6 / 12
第1章
しばらく
しおりを挟む
掲示板にその花嫁探しの情報が載った後も、この村は穏やかだった。
何人かの女の子たちが、
「ベネット公の花嫁に選ばれてくるわ」
と、貯めていたお小遣いを使って王都に行こうとしていた。
が、当然家族から、王都に行かないでくれと止められる。
王都に行ったところで、彼の「番」である可能性は低い。
せっかく貯めたお金も無駄になるし、万が一そうであれば、村から1人分の労働力が失われることになる。
この村じゃ、若者は宝だ。
畑や養鶏場を受け継いでくれる者がいなくなれば、こんな小さな村、すぐに廃村になってしまうだろう。
大人たちは、それを危惧していたのだ。
しかし、当然それに反発する女子もいた。
私の友人の1人は、家族の反対を押し切って王都へと旅立った。
夜、彼女は私に挨拶しにきた。
家族には内緒で、家を飛び出してきたのだと言う。
「私、どうしてもこのチャンスを手離したくないの」
彼女は、キラキラとした目でそう言った。
「正直、ベネット公の花嫁に選ばれる確率は低い。それは十分わかっている。でも私、王都へ行きたい。王都へ行って、ベネット公に会いたい」
彼女の気持ちは、よくわかった。
前世の私も、かつてはこんな気持ちを抱いていたから。
ローレンを手に入れることは不可能に近いと、頭の中ではわかっていた私。
だけど、それでも諦められなかった。
あの恋を手放すことが、出来なかった。
友人であれば、彼女を止めるべきだろうというのは、よくわかっていた。
彼女は、自分の脳内で作り上げたベネット公に恋をしていたから。
一度も会ったことのない男性に、彼女は心を奪われてしまっていた。
だけど、私は止めなかった。
もしここで止めて、彼女の家族を呼びつけたら。
彼女はきっと、村から出られなくなる。
あの辛い気持ちを味わわずに済む。
だが、私は彼女の友人じゃなくなってしまうだろう。
私は一生、彼女に恨まれて暮らさなければならなくなる。
――それに。
彼女にしたって、あのころの私にしたって。
彼に会わなければ、そうしなければ、ずっとそのことを後悔し続けるのだろうと思う。
何人かの女の子たちが、
「ベネット公の花嫁に選ばれてくるわ」
と、貯めていたお小遣いを使って王都に行こうとしていた。
が、当然家族から、王都に行かないでくれと止められる。
王都に行ったところで、彼の「番」である可能性は低い。
せっかく貯めたお金も無駄になるし、万が一そうであれば、村から1人分の労働力が失われることになる。
この村じゃ、若者は宝だ。
畑や養鶏場を受け継いでくれる者がいなくなれば、こんな小さな村、すぐに廃村になってしまうだろう。
大人たちは、それを危惧していたのだ。
しかし、当然それに反発する女子もいた。
私の友人の1人は、家族の反対を押し切って王都へと旅立った。
夜、彼女は私に挨拶しにきた。
家族には内緒で、家を飛び出してきたのだと言う。
「私、どうしてもこのチャンスを手離したくないの」
彼女は、キラキラとした目でそう言った。
「正直、ベネット公の花嫁に選ばれる確率は低い。それは十分わかっている。でも私、王都へ行きたい。王都へ行って、ベネット公に会いたい」
彼女の気持ちは、よくわかった。
前世の私も、かつてはこんな気持ちを抱いていたから。
ローレンを手に入れることは不可能に近いと、頭の中ではわかっていた私。
だけど、それでも諦められなかった。
あの恋を手放すことが、出来なかった。
友人であれば、彼女を止めるべきだろうというのは、よくわかっていた。
彼女は、自分の脳内で作り上げたベネット公に恋をしていたから。
一度も会ったことのない男性に、彼女は心を奪われてしまっていた。
だけど、私は止めなかった。
もしここで止めて、彼女の家族を呼びつけたら。
彼女はきっと、村から出られなくなる。
あの辛い気持ちを味わわずに済む。
だが、私は彼女の友人じゃなくなってしまうだろう。
私は一生、彼女に恨まれて暮らさなければならなくなる。
――それに。
彼女にしたって、あのころの私にしたって。
彼に会わなければ、そうしなければ、ずっとそのことを後悔し続けるのだろうと思う。
14
あなたにおすすめの小説
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
前世で追放された王女は、腹黒幼馴染王子から逃げられない
ria_alphapolis
恋愛
前世、王宮を追放された王女エリシアは、
幼馴染である王太子ルシアンに見捨てられた――
そう思ったまま、静かに命を落とした。
そして目を覚ますと、なぜか追放される前の日。
人生、まさかの二周目である。
「今度こそ関わらない。目立たず、静かに生きる」
そう決意したはずなのに、前世では冷酷無比だった幼馴染王子の様子がおかしい。
距離、近い。
護衛、多い。
視線、重い。
挙げ句の果てに告げられたのは、彼との政略結婚。
しかもそれが――彼自身の手で仕組まれたものだと知ってしまう。
どうやらこの幼馴染王子、
前世で何かを盛大に後悔したらしく、
二度目の人生では王女を逃がす気が一切ない。
「愛されていなかった」と思い込む王女と、
「二度と手放さない」と決めた腹黒王子の、
少し物騒で、わりと甘い執着政略結婚ラブストーリー。
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
愛されなくても、大丈夫!
夕立悠理
恋愛
――だって、私が一番、私を愛しているから。
望まれて嫁いだはずだった。
小国の第三王女である、ビアンカは帝国の皇帝リヴェンに嫁ぐ。この婚姻は帝国側から、ビアンカをわざわざ指名してのものだ。
そのため、皇帝はビアンカを望んでいるのだと考えていた。
しかし、結婚式を終えて迎えた、初夜。
皇帝はビアンカに告げる。
「――お前を愛することはない。だから、俺からの愛を望むな」
……でも、そんなことを言われてもビアンカは全然平気だった。
なぜなら、ビアンカは――
「私の神もひれ伏す美しさに恐れおののいたのかしら? まぁ、いいわ。私以上に私を愛せる人など、やはりいなかったわね」
超がつくほどナルシストだった!
そんなナルシストな皇后ビアンカのハッピー新生活。
最高魔導師の重すぎる愛の結末
甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。
いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。
呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。
このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。
銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。
ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。
でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする……
その感は残念ならが当たることになる。
何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる