるか?」
なぜか心配そうな冬馬さん。
「食べます」
私は即答する。
「あ、でも。本当に食べてもいいんですか……?」
「いらないのか?」
「いえ、頂きます。ありがとうございます」
まさか作ってくれるとは思わなかった。
初対面は最悪だし、生活は別々にしようって感じだし。
とはいえ、冬馬さんの料理は聖書である。
これさえあれば私は生きていけるといっても過言ではない。
もちろんお金は払うが、そんな料理を家で食べられるというのは、私にとっては幸せ以外の何物でもない。
多分冬馬さんは冬馬さんなりに私を気遣ってくれているのだろう。
まあそりゃ、どん底真っただ中の私を気遣わない奴なんておそらく誰もいないが、彼が金色長髪であることなんかもはやどうでもいい。
金髪万歳。
長髪万歳。
冬馬さんは私を店内に案内した。
定休日だからか静まり返った店の中。
私はまるで、特別なお客様みたいだった。
わくわくした気持ちでカウンターに座る。
冬馬さんは厨房に立った。
そういや気づいていなかったが、今冬馬さんはあの長い髪を一つに束ね、しっかりコックコートに身を包んでいる。
手も綺麗だし、清潔感にあふれている。
さすがは料理人だ。
そう言えば、他人のをじろじろ見る前にまず自分の身支度をちゃんとしろよって、最近別れた元カレに言われたっけ。
確かにそうかもしれないけど、お前に言われたきゃねーよバカヤロー!
清潔感の欠片もなかったじゃんか!
……ふう、落ち着こう。
彼の作る料理の前で荒ぶってはいけない。
「はい、どうぞ」
カウンターの前に出したのは、アサリの酒蒸しにたっぷり野菜の豚汁、さらにほかほかの白米である。
あー駄目だ。
見ているだけでお腹が空いてくる。
「昼飯の残りで悪いが」
「悪くないです! むしろいいですありがとうございます!」
「待て」
勢いでがっつこうとするが、冬馬さんに止められる。
「おい、ちゃんと『いただきます』と『ごちそうさま』を言えよ。常識だろうが」
確かにそうだ。
「いただきます」
彼の指示通り、手を合わせてそう言った。
久しぶりの感覚。
中学生以来だなあ、おい。
懐かし過ぎる。
そうね、まずはどれにしようか。
どれから手をつけるか悩みに悩んで箸をふらふらさせると、また冬馬さんに注意された。
迷い箸だそうだ。
確か小学生のころ、同じように初恋の先生に注意されたことあったな。
それもまた懐かしい。
最初に選んだのは豚汁だ。
たっぷりと入った野菜の中に見え隠れする豚肉。
柔らかく甘い湯気が私の鼻孔をくすぐる。
じゃがいも、人参、ごぼう、玉ねぎ、大根、長葱、こんにゃく、そして豚肉。
まずは一口。
しっとりと出汁が染み込んだ野菜たちが口の中で溶けてゆく。
大きめだが、私の口に入る大きさの具材は、まさに愛。
汁が身体の中心部から染み渡り、一気に温もっていく。
次にアサリの酒蒸し。
軽く焼き目が付いている貝殻の中に、ツンとした日本酒と醤油の香り。
はち切れんばかりに身が大きいのは、ちょうど旬に当たるからだろうか。
ちょこんと乗っている葱のみじん切りが、この作品に彩りをプラスしている。
一口で頂いた。
身はつるっと口の中に収まる。
噛む度に濃厚な出汁が溢れ出し、私の心を満たしていく。
なんだかお酒が飲みたくなってきた。
それも、日本酒。
そんなこおを考えていたら、無言で冬馬さんは熱燗をくれた。
見た目はアレだけどイケメンだ。
中身イケメンだ。
お酒を飲みつつ、ご飯をかき込んだ。
口の中に残るアサリの仄かな味わいが甘い白米とマッチし、それがまた素晴らしいコンビネーションを生み出してくれる。
あっという間に完食。
名残惜しいが、まるで私が普段どれくらい食べているか知っているかのように、ちょうどいい量だった。
何も文句を言うことがない。
「ごちそうさまでした!」
元気よく言うと、さっきから冬馬さんがじっと私を見つめていたことに気づいた。
食事中のにやにやを見られていたのは、ちょっと恥ずかしい。
「あ、ありがとうございました……」
照れながらお礼を言うと、真顔で頷いた冬馬さんは、何やら文字らしきものが書かれた紙を渡してきた。
「え? それ、なんですか?」
「ルームシェアをする上での決め事だ」
まあ確かにそれは必要だ。
だが、どこからどう見てもまともに読めやしない。
字が汚すぎる。
何とかそれを解読すると、そこにはこう書いていた。
その一 お互いの生活に干渉しない。
その二 厨房は使わない。
その三 家賃はしっかり払うこと。
その四 友達や家族をここに呼ばない。
その五 俺の料理には毎食金を払うこと。
うん。
決め事と言うよりは、私にして欲しいことだな。
人類破壊兵器しか作れないのでキッチンはそもそも入らないし、友達という友達も今のところ雛子しか頭に浮かばない。
家族は田舎デビューしたので呼ぶ必要もない。
残りはまあ常識の範疇だろう。
「はい、わかりました」
私が了承すると、冬馬さんはその紙を厨房に貼った。
いやそれキッチンに入れない私は見れないですし、そもそもここ定食屋です。
お客さん来ます。
というかまず字が汚くて読めません。
心の中でツッコむ私。
だけど、満足そうな冬馬さんの顔に、私は何も言えなくなる。
「じゃあ、この通りに今から動いてもらうぞ」
そう言って冬馬さんは私の前に手のひらを出した。
「じゃあ、千円」
いや、高っ。
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